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【絵画】写実主義絵画ってどんなもの?特徴や違いは?リアリズムを追求した代表的画家3人の絵をご紹介

絵画史における一大芸術運動「写実主義」。文学、絵画などに波及した写実主義は、一大ムーブメントを引き起こしました。Rintoでは写実主義運動の全体像を解説した記事もありますが、今回は絵画特化編!それまでの芸術と違うってどういうこと?どんな作品があるの?歴史に残る「写実主義以前絵画」も振り返りながら、写実主義絵画を代表する巨匠3人の絵画からその特徴を紐解いていきましょう。

写実主義が興隆した歴史的背景

image by iStockphoto

芸術と歴史は密接につながっています。ほとんどコインの表裏の関係です。写実主義が盛んになったのは19世紀前半。すなわち産業革命が巻き起こり、世界の風景を蒸気機関が一変させた頃です。「労働者」というものが誕生し、王族貴族の勢いが低下していき……町人・庶民階級に眼を向けることとなった芸術家たちはどんな芸術世界を編み出していったのでしょうか?
(写実主義全体について、詳しくはこちらの記事でも)

深刻な貧困や労働者問題、社会主義・共産主義が誕生した混沌の19世紀

Gustave Courbet 018.jpg
By ギュスターヴ・クールベ – The Yorck Project (2002年) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., パブリック・ドメイン, Link

19世紀の最大の特徴といえば、産業革命と蒸気機関の発展により、機械化が行われていったことです。そして深刻な労働者問題と貧困、資本家による搾取が社会問題としてクローズアップされました。写実主義はこの身近で深刻な存在に焦点を当てた運動。庶民の視点に立った芸術を創り上げたのです。

こちらの絵はクールベ「石割人夫」。マルクスとエンゲルスによる『共産党宣言』が出版された1848年に製作された絵画です。第二次世界大戦中のドレスデン爆撃で焼失した幻の絵画ですが、クールベひいては写実主義にとって象徴的な一枚。中流階級や農民、労働者にフォーカスし、彼らの日常を描くのも写実主義の役割でした。その表現はたびたび左翼的として批判を浴びることにもなります。

クールベは路端で実際にこの光景を目撃。「完璧な貧困表現」と呼んでいます。このような重労働下の弱者たちが喘ぐ光景はどこにでもあふれていたのです。写実主義はこのようなビジョンを芸術に写し取ることで必然的に「芸術は歴史を動かす」ことに。芸術が歴史を動かした例は古典主義やロマン主義でもいくつもありますが、写実主義もまた、労働者という存在をビジュアルとして身近に置いて表現するという役割を果たしたのでした。

「写実主義」以前の絵画って?

写実主義のコンセプトは「ありのままを描く」。では「ありのまま」の反対って?いろいろな答えがあるかと思いますが「様式」に則ったもの、という答えができるかと思います。

それまでの芸術は、主に教会の高位聖職者や王族、貴族がパトロンとなって画家と契約を結び、画家はある程度までは必ず要望に沿って描いていました。また宗教画には一定の様式が存在します。こちらに掲げたミケランジェロ「最後の審判」はローマ法王の依頼によって描かれた大作。カトリックの世界観に則って最大限にオリジナリティを出していますが、あくまで「ドラマ」を描くのが画家のお仕事でした。

その後の新古典主義やロマン主義、すなわち写実主義の直前まで盛んだった絵画は、非日常を切り取ることへの執念を燃やしていました。それが次第に現実逃避的になっていってしまったのです。これ対して写実主義は「日常」や「現実」に向き合って描きます。宗教や神話、ドラマ的な題材から開放され、いま目の前の現実を誠実に描くのが写実主義。そこには現実というものに対する真摯さと愛があふれています。

ざっくりと西洋絵画の流れをご紹介~中世からロマン主義まで駆け抜けます!~

Michael of salonica.jpg
パブリック・ドメイン, Link

こちらは、12世紀にウクライナで製作された聖人のモザイク画です。

この西洋中世は暗黒時代。写実ではなく形式・様式重視で、ほとんど生彩がありません。

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By ラファエロ・サンティ – Downloaded from Artist Hideout, パブリック・ドメイン, Link

西洋美術史のチート時代・ルネサンス。神話や聖書に題材をとった作品がバチカン(教皇庁)やメディチ家など、セレブなパトロンたちの依頼により多く制作されました。パトロンが聖職者だったり描く現場が教会施設だったことから、キリスト教や神話の傑作絵画が多く描かれました。遠近法や透視図法などの技法が爆発的に発展したのも、ルネサンス期の200年間です。

こちらはラファエロによる「キリストの変容」。新約聖書の福音書に記されているワンシーンを、ドラマティックに描いています。天にのぼり清められるイエス・キリスト、それを祝福する旧約時代の預言者モーセとエリヤ。驚愕する弟子たち。うーん、すごい。中世時代と比べるとなんというか、雲泥の差といいますか。逆に中世に何があったのか、といいますか……。

David - Napoleon crossing the Alps - Malmaison1.jpg
By ジャック=ルイ・ダヴィッド – histoire image: info pic, パブリック・ドメイン, Link

時代は下って新古典主義。ナポレオン戦争まっただ中のヨーロッパで興った、ルネサンス時代の美術を理想とした芸術運動です。

こちらはダヴィッド「ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト」。みんな教科書で知ってるこの絵も新古典主義時代のものです。ドラマティック!

調和的な美を追求した新古典主義に関しては、こちらの記事も。

写実主義の直前まで隆盛だったロマン主義の絵画。ネガティヴな感情にまで踏み込み表現した革新的な運動でした。題材はやはり非日常の出来事を扱うことが主。

こちらはロマン主義の代表的作家ウージェーヌ・ドラクロワの「キオス島の虐殺」。ギリシャ独立戦争で実際に起こった虐殺事件を描いた作品です。それまでの絵画が描くことをしなかった「非調和」というものに挑んだ画期的なものでした。

しかしやがて非日常性・非現実にとらわれすぎて、ロマン主義は現実を描くことから離れていきます。写実主義はこのロマン主義への反発として発生した芸術運動です。

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