イタリアヨーロッパの歴史

イタリア統一後もくすぶった「未回収のイタリア」とは?この問題を元予備校講師が分かりやすく解説

第一次世界大戦の少し前、イタリアはドイツ・オーストリアと三国同盟を結びます。しかし、イタリアはオーストリアと領土問題を抱えていました。その問題が「未回収のイタリア」問題。高校生の頃に、世界史の授業で習ったかもしれない用語ですね。未回収のイタリアとはどの地域のことなのでしょう。世界史専門の単語なので、元予備校講師が勉強の手助けになるよう、わかりやすく解説します。

「未回収のイタリア」が発生した背景

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そもそも、なぜ、「未回収のイタリア」などという領土問題が発生したのでしょうか。その背景にはイタリアならではの複雑な事情でした。イタリアは地中海貿易で発達し、蓄積した富でルネサンスの繁栄を迎えます。その一方、巨万の富は周辺諸国の侵略を呼び込みました。ナポレオン戦争後、イタリア北部はオーストリアの支配下におかれ、イタリアが一致団結して統一するなど夢のまた夢という状態となります。

イタリアとドイツの深いつながり

955年、東フランク王のオットー1世が、レヒフェルトの戦いでハンガリーに本拠地を置くマジャール人と戦い勝利しました。962年、ローマ教皇ヨハネス12世はオットー1世に神聖ローマ皇帝の帝冠を与えます。こうして、ドイツとイタリアにまたがる神聖ローマ帝国が成立しました。

歴代の神聖ローマ皇帝は、イタリアの政治に絶えず干渉するイタリア政策を実行。ローマ教皇としばしば対立しました。その反面、ドイツ本国の支配がおろそかになりがちでした。

また、ローマ教会にとってもドイツはとても重要な存在でした。免罪符の発行など、ドイツで行う活動によって、ローマ教会は大きな利益を上げていたからです。こうして、ドイツとイタリアは政治・経済・宗教などの面でつながりを深めました

分裂が続いたイタリア半島

神聖ローマ皇帝が常に干渉するイタリア半島では、イタリア全土を統一した国家は現れませんでした。商工業が発達した北イタリアでは、ヴェネツィアジェノヴァミラノといった諸都市が成長します。

中部イタリアはフィレンツェをはじめとするいくつかの共和国や君主国とローマ教皇領で占められていました。

南イタリアは、東ローマ(ビザンツ)帝国が支配していましたが、イスラム教徒やノルマン人の侵入により東ローマ帝国は撤退。最終的にノルマン人のルッジェーロ2世が建国した両シチリア王国の支配下に置かれます。

政治的には分裂が続いたイタリア人ですが、東方貿易によって諸都市が経済力をつけました。その結果、イタリアでは高校の世界史で先生から習うであろうルネサンスが始まります。

諸外国が行ったイタリア戦争で、イタリアが荒廃

経済的には繁栄していても、政治的には団結していないイタリアは諸外国から見ると非常に魅力的な「獲物」でした。イタリアの富に目を付けたのがフランスや神聖ローマ皇帝であるハプスブルク家です。

1494年、フランス王シャルル8世がナポリ王国の王位継承権を主張してイタリアに出兵。イタリア戦争が始まりました。1499年にはルイ12世がミラノ公国の継承権を主張してイタリアに派兵します。

フランスによるイタリア占領を阻止したいハプスブルク家はフランスとの間でイタリア戦争を繰り広げました。戦いは50年以上にわたって続きます。そのせいで、イタリアの繁栄はすっかり失われてしまいました

オーストリアによる北イタリア支配とナポレオン戦争

1701年におきたスペイン継承戦争で、オーストリア=ハプスブルク家はスペインの王位をあきらめるかわりに、スペイン領だった北イタリアを獲得しました。それから、およそ150年にわたるオーストリアの支配が続きます。

その間、一度だけ大きな変化がありました。ナポレオンによるイタリア遠征です。ナポレオン率いるフランス軍は北イタリアのオーストリア軍を撃破。一時的に、イタリアがフランスの支配下に入ります。その後、ナポレオンの失脚により再び北イタリアはオーストリアの支配下に戻りました。

イタリアにとって、単に支配者が代わっただけのように見えますが、ナポレオンのイタリア遠征はイタリアに大きな変化の種を残しました。それは、ナポレオンがイタリアに持ち込んだ民族意識や統一意識です。やがて、種は成長し、イタリア統一に繋がります。

未回収のイタリア問題の発生と解決

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ウィーン体制崩壊後、イタリアでは民族意識が高まりイタリア統一に向けての運動が高まりを見せました。1861年にイタリア王国が成立します。その後、普墺戦争や普仏戦争を利用してイタリアはオーストリアやフランスの勢力を排除しました。このとき、統一国家に組み込めなかった地域が未回収のイタリアです。イタリアは「未回収のイタリア」回収に全力を尽くすことになりました。

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