大正幕末日本の歴史明治昭和江戸時代

日本海海戦に勝利し東洋のネルソンと称えられた「東郷平八郎」その生涯を元予備校講師がわかりやすく解説

1905年5月27日、対馬海峡近海で日本の連合艦隊とロシアのバルチック艦隊が日露戦争最大規模の海戦を繰り広げました。日本海海戦です。海戦の結果は日本の圧勝。日本は朝鮮海峡や日本海の制海権を各自なものとし、中国大陸でロシア陸軍と交戦中の陸軍への補給路を確保しました。今回は連合艦隊を率い日本海海戦に勝利した東郷平八郎の生涯について、元予備校講師がわかりやすく解説します。

若き日の東郷

Naval Battle of Hakodate.jpg
William Henry Webster – From Illustrated London News, 11 September 1869, p. 248. Description of image is at p. 257, パブリック・ドメイン, リンクによる

東郷平八郎は幕末・維新で中心的な役割を果たした薩摩藩に生まれました。平八郎が育った鹿児島城下の加治屋町は、幕末・維新で活躍した人物を多く輩出した場所です。平八郎は10代で初めて実戦を経験します。それが、薩英戦争でした。戊辰戦争が始まると、薩摩藩の軍艦である春日丸に乗り組み阿波沖海戦や宮古湾海戦、箱館湾海戦などに参戦します。

東郷平八郎が生まれ育った加治屋町

東郷平八郎は1848年、鹿児島城下の加治屋町に生まれました。父の東郷実友は郡奉行や納戸奉行をつとめた人物です。平八郎が生まれた加治屋町は幕末・維新で活躍した人物を多く輩出した場所としても知られます。

代表的な人物だけでも、西郷隆盛大久保利通西郷従道大山巌などがいますね。西郷、大久保は維新三傑にも数えられ、薩摩藩を動かし戊辰戦争に勝利しました。西郷隆盛の弟である西郷従道、大山巌は西郷の従兄弟にあたり、ともに明治政府で重責を担います。

特に大山巌は日露戦争で陸軍の総司令官となり、奉天会戦でロシア軍に勝利。日露戦争での活躍は「陸の大山」、「海の東郷」の活躍が大きいとして称賛されました。

作家の司馬遼太郎は加治屋町を「いわば、明治維新から日露戦争までを、一町内でやったようなものである」と評しましたが、出身者の顔ぶれを見ると納得しますね。

初陣となった薩英戦争

1862年、薩摩藩の実力者島津久光の行列を横切ったイギリス人が薩摩藩によって無礼打ちにされました。この事件を生麦事件といいます。

イギリスは薩摩藩に犯人引き渡しと賠償請求を行いまいたが、薩摩藩は拒否。イギリス艦隊が鹿児島湾に攻め込んできたため薩英戦争が始まりました。

イギリス艦隊は旗艦ユーライアラス号以下、7隻の艦隊。薩摩側は沿岸の砲台でイギリス艦隊に応戦します。イギリス艦隊は薩摩藩の砲台の位置をすべて把握していませんでした。そのため、死角からの砲撃により旗艦のユーライアラス号が中破。艦長が戦死します。

しかし、イギリス側もアームストロング砲を中心とする艦砲で応戦。鹿児島の城下町は火の海となりました。東郷は腰に両刀を帯び、火縄銃を担いで戦いに参加したといいます。

戦闘は膠着状態となり、両者とも痛み分けとなりました。東郷は若いころに近代兵器のすさまじさを、身をもって体験したのです。

戊辰戦争への従軍

薩英戦争後、平八郎は薩摩藩の海軍に入り、軍艦春日丸の砲術士官となります。1868年1月、兵庫港に停泊していた春日丸は薩摩に帰るため、兵庫港を出発しました。ところが、春日丸は警戒していた幕府軍艦の開陽丸に発見されてしまいます。

両艦は阿波沖で砲撃船を繰り広げました。これが、阿波沖海戦です。日本初の近代海戦でしたが、両者とも相手に大きな打撃を与えることはできず、春日丸は鹿児島への脱出に成功しました。

1869年、春日丸と新鋭の装甲艦甲鉄は宮古湾で旧幕府海軍の奇襲を受けます。旧幕府海軍は甲鉄に切り込み突撃を行い、船を乗っ取ろうとしましたが失敗。春日丸は撤退中の旧幕府海軍を追撃し、機関が故障した高雄を拿捕します。

この宮古湾海戦は平八郎にとって修正忘れられない海戦となりました。その後、春日丸は箱館湾の制海権をめぐって争われた箱館湾海戦にも参戦します。

日露戦争前の東郷

Japanese cruiser Naniwa in 1887.jpg
不明 – Mikasa Memorial Museum, Yokosuka, パブリック・ドメイン, リンクによる

明治維新後、平八郎は日本海軍の一員として活動します。平八郎は同郷の西郷隆盛の口利きを得てイギリスに留学しました。イギリスで海軍技術や国際法を学んだ東郷は日清戦争に従軍。豊島沖海戦や威海衛海戦で活躍します。特に、豊島沖海戦中におきた高陞号事件は平八郎の評価を高めました。

次のページを読む
1 2 3
Share: