安土桃山時代日本の歴史

戦国の覇王織田信長が築城した「安土城」について元予備校講師がわかりやすく解説

戦国時代、覇王とよばれ諸国に威名を馳せた織田信長。彼が近畿地方に進出し、全国政権の中心として築城したのが安土城でした。復元された安土城の図や立体模型を見ると豪壮華麗な建築だったことが伺えます。まさに、覇王のための城でした。今回は信長の足跡をたどりつつ、安土城の築城や信長死後の安土城について、元予備校講師がわかりやすく解説します。

織田信長の勢力拡大

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織田信長は必要に応じて本拠地を次々と変えた戦国大名でした。土地との結びつきが強かった時代、本拠地を次々と変えるのはなかなか難しいことです。しかし、信長は清洲、小牧山、岐阜と必要に応じて居城を変えました。足利義昭を奉じて上洛後、信長は浅井・朝倉などの反信長勢力と戦いながら勢力を拡大させます。

尾張時代の信長

1552年、父信秀の死によって織田家の家督を継いだ信長は尾張統一に乗り出します。1554年、同族どうしの争いに勝利した信長は清洲城に入城。1558年、信長は弟の信勝を倒して尾張一国を手中に収めました。

1560年、駿河の今川義元が25,000の兵を引き連れ上洛を開始。今川義元は道中にある尾張の信長に襲い掛かりました。しかし、桶狭間の戦いに勝利することで東からの脅威を排除します。

信長は桶狭間の戦い後に独立した三河の松平元康(のちの徳川家康)と清洲同盟を結んで東を安全にしてから、北の美濃斎藤氏との戦いに集中しました。このとき、信長は本拠地を美濃に近い小牧山に移します。

家臣たちは大反対しましたが、信長は反対を押し切って本拠地移しました。これ以後、信長は必要に応じて次々と本拠地を変えるようになります。

 

斎藤氏を倒し、天下布武を志した岐阜城

小牧山に本拠を移した信長は本格的に美濃攻略乗り出します。信長は農民兵だけではなく、金銭で雇った専業の兵士を用いました。農民兵は農業が忙しいときは借り出せません。専業の兵士を使うことで、信長はいつでも、どこでも戦うことが出来る軍団を作り出しました。

美濃は恒常的に織田軍の攻撃にさらされるようになります。斎藤氏の配下にいた国人たちは農業もままならず、疲弊しました。この状況を利用して美濃の武将を織田家に引き入れたのが木下秀吉です。秀吉の調略は見事に成功。ついには、斎藤氏の重臣である美濃三人衆を味方に引き入れます。

信長は斎藤氏を滅ぼすチャンスと考え、一気に斎藤氏の居城稲葉山城を攻め落としました。稲葉山城を占領した信長は城の名を岐阜城と改めます。美濃・尾張二カ国の支配者となった信長は、天下布武を志しました。

勢力急拡大の要因となった信長の上洛

1568年、信長のもとに13代将軍足利義輝の弟である足利義昭がやってきました。最初、義昭は越前の朝倉義景を頼りましたが、義景がなかなか上洛しないため信長に京都に入るための援助を求めます。

京都に攻め込む口実を得た信長は義昭の依頼を快諾。たちまち、京都を制圧しました。信長に擁立された足利義昭は室町幕府15代将軍になります。義昭は信長に管領や副将軍などの地位を与えようとしましたが、信長は固辞しました。

その後、信長は京都周辺を支配してきた三好三人衆を打ち破り、自治都市堺も支配下に組み込むなど勢力を拡大します。信長の勢力圏は尾張・美濃から山城・河内・摂津・近江に及ぶ広大なものとなりました。

新しく支配下に置いた近畿地方は、信長の本拠地である岐阜城から遠い場所にあります。広大な地域を効率よく収めるには岐阜よりも交通の便が良い場所に本拠を移す方が合理的でした。

浅井氏を滅ぼし、近江を平定

1570年4月、信長は上洛の命令に従わない越前の朝倉義景討伐の兵を起こします。しかし、同盟関係あった近江の浅井長政は信長から離反。朝倉氏に味方しました。朝倉と浅井の挟み撃ちにあい窮地に陥った信長はわずか10騎で京都に帰還します。

妹のお市を嫁がせ、浅井長政を丁重に扱ってきたと思っていた信長はこの裏切りに激怒。浅井・朝倉軍と激しい戦いを繰り返すようになります。

1570年6月、信長は姉川の戦いで浅井・朝倉連合軍に勝利。その後、足利義昭が組織する反信長包囲網を幾度となく打ち破り、6年かけて浅井・朝倉の勢力を弱体化させます。

1573年に浅井・朝倉を滅亡させ、越前と近江を領国に組み入れました。こうなると、岐阜城は信長の勢力圏の東に偏りすぎています。近畿地方から中部地方に及ぶ領地を効率よく支配するには、その中間地点である近江国に本拠を構えるのが効率的でした。

安土築城

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京都周辺を手中に収めた信長にとって、岐阜城は京都から遠く不便になってしまいました。信長は琵琶湖の水運を活かすことができる琵琶湖岸の安土に城を作ります。安土城は本丸に天守閣を配置した初めての城でした。完成した安土城は今までに見たことがないような華麗な建築となります。

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