日本の歴史江戸時代

日本屈指の美しさを誇る庭園「桂離宮」の歴史・見どころをわかりやすく紹介

近年、皇居内の乾通りや京都御所の一般公開など、普段は入ることのできない皇室ゆかりの場所を参観できる機会が増えてきました。宮内庁が一般向けに参観の案内をしている場所としては、皇居や京都御所とともに有名なのが「桂離宮」。広大な敷地の中に日本屈指の美しい庭園を持つ、京都市の桂川に程近い場所に建つ皇室関係の施設です。海外にもファンが多いという桂離宮。どんな歴史を持つ建造物なのでしょうか。今回はそんな「桂離宮」をご紹介したいと思います。

一度は行ってみたい!桂離宮とはどんなところ?

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「桂離宮」という響きから、何となく京都にある観光名所か有名な寺院かな、とお考えになる方も多いかもしれません。人気のスポットであることに違いはありませんが、自由に出入りできる場所ではないので見学の際には注意が必要です。どういう場所なのか、まずは桂離宮の歴史や基本情報について解説します。

離宮とは何?桂離宮とはどういう場所なのか

桂離宮(かつらりきゅう)は、京都府内を流れる桂川の川岸に位置しています。この地域は古くから、貴族の別荘地として知られていたのだそうです。

貴族たちはこの地域に志向を凝らした庭園を造り、茶会や宴などを催していたといわれています。雅な人々の社交場だったのです。

離宮は「皇居とは別に設けた宮殿」のことなのだそうで、東京にもかつて「赤坂離宮」や「芝離宮」、「浜離宮」などいくつかの宮殿が存在していました。

現存するものとしては京都にある「桂離宮」と「修学院離宮」の2つで、他のものは他の施設に作り変えられたり、建物は取り壊され公園として利用されたりしています。

一般的には、広大な敷地を持つものを「離宮」とし、比較的小規模な施設を「御用邸」と呼んでいるのだそうです。

ただ「桂離宮」が「離宮」と呼ばれるようになったのは明治時代に入って宮内省という役所の管轄になってからなのだとか。それより前は「桂別業(別業=べつぎょう/古代貴族の別荘のこと)」と呼ばれていました。

現在も宮内庁が管理をしており、一般の参観は人数が制限されています。参観可能日で定員に空きがあれば当日ふらっと行っても見学することは可能。しかし定員は非常に少ない(一日60人ほど)ので、事前に予約申込をして見学の要領を確認しておいたほうが確実です。

桂離宮の歴史とは?いつ頃、誰が築いたの?

古くから貴族たちの社交場となっていた桂の地。そこに、だいたい1615年から1620年頃、八条宮智仁(としひと)親王により、皇室の別邸が建造されます。それが桂離宮です。

1615年といえば大阪夏の陣が起きた年。豊臣の時代が終わり、徳川幕府の時代が始まった頃、桂離宮は造営されたのです。

実は智仁親王は、豊臣家とは奇妙な関わりがありました。

智仁親王は第107代天皇である後陽成天皇の弟にあたります。

時は戦国時代。1586年(天正14年)、まだ幼少の親王は豊臣秀吉の猶子(官位昇進の便宜などの理由から親子関係を結ぶこと)となります。当時はまだ、秀吉には嫡子がありませんでしたので、ゆくゆくは関白職に就くことが約束されていました。

しかし1589年(天正17年)、秀吉に実子が誕生。秀吉との約束は白紙に戻されてしまいます。そこで親王は八条宮家を創設。今考えれば、それでよかったのかもしれません。

智仁親王は大変教養が高く、才能あふれる方だったと伝わっています。

しかし豊臣家と関わりがあったことなどから、徳川家からは敬遠されてしまい、その後も皇位に就く機会はありませんでした。智仁親王は造園の才能にも恵まれていたため、桂川の岸辺に美しい庭園を持つ別業を造り始めます。

激動の時代、時の権力者たちに翻弄されながら、心和む美しい庭園を築いた智仁親王。景観は昔のままに、今なお静かに時を刻んでいます。

美しさに思わずため息!桂離宮の見どころ解説

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ふらりと訪れて見学、というわけにはいきませんが、計画的に訪問すれば問題ありません。見学人数が決められていますし、職員の方がしっかりガイドしてくださるので、ゆったりじっくり、日本建築や造園の美しさを堪能することができます。ひとたび足を踏み入れれば別世界。桂離宮の見どころ、ご案内します。

桂離宮の基本情報:アクセスは?

桂離宮の敷地は広大です。

総面積は附属の農地などを含めるとおよそ6万9千平方メートル。東京ドームの1.5倍もの広さがあります。

17世紀初頭に創建されてから今日に至るまで、火災や倒壊なども無く、庭園内の建造物はほぼ完全な状態で残っているのだそうです。

戦国時代後期から江戸時代初期の建築物がそのまま残る、日本最古の回遊式庭園と称される桂離宮。そこには、400年以上前の人々が見た景色がそのまま残されています。

場所は、京都御所の西南方面。住所は京都府京都市西京区桂御園です。

公共の乗り物で向かうなら、JR京都駅から地下鉄烏丸線と阪急電鉄を乗り継ぎ、桂駅で下車。桂川を目指して20分ほど歩くと到着します。時間が合えば、鉄道より市営バスのほうがバス停から近くわかりやすいのでおすすめです。

桂離宮の見どころ(1)美しい回遊式庭園

庭園の中には、高い建物や巨木はほとんど見られず、敷地が広大なので空が広く見えます。

昔の高貴な身分の人々は、月を見て楽しんでいたと聞いたことがありますが、桂離宮も例外ではありません。庭園内の池には月を眺めるための「月見台」が設けられています。

池の周囲の植栽も、一見さりげないようでバランスよく配置されており、どこを見ても絵になる構図。カメラのシャッターを押す手が止まりません。

ツアーは見どころの解説なども含めてゆっくり巡りますが、撮影に夢中になっておいてけぼりになることもしばしば。敷地内では団体行動が基本なので、はぐれないように注意してください。

青空とのコントラストも美しいですが、雨の中の庭園も格別。四季折々、季節の変化を楽しむことができる庭となっています。

やはり紅葉の季節を希望する人が多いようですが、新緑の時期もおすすめ。また、多彩な敷石や鮮やかな苔など、足元にも目と向けていただきたいところです。

桂離宮の見どころ(2)点在する建造物

桂離宮というと庭園の美しさが有名ですが、建造物の美しさも見逃せないポイントです。

ツアーは中央の池をぐるりと一周するコース。途中に、書院造の建物と、それぞれ趣の異なる茶室が点在しています。

回遊式庭園と言われる所以がここに。それぞれの建物の周囲にはバランスよく木々が植えられ、池を巡って次の建物が見えてくると、景色もがらりと変わります。

内部を見学できる建物は限られていますが、表具や内装などを見ると、モダンでハイカラな印象も。400年以上も前の建物だということを忘れてしまうほどです。

特に目を引くのが、松琴亭(しょうきんてい)という茅葺の茶屋。皇室の離宮であると忘れてしまうほど素朴な造りで、趣ある外観と、市松模様のふすまが印象的です。

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