室町時代戦国時代日本の歴史

【戦国時代】絶世の美女「お市の方」が歩んだ波乱万丈すぎる人生をわかりやすく解説

戦国時代の女性というと、思い浮かべる方も多いかもしれないお市の方。淀殿をはじめとした浅井三姉妹の母親ですね。絶世の美女としても名高い彼女が歩んだ人生は、戦国時代に生きた女性の悲劇の典型とも言うべきものでした。そんな中で彼女が見出した幸せと覚悟はいかなるものだったのか、今回はご紹介していきたいと思います。

織田信長の妹から浅井長政の妻へ

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お市は戦国時代の風雲児・織田信長の妹として生まれ、聡明かつ絶世の美貌の持ち主だったと言います。そんな彼女が嫁いだ先は、浅井長政(あざいながまさ)という若き武将のもとでした。政略結婚という生活の中で、彼女はどのような境遇に置かれていたのか、ここでは見ていきたいと思います。

信長の妹に生まれて

お市が生まれた年は、はっきりとは分かっていません。天文16(1547)年説が多く取られているので、今回はそれを参考にしていきたいと思います。尾張(愛知県西部)の戦国武将・織田信秀(おだのぶひで)の娘として誕生しました。

兄・信長とは13歳違いで、母も同じという間柄でした。一説にはいとこという説もあるそうですが、ここでは妹として考えていきますね。

彼女の幼い頃の様子は伝わっていませんが、成長するにつれて絶世の美女とうたわれるようになっていきました。兄・信長も美男子と言われていますし、血筋だったのかもしれませんね。美しいだけではなく、聡明な女性だったそうです。

政略結婚で浅井氏に嫁ぐ

永禄10(1567)年から翌年の初頭にかけて、お市は近江(滋賀県)の戦国武将・浅井長政に嫁ぎました。すでに彼女は21歳になっており、当時からすれば異例なほどの晩婚です。

浅井氏は南近江の六角(ろっかく)氏の傘下にありましたが、独立を図っており、六角氏との関係は決して良くはありませんでした。そのため、信長と同盟することにしたのです。その手段が、長政とお市の結婚でした。

夫や娘たちとの幸せな生活を送る

長政はすでに六角氏の家臣の娘を正室にしていましたが、信長との関係構築のためにこれを離縁してまでお市を迎えたのです。

ただ、信長が浅井の盟友である越前(福井県)の朝倉義景(あさくらよしかげ)と仲が悪いことから、この結婚には反対する家臣もいました。

しかし長政とお市は非常に仲睦まじく、この後3人の娘に恵まれることになります。この娘たちが、茶々(ちゃちゃ/後の淀殿)・初(はつ)・江(ごう)という「浅井三姉妹」です。みなが決して幸せな新婚生活を送れるわけではない戦国時代でしたが、この時のお市はとても幸せな日々を送ることができたのでした。

運命の大転換:夫と兄の対決、そして夫との別れ

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お市の幸せな日々を打ち砕いたのは、夫と兄の対立でした。強大な力を有する兄・信長の前に、夫・長政は善戦むなしく力尽き、散っていきます。残されたお市と娘たちは、兄のもとに引き取られることになりました。しかし、皮肉なもので、夫と死別してからの約9年間が、彼女にとってもっとも穏やかな時間となったのです。

兄に破られた約束

元亀元(1570)年、織田信長は突如として越前に侵攻し、朝倉義景を攻め始めました。

長政にとっては寝耳に水。というのも、お市を娶る際に「浅井の盟友である朝倉とは戦わない」と信長は約束していたからです。

長年の同盟関係にあった朝倉義景を助けるか、それとも新たに姻戚関係となった信長に加担するか…悩んだ長政でしたが、最終的に朝倉義景を助ける方を選びました。

こうしてお市は、夫と兄が刃を交えるという状況を目の当たりにしなくてはならなくなったのです。

小豆の袋で兄に危機を知らせる

浅井・朝倉連合軍と織田信長軍との戦いは、最初は浅井・朝倉連合の優勢で展開しました。長政が離反したことで信長は窮地に追い込まれ、「金ケ崎の退き口(かながさきののきぐち)」という決死の撤退戦を行うことになります。

創作とも言われていますが、こんな逸話が伝わっていますよ。

お市は、兄・信長に小豆の袋の両端を縛ったものを送り届けたそうです。

言葉はなくとも、暗に「挟み撃ちになりますよ」との意味合いを込め、兄に危機を知らせたわけですね。

夫も大事だが、兄や実家も大切。戦国時代、他家に嫁いだ女性は実家に情報提供することも少なくありませんでした。そのための政略結婚だったわけですからね。お市も、その例に漏れなかったということになります。

とはいえ、お市と長政の夫婦仲に影響はなかったようです。相変わらず2人の仲は良く、天正元(1573)年に末娘の江が生まれていることからも、仲睦まじさが推し量れますね。

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