教養歴史

東西冷戦が終わっても北大西洋条約機構のNATOはなぜ存続しているの?

1989年のマルタ会談で、ソ連のゴルバチョフ書記長とアメリカのブッシュ大統領によって東西冷戦は終結が宣言されています。それからすでに30年を経過しましたが、東西冷戦をきっかけとして設立されたNATOは、依然として存在し、欧米の安全保障の機能を捨てていません。 このNATOがなぜ今も存続しているのかについて解説します。

北大西洋条約機構_NATOとは

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北大西洋条約機構、すなわちNATO(ナトー)は、1948年にブリュッセル条約に基づいて主要ヨーロッパ諸国で作られた軍事機構を母体として、1949年に創設されました。東西冷戦が激しくなったことから、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクといった戦勝国母体の組織に、アメリカやカナダなど12ヶ国が加盟したのです。

NATOは、もともとソ連を中心とした共産主義国の軍事的脅威に対抗して防衛を図るための軍事同盟を結ぶことが目的でした。それに対して、ソ連を中心とする東側の東欧諸国は、1955年にワルシャワ条約機構を設立して、NATOに対抗し、冷戦期間中は対立が続いていたのです。

ソ連の崩壊とともに、ワルシャワ条約機構は自然消滅しましたが、NATOは今も存在しています。

ソビエト連邦の共産主義拡散姿勢への転換

もともと、ソビエト連邦が成立した当時は、レーニン、スターリンといった歴代の指導者は、共産主義の世界拡散については慎重でした。一方で、米国や西洋諸国の自由主義国間では、領土とは別に、共産主義そのものが資本主義経済と自由主義に対する脅威として恐れられていたのです。第二次世界大戦中まではそれどころではなく。ドイツ、イタリアに勝利することが第一になっていました。

しかし、ドイツ敗戦が見えた1945年2月のヤルタ会談で、終戦後の領土の帰属問題などが検討されました。その中が東ヨーロッパ諸国に進出したソ連が方針を転換して東欧支配を主張し、欧米諸国は強い危機感を感じたのです。結果的に、終戦後には東ヨーロッパ諸国は次々とソ連傘下に入り、共産主義国家となって、ドイツも東西に分割されました。

その結果、共産主義国家を警戒するアメリカを中心とした西側諸国とソ連を中止とした東側諸国による東西冷戦が始まり、NATOの創設につながったのです。

日本は、当時敗戦国として連合軍のGHQの管理下にありましたが、東西冷戦の影響はすぐに現れ、レッド・パージと呼ばれる赤狩り(共産・社会主義者の追放)が日本でもおこなわれました。

東西冷戦の影響_南米における共産主義革命とキューバ革命

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東西冷戦は、ソ連による南米諸国の革命勢力への支援にも現れ、1962年にはキューバ危機として、核兵器による戦争という地球規模の危機も生じることになったのです。ソ連が、アメリカのすぐ横のキューバに核ミサイルを配置しようとしたことで、それに反発したアメリカとの対立が生じました。最初はどちらも引く気配を見せなかったことから、核兵器を使用した戦争が現実なものとして初めて意識されたのです。結局は、当時のケネディ大統領とフルシチョフ書記長の直接交渉によって、ソ連のミサイルのキューバ持ち込みはなくなり、危機は回避されました。

核軍縮への動きが始まる

それを契機として、国連を中心に核軍縮機運が高まり、いくつもの条約が米ソ間で結ばれ、核不拡散条約も成立したのです。核不拡散条約は、米ソだけでなく、核保有国のイギリス、フランス、中国の5ヵ国によって、「核兵器の不拡散に関する条約」として1968年に結ばれました。しかし、それにも関わらず、以降もインド、パキスタンが実際に核兵器の保有国になっており、北朝鮮、イランもその可能性があり、核開発放棄に向けた交渉が続けられています。

それ以外にも、米ソ間で結ばれたINF条約(中距離各戦力全廃条約)、数次にわたるSTART条約(戦略兵器削減条約)などもありました。しかし、最近では、米露間の対立から条約が継続されない事態が生じており、世界の不安定さは増すばかりです。そのため、NATOを解散させることができなくなっている一つの要因にもなっています。

概念上の違いから生じた欧米諸国の共産主義に対する恐怖

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西側諸国には、個人の資産所有を認めないマルクス・レーニン主義と呼ばれる共産主義に対する警戒が非常に強くあります。マルクス・レーニン主義が世界に拡散されれば、自由主義に基づく資本主義が崩壊の危機に直面すると恐れたからです。概念上の違いですが、互いに対話の余地もなく19世紀以来、対立を続けてきました。

西洋社会の資本主義は、自由主義の中で成立し、個人資産の自由市場での投資によって成長してきたため、資産の所有と市場の自由を認めない共産主義は怖れられたのです。NATOは自由と個人の所有権を守るための安全保障として成立しています。

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