アメリカの存在感の低下から自国優先主義へ
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米国は、世界経済、軍事力において、かつてのように絶対的な存在を示すことはできなくなり、世界秩序は混とんとしています。
テロ戦争を契機に、欧米諸国では右傾化傾向が進み、保守的勢力が台頭しました。米国ではトランプ氏のように極端な保守主義の考え方を押し通す大統領も生まれています。アメリカには、かつてのように世界を牽引する力はなくなり、自国を守ることが最優先になっているのです。
それだけに、アメリカ軍が駐留している国に対してはより大きな負担を求めています。NATO参加国の欧州諸国にも負担増を求めているのが現実です。アメリカ自身の安全保障上、ロシアや中国と対抗していくためには、NATOは必要不可欠であるものの、アメリカ自身の負担は軽減したいという考え方になっています。
中国の台頭と欧州の弱み
ソ連は自由主義国ロシアになったとは言え、その軍事力は未だに大きいものがあります。共産主義国家として中国は、一国二制度という、政治形態は共産主義のまま、資本主義を取り入れるという政策で今や世界第二位の経済大国に成長しました。さらに、北朝鮮は依然として共産主義国家のまま、南米でもベネズエラのように反米主義国家が生まれています。
また、現在のEU諸国では、エネルギーをソ連の石油、天然ガスに依存している国も多く、それを守るのもNATOの役割になっているのです。
北大西洋条約機構NATOを無くせない欧米諸国の悩み
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EUはヨーロッパを一つにすることに成功したものの、歴史上、ヨーロッパは対立によって発展してきた歴史があります。フランス、ドイツ、イギリスなどの主要国それぞれがプライドを持っており、現在イギリスは、EU離脱(ブレグジット)の最中です。その行方次第では、EUも不安定になる可能性があり、米国とは対等になりたいものの、米国主導のNATOを外せない事情があります。ロシアとも、エネルギーだけでなく、ウクライナなどを巡って対立が深まっているのです。NATO軍は、欧州をめぐる不安定さの中で、安全保障を維持するためにも必要不可欠な存在になっています。
アメリカにも、欧州にもそれぞれに弱みがあり、互いにNATOそのものを無くすことはできなくなっているのです。今後、国連が力を持ち、国連軍を創設しない限りは、NATOの役割や形態は変わるにしても、無くなることはないでしょう。
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NATOは冷戦のために生まれたにもかかわらず、冷戦が終結しても解散にはなっていません。東西冷戦以上の不安定な世界秩序に陥っているからです。日本もこの不安定な世界秩序を煽るのではなく、緩める努力が必要でしょう。