- 経済学における「大きな政府」と「小さな政府」
- アメリカがこけると「大きな政府」論にも批判が起き、マネタリストが台頭
- 先進各国においても財政赤字によって景気拡大策が打てなくなっている
- パンデミックによる未曾有の景気落ち込みによって再び「大きな政府」へ
- パンデミック後の経済理論の行方
- 「大きな政府」と「小さな政府」のそれぞれの意味と問題点
- 古典経済学の「小さな政府」の意味と問題点
- ケインズらの近代経済学の「大きな政府」の意味と問題点
- マネタリストの進出の背景
- 「大きな政府」と「小さな政府」は国の置かれた環境によって使い分ける必要
- 我が国の経済政策の方向
- もはや「大きな政府」、「小さな政府」と論争する意味はなくなった
この記事の目次
経済学における「大きな政府」と「小さな政府」
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ケインズの近代経済学が現れる以前は、資本主義では市場は自由に任せたほうがよいという「国富論」で有名なアダム・スミスの言葉に代表される「小さな政府」が当たり前でした。すなわち、古典経済学では小さな政府が当たり前になっていたのです。
しかし、その結果、1929年に世界恐慌が起こり、世界の経済は大混乱に陥りました。その結果、新たに大統領に就任したルーズベルトは、政府が積極的に財政出動して有効需要を創出すべきであるというニューディール政策を打ち出したのです。「大きな政府」を主張するケインズ理論にしたがって、アメリカ大統領に当選したルーズベルトが積極的な財政手動をおこない、公共事業を展開したのは有名でした。
経済学では、それまでの自由主義的な考え方から、国が負担して公共事業を積極的に行い、資本市場や経済における規制など、積極的に関与する「大きな政府」が主流になったのです。企業にすべて任せるのではなく、福祉、医療などの分野でも積極的に政府が投資を行うようになります。それ以降、先進諸国では「大きな政府」論が主流を閉めるようになり、積極的な財政出動による公共事業などがおこなわれたのです。その結果、各国は大きな財政赤字を抱える国も増えていきました。
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アメリカがこけると「大きな政府」論にも批判が起き、マネタリストが台頭
しかし、第二次世界大戦後のアメリカの好景気が終わり、1980年代に米国経済が大きな景気停滞に陥った際には、財政赤字が大きくなり過ぎて、景気対策が打てなくなりました。そのため、大統領になった共和党のドナルド・レーガンは新古典経済学者といわれるマネタリストたちの意見を採用することになります。フリードマンらのマネタリストたちは、「大きな政府」による経済市場に対する規制を批判し、規制緩和を進めて、経済対策は中央銀行の金融政策によっておこなうべきであるとしたのです。
すなわち、政府の積極的な規制を撤廃し、金融政策によって景気回復を目指したことから、「小さな政府」論が再び脚光を浴びるようになりました。
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先進各国においても財政赤字によって景気拡大策が打てなくなっている
現在では、先進諸国においても財政赤字が大きく、実質的に財政出動による景気政策は採れなくなっています。日本でも、バブル経済の破綻後は、財政赤字が大きく、公共事業による景気対策は打てなくなっているのはご存じの方も多いでしょう。すなわち、規制緩和による景気政策を採ることが多くなっているのです。我が国のバブル経済が破裂した後では、財政赤字は大きく、当時の内閣は政府事業の民営化政策を採らざるを得ないようになりました。これまでのような積極的な財政出動は採れないため、日本銀行の金融政策に依存せざるを得なくなっているのです。それ以降、日本の金融市場の金利は超低金利時代に突入し、それは現在まで続いています。
積極的な財政支出をできない結果、日本経済はデフレに陥り、市場金利はこれまでなかったような低金利になり、すでにマイナス金利になっているのです。そのため、金融政策そのものまで有効に機能しなくなっています。
これは、どこの国でも同じような状況にあるのです。つまり、リーマン・ショック以降は世界的に「小さな政府」にならざるを得なくなり、金融当局の金融政策に依存する政策になっていると言えます。
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パンデミックによる未曾有の景気落ち込みによって再び「大きな政府」へ
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しかし、今回の新型コロナウイルスによるパンデミックによる経済縮小に対しては、金融政策ではどうしようもなくなっています。そのため、先進各国でも財政赤字には目をつむって大規模な財政出動をせざるを得なくなっているのです。すなわち、パンデミックという大きな環境変化によって、再び「大きな政府」が必要になったと言えます。ただ、これまで大幅な財政赤字のなかでの大規模な財政出動という例はありません。今後新型コロナウイルスのパンデミックが終息した後にどのような経済的な影響が出るか、だれもわかっていません。