日本の歴史明治明治維新

日本の近代化を加速させた「岩倉使節団」をわかりやすく解説

戊辰戦争が終わり、ようやく日本国内が落ち着きを取り戻したころ、明治政府の中で海外視察を兼ねた条約改正交渉の機運が高まりました。明治政府は右大臣岩倉具視を団長・特命全権大使とする48人の大使節団が編成。このほかに53人の留学生(うち、5名が女性)も伴う総勢100名以上の大使節団となりました。彼らの見聞や留学の成果は日本の文明開化を大きく進展。今回は岩倉使節団の背景・詳細・その後の動きなどについてわかりやすく解説します。

岩倉使節団派遣の背景

image by PIXTA / 44317246

1868年から翌69年にかけて、日本各地で戦いを繰り広げた戊辰戦争が終結すると明治政府による新しい国づくりがスタートしました。国内政治が安定すると、政府は国力をつけるための技術発展をめざします。また、幕末に結ばれた不平等条約の改正も明治政府にとって大きな仕事でした。使節団派遣の背景を探ります。

国内政治の安定化

明治政府は1868年に五箇条の御誓文を発表し、新たな政治の方針を示します。江戸を東京と改称し、遷都した新政府は政体書を公布。新しい政府の仕組みを作ります。

新政府の要職を占めたのは戊辰戦争でも活躍した薩摩・長州・土佐・肥前を中心とする藩閥出身者です。彼らは中央集権を進めるため、版籍奉還廃藩置県を断行。藩は県とされ、元藩主の知藩事にかわり政府が任命した県令が県を統治することになりました。

これにより、旧幕府に比べてはるかに強力な中央集権的な政府を作り上げます。また、平民に名字を許可し四民平等をすすめるなど、社会的な面でも近代化がすすめられました。さらに、文部省を設置し小学校をつくる準備も進められるなど、欧米列強においつくため、政治や社会の近代化が急ピッチで進められたのです。

幕末から続く居留地貿易と不平等条約

日米修好通商条約をはじめ、日本はアメリカ・イギリス・フランス・オランダ・ロシアと通称条約、いわゆる安政の五カ国条約を結んでいました。当時、外国商人は日本政府(当初は幕府)が認めた「居留地」にいます。日本商人は居留地に品物を運び込み、外国商人と取引していました。

居留地にいる外国人には日本の法律を適用できず、外国人関連の裁判は外国の領事裁判官が、その国の法律に照らし合わせて行いました。これを、領事裁判権といいます。例えば、アメリカ人が日本で罪を犯しても、日本が捕まえることはできず、アメリカ人裁判官がアメリカの法律に照らして裁判をおこないました。

また、日本は外国から輸入される品物にかける関税率を自分で決めることができませんでした(関税自主権がない)。明治政府はこれらの不平等条約改正を目指したのです。

岩倉使節団の目的と構成員

image by PIXTA / 29146395

岩倉使節団には明治政府の重要人物たちが多数参加していました。当時の政府有力者の半数が参加した使節団の欧米歴訪は2年にも及びました。長期間、国のトップが外遊するという前代未聞の大使節団はどのような構成だったのでしょうか。また、国内に残って留守政府を担当したのは誰だったのでしょう。岩倉使節団や留守政府についてまとめます。

岩倉使節団の構成員と留守政府

岩倉使節団には当時の政府要人が多く参加しました。特命全権大使が右大臣の岩倉具視。副使は薩摩出身の大久保利通、長州出身の木戸孝允伊藤博文、肥前出身の山口尚芳の4名。特に、木戸と大久保は維新三傑に数え上げられる明治維新の功労者です。一等書記官以下の随員は薩長土肥に限らず、西洋事情に通じた旧幕臣からも多く参加。

一方、留守政府の構成員は太政大臣の三条実美、参議の西郷隆盛板垣退助大隈重信らです。使節団と留守政府はいくつかの約束をしていました。まず、大規模な案件は使節団に報告すること。次に新規の改正はしないこと。加えて大臣クラスである卿に欠員が出た時は参議が兼任することなどを定めました。しかし、使節団の外遊が長期化したせいもあってこれらの約束は守られませんでした。

欧米の制度・文物の視察

幕末から明治にかけて、幕府や諸藩は海外に留学生を派遣していました。オランダに留学した榎本武揚、アメリカに密航した同志社大学創設者の新島襄、のちに外務大臣となる青木周蔵など多くの人々がヨーロッパにわたりました。しかし、欧米諸国の圧倒的な力と比べると明治初期の日本はまだまだ発展途上。取り入れるべき知識や技術は山ほどありました。

そこで、欧米の政治・経済・軍事・産業などあらゆる分野の知識を総合的に学ぶ必要性があったのです。当初は、大隈重信中心の比較的小規模な使節団の覇権案が出ていました。しかし、岩倉具視と大久保利通はより大規模な使節団を編成。条約改正交渉を主目的としつつも、欧米の制度・文物の視察にも力を入れたのです。

次のページを読む
1 2 3
Share: