岩倉使節団の詳細
明治初期というとても不安定な時期に国の指導者の半数近くも参加して実行された岩倉使節団の派遣。当初は1年で帰国する予定でしたが、実際には1年10か月物長きにわたって欧米諸国を歴訪することとなります。彼らの足跡を追いつつ、アメリカ・ヨーロッパでいったいどのような活動をしたのかを見てみましょう。
アメリカでの岩倉使節団
1871年12月23日、岩倉使節団が横浜港を出発しました。最初に目指したのはアメリカ西海岸。1872年1月15日、サンフランシスコに到着します。そこから1869年に開通した大陸横断鉄道にのって一路、首都ワシントンを目指しました。
途中立ち寄ったシカゴで、岩倉は髷を切り落とし、和装から洋装へと衣替えします。岩倉は日本人としての服装・文化に誇りを持っていたため、髷と和装で渡米したのですが、現地で好奇の視線にさらされました。アメリカに留学していた息子の岩倉具定の助言もあって洋装へと改めたのです。
1872年2月、ワシントンに到着した使節団はグラント大統領と会談し条約改正を図りますが、国力の差もあり、改正は困難だと判断します。これ以後、使節団の主目的は条約改正から欧米視察へと切り替わりました。
ヨーロッパでの岩倉使節団
使節団が大西洋を渡りイギリスに到着したのは1872年の8月のことです。ヨーロッパ最初の訪問国であるイギリスで使節団は4か月近く過ごします。日本にとってイギリスは幕末以来の付き合いがある大国。同時に、強大な軍事力をもつ脅威の国でもありました。イギリスが繁栄を極めた19世紀後半。ロンドンは世界の首都といっても良いほどの大繁栄を迎えていました。イギリスの国力を与える工業や商工業、議会制度を学ぶために多くの時間を費やしたのでしょう。
次にフランス・オランダと歴訪。特にフランスはパリ・コミューンの争乱の直後であり、パリにはその傷跡が生々しく残っていました。使節団に大きな影響を与えたのがドイツ帝国宰相のビスマルクです。ビスマルクは不平等条約改正を目的としていた使節団に対し、国力の充実を先にするべきだとアドバイス。力こそがものをいう当時の国際政治の現実を知らされます。その後、使節団はロシアを訪問して帰国。最終的に外遊は2年近くにも及びました。
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随行した5人の女子留学生
岩倉使節団には5人の女子留学生も参加していました。吉益亮子と上田悌子、山川捨松、永井繁子、そして津田梅子です。最年少の津田梅子は出発時には6歳でした。このうち、吉益亮子と上田悌子は出発の翌年に帰国。ほかの3人は10年にわたって留学をつづけました。
永井繁子は帰国後、女子高等師範学校や東京音楽学校で教員として勤めました。山川捨松は、西郷隆盛のいとこで日露戦争の満州軍総司令官を務めた大山巌と結婚。明治初期に外交の舞台となった鹿鳴館で留学経験を生かし英語・フランス語・ドイツ語で諸外国の外交官と談笑する捨松の様子は「鹿鳴館の花」とたたえられました。
津田梅子は旧幕臣の娘。岩倉使節団最年少の6歳で随行。10数年に及ぶ留学中に英語のほかラテン語・フランス語もマスター。1882年に帰国しました。帰国後、伊藤博文の家に滞在しつつ英語を教えるなどしていました。その後、再び留学の後、現在の津田塾大学にあたる女子英語塾を設立。女子教育に力を注ぎました。現代に比べ女性の活躍の場が少なかった時代に5人の留学生は自分たちのできる範囲で留学経験を活かします。
岩倉使節団の帰国後
岩倉使節団は当初の予定を大幅に超える長期間の外遊となりました。その間、留守政府では朝鮮への使節派遣を決定するなど、使節団との当初の約束である事前の協議なしで重要事項が進められます。帰国した岩倉や大久保は留守政府の中心人物である西郷隆盛と対立。その対立はやがて、明治六年の政変とよばれる政争へと発展しました。
留守政府の動向
岩倉らの外遊が2年近くに及ぶものだったため、留守政府が決定・実行したことも多岐にわたりました。1872年、新たな卿を選任しないという約束に反し江藤新平が司法卿に就任。同年に小学校などの設置を定めた学制を公布。国民に徴兵の意義を説いた徴兵告諭や徴兵の実行を定めた徴兵令。税制の大改革である地租改正など重要事項が矢継ぎ早に決定・実行に移されます。
1873年、鎖国政策をとり続ける朝鮮に対し、武力で開国させるべきだとの主張が留守政府で高まりました。いわゆる征韓論です。武力行使の前に使節を派遣するべきだと話がまとまり西郷が朝鮮に派遣される寸前のところに岩倉使節団が帰国。岩倉具視や大久保利通は西郷ら征韓派の主張を抑え込もうとしました。
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