日蓮と法華経
日蓮は天台宗の東国の本山ともいわれる清澄寺で出家。鎌倉仏教で念仏・禅・密教と色々な形になっているのを不思議に思い、どの教えが正しいのかと比叡山で修行をしながら高野山・四天王寺・三井寺・奈良の諸寺を遊学し、一切経と呼ばれるお釈迦様の残されたすべての経典を勉強します。その中で法華経が庶民を救うための最高の教えだという結論を出したのですね。
そして「私は法華経を深く信仰します」という「南無妙法蓮華経」を正行として、日蓮宗・法華宗各派の開祖となります。法華経を深く信仰することによって、誰にでもある仏性が目覚めて生きながらにして成仏できることを説いたのですよ。
法華経と聞くと日蓮を思い浮かべる人は多いですよね。法華経を唱える宗派や新興宗教などが多いこともあるからでしょうね。
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近世までどうやって広がっていったのでしょう
戦国時代になると戦乱で戦死した人たちへの罪障消滅や平和への祈りをこめて、戦国武将や江戸時代になってからも大名たちが熱心に信仰していきますね。
「斎藤道三」は元々は日蓮宗の僧侶(父親がそうだったという説が有力になっています)だったために、息子2人は京都の「妙覚寺」の僧侶となっていますね。その縁で織田信長は奥さんのお兄さん達の寺だということで寄宿していたといいますよ。亡くなった「本能寺」もよく寄宿していたそうですが、妙覚寺がほとんどといわれてます。「本能寺の変」の時は織田信長の息子が妙覚寺に寄宿していて、同じように「明智光秀」の軍に襲撃されて亡くなっていますよ。
「加藤清正」は特に法華信者として有名で、菩提寺である熊本や、出生の地といわれる名古屋市にも日蓮宗お寺がありますよ。他にも法華経は、それまでのお経では成仏できないとされていた女人成仏を説いていることから、大名の奥方たちにも篤く信仰されていったのですね。
「徳川家康」は、織田信長の「長島の戦い」などで宗教を敵にするのはよろしくないと、お葬式は浄土宗、祈祷は真言宗、安産祈願などは日蓮宗と使い分けていますね。愛妾の「お万の方」は熱心な法華信者で、御三家の水戸藩と紀州藩の藩主になった2人を産んでいますよ。東京にある幸龍寺というお寺は、三河の大名だった時から転々と江戸まで連れて移転したといいますね。
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法華経ってどんなお経なんだろう?
C8/9 brushwork – http://www.emuseum.jp/detail/100905, パブリック・ドメイン, リンクによる
さて、本題の法華経というお経の内容にまいりましょう。これだけ日本の中で長い時を超えて信仰されてきたお経の内容ってどんなものなんでしょうか?
法華経は二十八品という28章のお経から成り立っています。前半の14品を「迹門(しゃくもん)」後半の14品を「本門」というんですね。
法華経の前半・迹門ってどんな教え?その1
まず前半の迹門といわれているお経から紹介していきましょう。
〇序品第一
お釈迦様が霊鷲山で瞑想をはじめると、お弟子や信者だけでなく、菩薩や神々が集まってきました。その時に額にある白豪相(仏像にある額の印ですね)から光が放たれて、地獄界・餓飢界・畜生界・修羅界・人界・天上界の「六道輪廻」とよばれる世界を照らし始めますよ。「弥勒菩薩」が「文殊菩薩」に「これから何がはじまるのでしょう?」と聞くと「過去の仏の時代に同じ事がありました。これから法華経が説かれるのでしょう」と答えます。舞台設置ができたということですね。
〇方便品第二
前半部分の大半はこのお経が中心となっています。これには「今まで説かれてきた教えは、すべて本当の教えを説くための方便(たとえ話)であって、これから本当の教えを説く」という宣言でもありますね。今までの教えで充分だと思い上がっている5000人が、この場から去って行ってしまいますよ。この人達を「増上慢」といいます。この法華経によって自力で成仏できるということですね。
〇譬喩品(ひゆほん)第三
〇信解品(しんげほん)第四
〇薬草喩品(やくそうゆほん)第五
〇授記品(じゅきほん)第六
〇化城喩品(けじょうゆほん)第七
ここまでは方便品をたとえにそってわかりやすく解説していく内容です。「比喩品」ではそれまでの教えでは成仏ができないとされていた声聞・縁覚も仏となることができると、トップバッターの舎利弗が保障されますよ。「授記品」では迦葉、須菩提、迦旃延、目連の4人の声聞もしてもらえます。
〇五百弟子受記品(ごひゃくでしじゅきほん)第八
悟りを得た500人の弟子達が仏となることができると保障されますよ。
〇授学無学人記品(じゅがくむがくにんきほん)第九
まだ悟っていない阿難とラーゴラの2人をはじめとした2000人の弟子が保障されますよ。
ちなみに阿難はお釈迦様の従兄弟で、ラーゴラは息子ですね。