法華経の前半ってどんな教え?その2
ここからは「流通分」とよばれる、法華経を広めるための勧める教えに入っていきます。
〇法師品(ほっしほん)第十
法華経を布教していくため守らなくてはならないことが説かれますよ。
「誰にでも慈悲をもって接すること」「どんなに苦しくても笑顔でいること」「執着を捨てること」
〇見宝塔品(けんほうとうほん)第十一
霊鷲山の大地を割って上空へ「宝塔」が出現します。
中には「多宝如来」がいて、お釈迦様を上座に座ることを勧めますよ。
座られると法華経を説かれていることを賞賛されます。
〇提婆達多品(だいばだったほん)第十二
お釈迦様の従兄弟の「提婆達多」はお釈迦様を殺そうとした悪人ですよ。
過去世から現世まで提婆達多のおかげで悟ることができたといわれ「悪人成仏」が説かれます。
後半は、8歳の竜女が成仏することが説かれますよ。
今まで成仏することはできないと言われていた女性もできると説かれます。
〇勧持品(かんじほん)第十三
女性でも成仏できるということを受けて、養母のマカハジャバダイと、奥さんのヤショダラが保障。
ここで有名な「不惜身命」という決意で法華経を広めることを皆が誓います。
〇安楽行品(あんらくぎょうほん)第十四
そして教えを広めるための心構えが説かれるのですね。
法華経で有名な「法華七喩」ってどんな教え?
法華経の中で有名な話に「法華七喩(ほっけしちゆ)」というものがあります。誰にでもお釈迦様の教えがわかりやすいようにという内容なので説明しますね。
〇比喩品「三車火宅(さんしゃかたく)」
火事なのに遊んでいて気がつかない3人の子供たちに、欲しがっていた車をあげると父親が言って飛び出していったら、もっと素晴らしい車が待っていたという話。
〇信解品「長者窮子(ちょうじゃぐうじ)」
金持ちの家の息子が家出して、浮浪者になっていた息子をみつけた父親が、自らも使用人の姿に化けて一緒に家で働きます。どうしようもなかった息子も20年後には執事のような仕事ができるように立派になっていて、亡くなる時に財産を受け取るという話。
〇薬草喩品「三草二木(さんそうにもく)」
大地の草木は色々な姿をしているけれど、雲がわいて降る雨は平等にそそがれるという話。草木が衆生で、雨が法華経の教えということですね。
〇化城喩品「化城宝処(けじょうほうしょ)」
宝を求めて長く険しい道を歩いて行く人たちがいました。しかし途中で皆が疲れ果ててしまいますよ。そこでリーダーが約半分の道のりに神通力でお城を作ったのです。疲れを癒した人たちは「宝はもういいから、ここに住みたい」と言い出したのですね。リーダーは「ここは幻の城だから本当の宝を取りに行こう」と言い、皆で宝を得るためにまた旅に出て宝を得るという話。もちろんリーダーは仏で、旅人達は衆生ですね。
〇五百弟子受記品「衣裏繋珠(えりけいじゅ)」
貧乏な男が親友の金持ちの家で酔いつぶれてしまいます。金持ちの親友に急用ができて出かけることになり起こしますが起きません。貧乏な親友を心配した金持ちは服の襟の裏に宝珠を縫い付けます。そんなことに気がつかない男は相変わらずフリーター生活を続けるのでした。久々に会った金持ちは「困らないように宝珠を渡したのに」と言い男はビックリします。男は声聞で親友は仏、今までの教えで満足していた声聞が、仏と再び会うことで本当の悟りを得ることができたという話。
〇安楽行品「髻中明珠(けいちゅうみょうしゅ)」
武力ではなく仏教で世界を治めている転輪聖王は、兵士たちの能力や手柄には惜しみなく褒美を与えてました。しかし結った髪の中には素晴らしい宝珠を隠しています。安易に渡すと混乱したり疑心暗鬼になるからだとのことですね。この宝珠が法華経で、説くのに慎重にしていたければ今こそ渡しても大丈夫だという話。
〇如来寿量品「良医病子(ろういびょうし)」
100人の子供を持つ名医がいました。ある日往診に行っている間に子供たちが毒薬を飲んでしまいます。あわてて解毒薬を作りましたが、半分の子供たちは毒のせいで正気ではなかったので「それもきっと毒だ」と飲みません。困った名医はまた往診に行くと言って出かけます。そして途中で死んだと知らせを送るのですよ。混乱していた子供たちは正気に戻って薬を飲んだおかげで健康を取り戻したという話。子供たちは苦しんでいる衆生で名医は父親。帰ってきた時に救われる衆生だけでなく、教えを信じられない衆生には方便で「涅槃」といい救うということですね。
法華経の後半部分はどんな内容なの?
では後半にいきましょう。
〇従地湧出品(じゅうじゆじゅつほん)第十五
たくさんの弟子達や菩薩が法華経を広めることに立候補しますが、お釈迦様はうんと言いません。
その時に地面の中からたくさんの菩薩が出現します。久遠の昔から教えてきた弟子だというのですね。
〇如来寿量品(にょらいじゅうりょうほん)第十六
お釈迦様は「実は私が仏になってから五百塵点久遠劫という長い時が過ぎている」と言います。
「人々を教化して、救うために方便の涅槃を見せるが、実はいつも皆の側にいて法華経を説いている」
そこでたとえ話として法華七喩の最後の話となるのですね。
〇分別功徳品(ふんべつくどくほん)第十七
仏の寿命(永遠)を聞いた人たちは功徳をもらい、法華経を説く人には大きな功徳がもらえるという話。
〇随喜功徳品(ずいきくどくほん)第十八
仏が涅槃した後に法華経を聞いた人、またそれを聞いた人が50人いても、功徳がもらえると説かれます。
〇法師功徳品(ほっしくどくほん)第十九
法華経を受持、読誦、解説、書写する人は、六根清浄の功徳が得られると説かれますよ。
六根というのは「眼・耳・鼻・舌・身・意」のことですね。
〇常不軽菩薩品(じょうふきょうぼさつほん)第二十
むかし常不軽菩薩という人が「私はあなたを尊敬します。けっして軽んじません」と拝んでいました。
最初は石などを投げられたりしましたが、その功徳で仏になったという話を説かれています。
〇如来神力品(にょらいじんりきほん)第二十一
召喚されていた地涌の菩薩たちに、お釈迦様が末法の時に法華経を広めることを託しました。
末法とは、お釈迦様が亡くなって教えが正しく伝わらなくなった時代のことですよ。
〇嘱累品(ぞくるいほん)第二十二
地涌の菩薩だけでなく、すべての菩薩たちにも託されました。
信じられない衆生への対処もいわれます。
ここでお釈迦様は、宝塔から霊鷲山に戻りました。
〇薬王菩薩本事品(やくおうぼさつほんじほん)第二十三
薬王菩薩が過去世で、仏と法華経を供養するために焼身したり、ひじを焼いたりして供養したという話。
ちょっと過激ですね。
〇妙音菩薩品(みょうおんぼさつほん)第二十四
妙音菩薩が六道輪廻している衆生を救うために34の姿で出現するという話。
〇観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんほん)第二十五(観音経)
浄土真宗以外のほとんどの宗派で唱えられる法華経のお経です。
どんな苦難・逆境におちいっても、観音様が姿を変えて現れて助けてくれるというものですよ。
〇陀羅尼品(だらにほん)第二十六
薬王菩薩、勇施菩薩、毘沙門天、持国天、鬼子母神十羅刹女が末法で法華経を広める人たちを護る誓い。
〇妙荘厳王本事品(みょうしょうごんのうほんじほん)第二十七
雲雷音宿王華智仏の時代に2人の王子が仏教を聞いて仏教に帰依します。
他の教えを信じていたお父さんである王を善知識によって帰依させるという話。
〇普賢菩薩勧発品(ふげんぼさつかんぼつほん)第二十八
諸仏に守られていることを信じる・種々の徳を積む・必ず悟りに至ると信じる・一切衆生を救うと誓う
法華経を広める人は、この4つを備えることが大事だと説かれています。
法華経はすべての人たちを救うお経
法華経はそれ以前に説かれた教えでは成仏できないといわれていた女性や声聞・縁覚が、成仏できると書かれているのが特徴ですね。そして苦しんでいる時には姿を変えて助けてくれて、いつも側にいて護ってくれるということから信仰されてきました。法華経というと厳島神社に奉納されている「平家納経」という第一級史料でも有名ですね。