家康以前の江戸城
江戸城といえば徳川将軍の城というイメージが強いですが、家康が関東に入ったのは1590年の小田原攻め以降のこと。それ以前は関東の一城郭に過ぎませんでした。江戸城をはじめて建てたのは室町時代末期、戦国時代初期の名将太田道灌です。江戸城の立地条件や太田道灌時代の江戸城の様子についてまとめます。
江戸の始まりと立地条件
平安時代から鎌倉時代のはじめにかけて、関東地方は武士団による開拓が進みます。平将門の乱で知られるように、関東では桓武平氏が力を持ちました。
11世紀中ごろ、平氏の流れをくむ秩父氏の一人、重継という人物が江戸地方に移り開拓を始めます。重継の一族は江戸氏を名乗りました。江戸氏が支配したのは利根川や荒川が合流する下流部で、江戸湾に注ぐ川が幾筋も流れ込む地域です。江戸という地名が、入江の「江」と戸口の「戸」ですから、河川の下流にあり入江の入り口の低湿地という江戸の特徴を言い表しています。
江戸やその周辺の低湿地を大規模開発するには、大規模な工事が必要でした。本格的な江戸周辺の開拓は徳川家康の関東入部を待たねばなりません。
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江戸城と太田道灌
江戸に初めて本格的な城を築いたのは太田道灌です。太田道灌は関東で力を持っていた扇谷上杉氏の重臣でした。扇谷上杉氏は武蔵国を中心に勢力を持ち、上野国に本拠がある山内上杉氏とならぶ関東の名門。扇谷上杉氏と山内上杉氏は関東管領の座をめぐって互いに争っていました。
太田道灌は1456年に江戸城建設に着手。翌年には江戸城を完成させたといいます。太田道灌が江戸に目を付けた理由は水運ではないでしょうか。当時、江戸湾には荒川と利根川が流れ込んでいました。この二つの河川をさかのぼると内陸部まで船で物資を輸送できます。太田道灌は江戸を物流拠点にふさわしいと考えたのでしょう。
その後、扇谷上杉氏は河越城と江戸城を武蔵国支配の重要拠点として活用します。江戸城を築城した太田道灌は主君よりも力を持ってしまったため、主君の扇谷上杉定正によって暗殺されてしまいました。
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徳川家康による江戸築城
豊臣秀吉による小田原征伐の結果、関東を支配していた北条氏が滅びます。北条氏の領土には東海地方にいた徳川家康が移されました。関ヶ原の戦いに勝利し、江戸の幕府を開いた徳川家康は、全国の諸大名に号令をかけ、江戸城を天下人の居城にふさわしい壮大なものへと作り変えます。このとき、江戸の城下町の基礎もつくられました。
家康の関東入部
1590年、小田原征伐の結果、関東を支配してきた北条氏が滅亡します。豊臣秀吉は論功行賞として、徳川家康に関東への国替えを命じました。この結果、家康は北条氏の旧領土である関東250万石を得る代わりに、東海・甲信越にあったそれまでの領土を失います。
秀吉としては、家康を本拠地のある近畿地方からなるべく遠ざけたかったのでしょう。加えて、征服したばかりの新領土の統治はとても大変なので、家康を領地経営で手一杯にしてしまおうという考えがあったかもしれませんね。
家康には、天下人秀吉の命令に逆らうのは得策ではないという判断があったでしょう。関東に入った家康は江戸を本拠地としました。家康が江戸城に入っころ、太田道灌の江戸城はかなり老朽化していたといいます。家康は、江戸城を修築し家臣たちを周辺地域に住まわせました。
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天下普請による巨城建設
1600年、関ヶ原の戦いに勝利した家康は1603年に征夷大将軍に任じられ、江戸に幕府を開きます。家康は諸大名に命じて江戸城の大拡張工事を行わせました。幕府が大名たちを動員して行わせる大規模な土木工事を天下普請といいます。
本格的な工事は1606年から実施されました。諸大名は工事の区画を割りふられます。外郭の石壁は細川忠興、前田利常、池田輝政、加藤清正、福島正則、浅野幸長ら錚々たる面々が担当。天守台は黒田長政に割り振られました。
翌年、藤堂高虎の縄張り(城郭の設計)にもとづき、関東や東北の諸大名に石垣を組ませます。伊達政宗や上杉景勝は江戸城の堀を築きました。天下普請は家康の死後も継続されます。
1622年の本丸拡張工事、1624年の西の丸修築、1638年の天守閣完成など工事が相次ぎましたが、1660年の神田川の拡幅工事をもって江戸城の天下普請は終わりました。全国各地の大名に築城を手伝わせた結果、江戸城は全国最大級の巨大な城となります。
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