ヨーロッパの歴史

政治と経済の微妙な関係~基本からわかる「資本主義」と「民主主義」の違い

現代社会に生きる私たちがぜひ理解しておかなければいけないのが、「資本主義」と「民主主義」のシステムです。そもそもこの二つ、「○○主義」という言葉がついていますが、一体どういう違いがあるものなのでしょうか。根本のところからていねいに解説していきましょう。

「資本主義」は世界を動かす経済のシステム

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もともと「主義」という言葉は「主義・主張」というように何らかの「考え方・思想」を指す言葉です。でも、「資本主義」というのは何かの思想というわけではなく、実は「資本制」という言葉のほうが正確なんですね。つまり、「資本主義」というのは現代のような経済の制度・システムを表す言葉なんです。

日本をはじめ、世界の多くの国は「資本主義」のルールによって動いています。だから、「資本主義」を理解するということは現代社会を理解することと同じ、といっても言い過ぎではありません。

「資本主義」は産業革命によって育った


「資本主義」は18世紀中頃にイギリスで始まった「産業革命」によって確立されました。「産業革命」ってなんだったか覚えていますか?昔むかし、服でも道具でもなんでもそうなんですが、あらゆるものは全て家庭内での手作業で作ったり、職人が自分の工房で作ったりしていました。ところが経済が発展してくると、工場を作って多くの人数で作ったほうが効率がいい、ということになってきます。1人であれもこれも作るよりも、専用の工場で作業したほうが早くたくさん作れますよね。

そこへやってきたのが「産業革命」でした。例えば、これまで糸をつむいだり、布を織ったりするのも手作業だったところを、機械によって断然早く、たくさん作れるようになったのです。まさに「革命」でした。

さて、そうなると何が起こるんでしょうか?工場や機械などという「生産手段」を持った人と、ただ工場で働くだけの人に分かれることになるんです。工場や機械を持ってる人はこれまでよりもたくさんの商品を作って、たくさん儲けることができますよね。でも、工場で働いてる人は、時給いくらかで給料をもらうだけで、今でいうバイトみたいなもんです。バイトの給料じゃ、いくらがんばっても工場は買えません。

「資本主義」の条件は私有財産と市場原理

工場などを持っている人を「資本家」、工場などで働く人を「労働者」と言います。産業革命によって確立された「資本主義」というのは、「工場などを私有している資本家が、労働者から労働力を買い取って、最大限儲けようとする」システムのことなんですね。

さて、資本主義が成り立つためには条件があります。まずは生産手段を私有できること。せっかく工場を作っても、国に持っていかれては意味がありません。そして、自由な商品の取引ができること。国内はもちろん、海外へも自由に輸出や輸入ができなければ、ビジネスチャンスは失われてしまいますよね。

みんなが好き勝手に商品を作ったり売ったりしていたら、社会はうまく成り立たないんじゃないかと思いませんか?でも、みんながほしくないものは買い手がいないので値段が下がっていき、誰も作らなくなります。みんながほしいものは値段が上がるので、どの会社も競って作るようになりますよね。みんなが自分の欲望に従って自由に売り買いすれば、市場(マーケット)が自然に価格を調整して、うまいこといくようになるということです。これを「市場原理」と言います。「私有財産」と「市場原理」によって、資本主義というのは成り立つわけです。

「民主主義」は古代ギリシアで始まった

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次に「民主主義」について見ていきましょう。と言っても、民主主義についてはみなさん何となくのイメージはありますよね。王様とか独裁者のような人が勝手に物事を決めるのではなく、国会とかで話し合って法律を作ったり、予算を決めたりするのが民主主義の国のやり方だ、ということはご存じかと思います。

民主主義は紀元前800年頃の古代ギリシアで始まりました。アテネでは何千人もの市民が集まって、自由に議論して物事を決めました。今と違って当時は都市もそんなに大きくないですから、市民(成人男子限定ですが)がみんな同じ場所に集まって政治に参加したんですね。これを「直接民主制」と言います。ただ直接民主制は結局あまりうまく機能したとは言えず、国王や皇帝が国を支配する時代が長らく続きました。

近代的な「民主主義」は市民革命によって生まれた

ところが17~18世紀になると、ルソーやロックといった思想家によって「民主主義」の考えが広められます。そして、1688年のイギリスでの「名誉革命」、1776年の「アメリカ独立革命」、1788~89年の「フランス革命」といった「市民革命」が起きて、強大な権力を持っていた国王による政治から、議会による政治に移っていったのです。こうして、市民が政治に参加する民主主義の国が増えていきました(ただし、ほとんどの国では女性が参政権を得るようになったのはだいぶ後の20世紀になってからだったことは注意が必要です)。

近代的な民主主義の特徴は、人民(普通の人々のこと。英語でいうと「ピープル」)が直接政治に参加するのではなく、選挙によって代表者を選んで、人民の代わりに議会を運営するということです。これを「間接民主制」と言います。人民の声を反映させる直接民主制ではないのは、人の数が多すぎて物理的に全員参加が難しいこと、社会が複雑になっているので専門知識がある議員が必要であることが理由です。ただ、現代の民主主義の国の多くには、国の運命を左右するような大事なことは、国民投票によって決めるという制度があって、直接民主制の要素も取り入れられています。

「国民が『あるじ』である」というのが民主主義


民主主義の国というのは、その言葉通りに「国民が『あるじ』である」ことが一番重要なポイントです。これを「主権在民」と言います。国会議員とか、首相とか、裁判官とか、国を動かしている人々はたくさんいますが、こういった人々は国民の命令によって働いていることになっているんですね。これは一見奇妙な話に思えるかもしれませんが、なぜ国会議員や首相がえらい地位についているかというと、国民から選挙で選ばれたからです。つまり、その権力の源である国民の支持を失えば、えらい地位についていることの正当性が失われてしまうのですね。

また、近代的な民主主義は「基本的人権」、「法の下の平等」を保障するというのが原則となっています。ある人には権利を認めるけど、別の人には権利を認めないというのでは、あちこちで不平不満が出ますよね。そこで社会に参加するメンバーはみんな同じ条件で、不公平がないようにするというのがルールになっているわけです。

民主主義は「議論」が原則

ところで、小学校の学級会の頃から、「多数決」で物事を決めるというルールがありましたよね。それで、「民主主義=多数決」と思っている人が多いかもしれません。でも、多数決は必ずしも民主主義の原則ではないのです。例えば、選挙では「比例代表制」といって票を得た割合が多い順に当選が決まることもあります。また、憲法改正のように3分の2の賛成が必要な場合もあるんですね。

民主主義の原則は多数決というよりも、「議会でちゃんと議論をつくして決める」という部分にあります。もし多数決で何でも決められるなら、議会で多数派になった瞬間にもう何も議論する必要がなくなっちゃいますよね。でも、民主主義というのはちゃんと議論をして問題点を洗い出して、国民に見てもらうというプロセスこそが大事なんです。

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