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夏目漱石『坊っちゃん』!魅力的な登場人物と物語を徹底解説!【あらすじあり】

『吾輩は猫である』、『こころ』、『夢十夜』……。夏目漱石が書いた小説はたくさんあります。教科書に載っているような作品も多いですよね。今回はそのなかから、私の好きな小説のひとつである『坊っちゃん』をピックアップ。物語の魅力を伝えられたらうれしいです。

『坊っちゃん』という小説について(作者・あらすじ)

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物語の魅力をお伝えしていく前に、まずは作者・夏目漱石についてとあらすじを確認していきましょう。『坊っちゃん』は1906年に発表された中編小説。「教師間の人間関係」という現在でも身近な題材を用いていることもあり、ほかの漱石作品とくらべて読みやすい傾向があると思います。軽快な語り口によってすらすら読めますので、読んだことがない方はぜひ読んでみてくださいね。

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。

『坊っちゃん』冒頭より

作者・夏目漱石について

『坊っちゃん』の作者、夏目漱石(1867年~1916年)。まだ江戸時代である慶応年間に、江戸の豊かな家庭に五男として生まれました。父親が名主だったのです。漱石は1886年に創設されたばかりだった帝国大学(現在の東京大学)に入学しています。帝国大学に入学するまでには、学校を中退したこともありました。しかし、1883年には英学塾の成立学舎に入学して、その一年後、17歳のときに大学予備門予科への入学を果たします。大学予備門時代から大学時代、漱石はとても優れた成績を残しました。学生時代、また卒業後において漱石は教師の仕事をしています。『坊っちゃん』は教師が主人公のお話。漱石自身の経験を基にして書かれた物語なのです。

あらすじ1 坊っちゃんの生い立ち~四国の中学校へ

主人公の「坊っちゃん」は、子供のころから無鉄砲(よく先のことを考えずに物事を行ってしまうこと)で、損をしてきました。ある日兄とケンカし、父親に勘当されそうになった坊っちゃん。そんなときにかばってくれるなど、坊っちゃんをかわいがってくれていたのが(きよ)という女中さんでした。

父親が亡くなり、兄と坊っちゃんはそれぞれ学校を卒業。兄は九州へ仕事に行くことになりました。坊っちゃんは600円を兄から貰い、そのお金で物理学校へ入ることにします。三年で卒業をした後、校長から四国にある中学校の数学教師の就職口を紹介された坊っちゃん。二つ返事で了承します。

あらすじ2 中学校への赴任~生徒との確執

中学校で坊っちゃんは、校長の、教頭赤シャツ、英語教師の古賀(うらなり)、同じ数学担当の堀田(山嵐)、美術教師の吉川(野だいこ)、などという先生仲間に出会います。宿に泊まっていた坊っちゃんは山嵐から下宿を紹介され、そこに住むことになりました。

しかし問題が生じます。生徒との関係が上手くいかないのです。天ぷらそばを食べてからかわれ、団子を食べてからかわれる。生徒からの坊っちゃんに対するからかいはエスカレートし、宿直で使う布団のなかにイナゴを大量に入れられてしまいます。

あらすじ3 山嵐とのけんか~イナゴ事件会議

赤シャツ、野だいこから釣りに誘われた坊っちゃん。そこで、山嵐が裏で生徒たちの手を引いている、というようなことを赤シャツから遠回しに言われます。坊っちゃんはそれを信じ、また下宿先の主人が坊っちゃんのことを悪く言っているらしく、山嵐が主人のことを信じたため二人は険悪なムードに。

そんな折にイナゴ事件に関する職員会議が開かれます。赤シャツの発言によって、生徒には寛大な処置を、という方向に議論が進みますが、山嵐はこれに反対。坊っちゃんは生徒から謝罪をしてもらうことができました。下宿を退去した坊っちゃんは、うらなりに新しい下宿先を紹介してもらいます。

あらすじ4 赤シャツへの疑惑~山嵐、辞職へ

下宿先のおばあさんから坊っちゃんは、うらなりが赤シャツに婚約者(マドンナ)をうばわれたという話を聞きます。さらに、赤シャツと山嵐の対立関係についても聞きました。赤シャツの行いや言動を見ているうちに、坊っちゃんは山嵐より彼の方が信用できないのでは、という思いを強めます。そんな中で、赤シャツがうらなりを遠くに転勤させようとしていることが発覚。坊っちゃんはうらなりが転勤を嫌がっていることを知っていたので、さらに赤シャツに反発します。

うらなりの送別会の日の朝、山嵐と坊っちゃんは誤解が解けて仲直り。坊っちゃんと山嵐は赤シャツが芸者と遊んでいることを知り、その現場を取り押さえてこらしめようと企みました。その話をしているとき、赤シャツの弟が祝勝会の見物に山嵐を誘いに来ます。坊っちゃんも一緒に行くことに。そこで生徒たちによるけんか騒ぎが起き二人は仲裁に入りますが、けんかに巻き込まれてしまいます。山嵐は責任をとわれ、辞職に追い込まれることになりました。

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