マドンナ、そして清の存在
登場人物を紹介する際に、マドンナの項はあえて作りませんでした。それは、マドンナという存在が『坊っちゃん』に直接出てくるのは大変少なく、謎につつまれた人物であるからです。坊っちゃん視点から見る限り、当初はうらなりと婚約していたものの、赤シャツに乗り換えてしまった女性として描かれています。『坊っちゃん』のヒロインといえばマドンナ、というイメージもあるかもしれませんが、実は坊っちゃんと直接関わることのない女性なのです。
個人的にですが、『坊っちゃん』という物語のヒロインをあげるとすれば、それは清だろうと思います。まずタイトルからして清が主人公を呼ぶときの呼び名です。明治維新によって没落してしまった、由緒あるお家の生まれだった清。坊っちゃんが清の手紙を待つシーンでは、恋人からの手紙を待っていると勘違いまでされています。「古き良き女性」、清。近代化する日本のなかで貴重な存在に感じられるからこそ、坊っちゃんは清をすばらしい女性だと思ったのかもしれません。
次は何を読む?
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漱石は『坊っちゃん』意外にもたくさんの小説を書いています。何を読むか迷ったら、あらすじなどを調べて興味を持った小説から読んでみるのもいいかもしれません。または漱石ではなく、「勧善懲悪」ものという観点から『南総里見八犬伝』を読んでみるのも面白いかもしれませんね。さまざまな観点から読む小説を決めていけば、思いもよらなかった素晴らしい作品と出会うことができるはずです。
本文中の引用は、青空文庫(下記リンク)よりおこないました。
夏目漱石 坊っちゃん