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夏目漱石『坊っちゃん』!魅力的な登場人物と物語を徹底解説!【あらすじあり】

優しい男に見せかけた、ずるいヤツ!? 赤シャツ

常に赤のフランネルシャツを着ていることから「赤シャツ」と名付けられた教頭先生。坊っちゃんと同じく、本名が明かされていないキャラの一人です。優しい喋り方で、一見とても丁寧ないい人に見えるのですが、実は姑息な手段を使うイヤなヤツ、として描写されていますね。山嵐に罪をなすりつける、うらなりからマドンナをうばう……この物語におけるいわゆる「悪役」でしょう。

とは言え、『坊っちゃん』は坊っちゃんの視点から見た物語です。もしかしたら、赤シャツにも赤シャツなりの理由があったのかもわかりません。帝大出で、文学士の赤シャツ。中学の生徒でもある弟と二人で暮らしているようです。弟が山嵐たちを誘い出す場面もありましたね。赤シャツ視点のお話も読んでみたいな、と思ってしまいます。

坊っちゃんを両親よりも愛する! 清

物語の序盤で坊っちゃんは清のいる東京から四国へ行ってしまい、物語はその四国での出来事が主なものなので、清が直接登場するのは最初と最後だけです。そうであるのに、清は『坊っちゃん』においてかなりの存在感を放っています。序盤の清とのエピソードは彼女の坊っちゃんに対する愛情をとても感じられるものですし、坊っちゃん自身も四国にいるときに清のことをたびたび思い出していて、坊っちゃんから清への愛情も感じられますよね。

清は坊っちゃんの生家の女中さん。しかし、ある説があります。それは、清が坊っちゃんの産みの親なのではないか、というもの。たしかに清の坊っちゃんへの愛情はあまりにも大きいものなので、もしそうだとしたらその理由に納得がいきます。ちなみに漱石の妻である夏目鏡子の本名はキヨと言いました。名前はここから取ったのでしょうか。

『坊っちゃん』をより深く味わう

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ここまであらすじと登場人物を紹介してきました。ここからは『坊っちゃん』という物語をより深く知り、味わうための情報をお伝えしていきます。

坊っちゃんが赴任した「四国の学校」はどこにあるのか

坊っちゃんは東京から四国の中学校へ就職しました。四国という広い範囲になっていますが、坊っちゃんが赴任し、赤シャツや山嵐たちが働くのは愛媛県松山にある学校だと言われています。作者漱石自身も教師として松山中学校に勤めていたことがありました。このときの経験をもとに、『坊っちゃん』は書かれているのです。

愛媛県松山といえば、有名な温泉地があります。そう、道後温泉です。物語のなかにも温泉はたびたび登場しますよね。印象的なのは坊っちゃんが人のいないとき湯船で泳いだら、「湯の中で泳ぐべからず」の札が貼り付けられたシーン。道後温泉本館にはこの場面にちなんだ、「坊っちゃん泳ぐべからず」の札が飾られています。『坊っちゃん』内で松山という地は東京とどうしても比較されがちでしたが、よい温泉が湧き風情がある松山の地を漱石が愛していたこともまた確かなのではないでしょうか。

「勧善懲悪」の物語?

新潮文庫版『坊っちゃん』のあらすじには、「勧善懲悪の主題を復活させた」と書かれています。「勧善懲悪」とは、「善を勧め、悪を懲らす」という意味。聖徳太子の「十七条憲法」にも「懲悪勧善」の表現がありますので、相当昔からある概念です。江戸時代の代表的な小説である『南総里見八犬伝』は勧善懲悪もので、江戸後期に特に多く勧善懲悪ものが生み出されました。『坊っちゃん』では坊っちゃんや山嵐が「善」側、赤シャツや野だいこが「悪」側と言えるでしょう。たしかに最後赤シャツたちを懲らしめるシーンはスカッとしますよね。

しかし坊っちゃんは赤シャツたちを懲らしめることには成功しましたが、中学校を辞してしまっています。山嵐も同様です。坊っちゃんは東京へ帰って清と幸せに暮らしはしたのでしょうが、ある意味で割を食っているのですね。一般的な勧善懲悪であったら、赤シャツたちが辞めさせられているところでしょう。単純な勧善懲悪とは言えないところにも、『坊っちゃん』の魅力があるように思います。

実写化、アニメ化、パロディ作品

明治時代に発表された『坊っちゃん』ですが、これまでに何度も実写化やアニメ化などがおこなわれました。私は2016年のお正月に放送された二宮和也さん主演テレビドラマ版の『坊っちゃん』を観たことがあります。ストーリーは小説と少しちがった部分もありましたね。個人的にはキャスティングがとても素晴らしいと感じました。特に赤シャツ役の及川光博さんははまり役でしたので、実写版に興味のある方はぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

また、うらなりのその後を書いた小説や、赤シャツが主人公のドラマなど、いわゆる「パロディ」作品もたくさんあります。漱石自身が書いたわけではないですが、『坊っちゃん』のスピンオフとして楽しむことができますね。それだけ、登場人物に魅力があるということでしょう。

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