フランスヨーロッパの歴史

5分でわかる法の精神!著者モンテスキューの思想や名言もわかりやすく紹介!

6-1.法があるから自由があるという考え方

法律がきちんと整備されていて、国民が暮らしやすい国のことをよく【法治国家】と呼びますよね。もちろん日本もそういった国家の一つなのですが、モンテスキューが生きていた時代はまだ近代法というものがよく整備されていなくて、ややもすれば矛盾だらけの法律ばかりだったといっても過言ではなかったでしょう。

彼が「法の精神」の中で提唱していたのは【法】の重要さでした。政治的自由(個の安全や平静)が保障されるためには矛盾がないしっかりとした法が必要だ。ということなのであり、例えば、無実が明らかな人が、矛盾した法によって処罰を受ける【魔女裁判】のようなことがあってはならないからです。

良い法であるなら、その法の範囲内ならば自由なことができる。それが理想であると説いているわけです。また、犯罪者を処罰する刑法や、個人や企業の権益に関わる民法なども、法に則って適切に手続きを踏まねばなりません。決して勧善懲悪論や感情論で法が歪められることはあってはならないと述べています。

6-2.奴隷制度に反対の立場をとる

18世紀のヨーロッパは、依然として奴隷売買が横行し、それを防止するだけの法律すら存在していませんでした。ルソーやスミスなど、多くの社会学者や思想家は奴隷制度を人権侵害の面から批判しており、モンテスキューも実はその一人でした。

「法の精神」の中で彼はこう言っています。

 

「奴隷制度は人間の本性に反しており、君主制、共和制では絶対に持つべきではない。市民の自由は、公共の自由の一部であり、民主国家においては主権の一部となっている。奴隷制度は、多民族への偏見にも由来している。」

 

人権という単語には、「自由、平等」というものが含まれています。自由とは身体的拘束からの自由という意味ではなく、政治体制や身分制などからの自由という意味であり、奴隷解放こそが近代法の思想そのものだ。ということなのでしょうね。

そのモンテスキューの奴隷制への否定的な考え方は、彼の死後100年を過ぎてようやく実現します。アメリカ大統領リンカーンによる奴隷解放宣言がそれでした。

7.モンテスキューの名言集

image by PIXTA / 62371678

最後にモンテスキューが語ったとされる名言についてご紹介していきましょう。彼の金言は現代に生かされているのかも知れません。

7-1.人間の持つ自然権と法を説いた言葉

「人間は生まれながらに自由で平等だ。しかし社会がそれを失わせる可能性を持っている。保護するためには法の保護が必要だ。」

 

人間社会というものは、その規模が大きくなるにつれて身分や経済格差が起こるもの。上に立つ者が下の立場の者を虐げ、その権利を奪いかねないということです。

もし人間の権利を保護しようとすれば、「人間が本来持つ自然権」を守るべき法が必要になるということですね。これは日本国憲法が保障した「生存権」や「財産権」「幸福追求権」などが当てはまります。

7-2.政治を為す人間がわきまえるべきこと

「もし偉大な人間になりたいのなら、人の上に立つのではなく、人々と同じ場所に立たなければならない。」

 

これには2つの意味があるのではないでしょうか。1つは、民衆と同じ立場の人間が選挙などによって公平に選ばれ、政治を為す時も民衆の側に立って、万民のために尽くすことが大切だということ。

そしてもう1つは、たとえ自分が国家のトップとなって政治を主導するとしても、偉そうにふんぞり返ったり、利権を手にして私腹を肥やすといったことがあってはならない。民衆と同じ立場を共有し清廉潔白であるべきだ。という意味ですね。

7-3.豊かな国家とは何か?

「豊かな国とは、人口が多いということではない。国民の自由度によって示されるものだ。」

 

いくら人口が多いからといって発展国とは限りません。法の許す範囲内で国民が自由に暮らせるからこそ、そこには自由な取引が生まれ、競争が生まれ、良い政治家も現れるもの。

日本で例えるなら、かつて織田信長が安土城下に【楽市楽座】の制度を敷いたように、自由の気風の中では経済も文化も大きく発展していくということですね。

政治学を学ぶためには、ぜひ【法の精神】を読んでみたい

image by PIXTA / 25074552

現代の政治理念にも通ずるモンテスキューの「法の精神」。難しいものだと思いきや、意外と読みやすく書かれています。人間にとって法とは何なのか?国家とは何なのか?そういった命題がストレートに表現されているので、小難しく考えることはないでしょう。一度は読んでみたい本ですね。

1 2 3 4
Share:
明石則実