フランスヨーロッパの歴史

5分でわかる法の精神!著者モンテスキューの思想や名言もわかりやすく紹介!

4-1.勘違いしがちな【政治的自由】という言葉

「法の精神」の中でモンテスキューがしきりに提唱しているのは政治的自由という事柄でした。「個の安全」や「安全の中にある心の平静」というふうに定義づけられています。

政治的自由と聞けば、「自らの思想信条の自由」とか「どんな政治理念を持っていても許される」というふうに思いがちですよね。

「政府がしっかりしないから国民が困ってる。」や「国会議員は批判ばかりで揚げ足取るしか能がないのか!」といった主張は、別に政治的自由とは呼べないのです。

4-2.政治的自由を保障するための【三権分立】

例えば、議会と政府が一つに結託して悪法を決めてしまえば、その悪法は政府によって行政執行されてしまう。また、司法権力が政府と結託すれば、政府の不祥事は明るみに出ることなく闇に葬りさられてしまう。また国民に対して不利な裁判結果が出るかも知れない。そのような状況こそが国民にとって自由と生命とを危険に晒してしまうことになりかねないのです。

モンテスキューは、国民の政治的自由を保障するために【司法】【立法】【行政】は独立させねばならないと唱えたのでした。これがいわゆる三権分立なのです。

日本でいえば、内閣が検察庁長官の定年延長を決めるという政治問題がありましたね。そもそも警察や検察は、司法の元に存在しなければならないという意見もあります。

4-3.モンテスキューが考えた三権分立の仕組み

モンテスキューは、「法の精神」の中で、こう述べています。

 

「すべて権力を持つものは、それを濫用しがちであり、それをなさぬようにするためには、権力が権力を牽制し、抑制することこそが肝要なことだ。」

 

現代の三権分立の考えとほぼ同じなのですね。しかし現代と少し違うところは、彼は立法に関しては【貴族的共和政】を念頭に置いて考察していたのです。一般選出の人民代表と、貴族出身の代表双方に同じ権限を与え、二院議会制をもって立法を司どる。そこのところは貴族出身のモンテスキューならではの考えだったのかも知れません。

4-4.現代に受け継がれた三権分立

実はモンテスキューよりも先に、イギリスの政治思想家ロックが行政と立法による二権力分離を提唱していたのですが、モンテスキューはそれをさらに昇華させ、司法を加えた三権力を分立させるという一歩進んだ考え方を唱えたのでした。

司法権力を分立させることによって、悪い政治をしないように行政(政府)を監視し、さらに悪法を制定しないように立法(議会)すら監視させようとしたのです。

こういった三権分立の考え方は、「権力の暴走」を防止するという効果があり、日本をはじめ多くの先進国で取り入れられているのですね。

5.「自然法」に基づいたモンテスキューの思想

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日本人の考える「政治思想」と、欧米人の考える「政治思想」は微妙に違うとされています。モンテスキューの政治や法に対する考え方は「自然法(または自然権)」に依るところが大きいのです。自然法とは何か?わかりやすく解説していきましょう。

5-1.神から与えたもうた自然権

まず人間の権利とは何か?ということを説明しますね。根本的な「生きる権利」の中には、「知る権利」「幸福になる権利」「食べる権利」「自由になる権利」など、さまざまなものが存在しています。

モンテスキューを生んだ欧米のキリスト教国の考え方では、人間が生きる権利のことを【自然権】と呼んでいるのです。なぜなら海・山・森・動物そして人間など万物は神が作り出した自然であり、人間が生きる権利もまた神から与えたもうたということになります。

人間が人間に対して権利を奪うということは、すなわち権利を与えた神への冒涜だということになりますね。ですから、この自然権を念頭に置き、自然権をベースにした法の解釈が【自然法】というわけです。

5-2.世界の憲法に大きな影響を与えたモンテスキューの思想

「神から与えられた人間の権利を、他の人間が奪うべきではない。」という考え方は、現在では当たり前のようになっていますが、モンテスキューが生きていた当時のフランスでは通用しません。なぜなら人民の権利よりも、国王や国家の権利のほうが優先されていたからです。

そこでモンテスキューは政治や法を考える際に、必ず「人間が持つ自然権」を命題にしていました。自然権に基づく自然法こそが国家を形づくる法の根幹だと指摘したのです。だからこそ人民の権利を縛る絶対王政制を否定し、揶揄し、批判したのですね。

モンテスキューの考え方は、彼の死後およそ40年経ってから形となりました。フランス革命中の1791年、フランス初の憲法が出来上がったのです。そこには普遍的な人間の権利を承認した【人権宣言】が書き加えられたのでした。

6.人による支配から、法による支配へ

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モンテスキューが提唱したのは、三権分立や立憲論だけではありませんでした。法による社会システムの維持の必要性まで説いたのです。

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