特殊な地位を占めた「イエズス会」宗教オンチの日本人にもわかるよう解説
日本における活躍と斜陽
日本の中世史において重要な役割を果たしたキリスト教徒といえば?そう、フランシスコ・ザビエルです。日本にはじめてキリスト教を伝えたザビエル。彼が日本にいた期間はわずか2年3ヶ月でしたが、あっというまにキリスト教は全国に伝播しました。イエズス会は日本人に「耶蘇会(やそかい)」と呼ばれました。
以後、種子島鉄砲など西洋文明の導入、南蛮貿易を通じて日本は発展を遂げます。そしてキリスト教の持つ福音は、戦に疲れた日本人に沁みとおっていったのです。「神に祝福された国」とザビエルが評した日本。一時期は40万人の信者を誇りました。
しかしそんな時代は長く続きません。奴隷貿易の事実や、寺社仏閣の破壊、キリスト教をプロパガンダ利用し西洋人による日本支配をする等の構想が判明。キリスト教は政治的危険思想団体として、放逐されることになってしまいました。中世日本のキリシタンが合法として隆盛をきわめたのは、わずか約40年間。以後、弾圧と沈黙の300年を送ることになるのです。
イエズス会って「アブナイ」の?弾圧、イエズス会士ローマ法王誕生……
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さて歴史や西洋事情に堪能な方なら必ず聞いたことがあるでしょう、「イエズス会は危険だ」「ジェズイット(イエズス会士)は偽善者だ」という考え。これは一体どこから来たものなのでしょう?どんなものもホンネとタテマエ、陰と陽を見なければ正体はつかめません。デリケートでわかりづらいキリスト教界事情、可能な限り中立的に、わかりやすく紹介していきましょう。
高等教育機関としての発展と「陰謀論」?
イエズス会が歴史において果たした大きな役割、それは高等教育機関として社会に貢献したことです。研究機関として、また高等教育を与える学校としてイエズス会が発展したのは、創立者たち7人がインテリの超エリート神学者だった、後の代の人びともそれにならったという背景があります。
「イエズス会に預けてもらえれば、その子の一生の信仰心は保証する」と豪語したイエズス会士もいたほど。多くの子どもたちがイエズス会の修道院で立派な教育をさずかり、社会に貢献していきました。
このインテリ・頭脳派すぎる修道会は陰謀論を呼びます。あらゆる権力は情報を握る場所に集まるもの。書物や情報、人材の集積所であるイエズス会は、キリスト教や世界情勢に関する重大な秘密を常に握っており、世界を裏であやつっている!という説は、根強い陰謀論として信じられていました。
キリスト教世界でイエズス会はつい最近まで「禁止」だった!
イエズス会がキリスト教世界において「危険思想団体扱い」されていたのは事実です。背景には18世紀に台頭したナショナリズムの動きがあります。産業革命を経て資本主義の隆盛を迎えたヨーロッパ諸国は、キリスト教からさらに距離を置いた形で歴史を歩みだしました。
国家権力に介入しうる存在として邪魔っけなのが、ローマ法王。各国を自由に行き来し、教育者として人びとを手なずけかねないイエズス会士は「ローマ法王の手先」として危険思想団体扱いされたのです。列強諸国は過剰に自国の権力や政治に影響されないように、イエズス会士の弾圧を行ったのでした。
ローマ法王もヨーロッパ諸国との外交バランスのため、1773年、イエズス会はなんとローマ法王自身から禁止されてしまいます。カトリックのトップから存在自体にNOを突きつけられながらも1814年に禁止が解除されるまで41年間、ひっそりと生きのびつづけたのです。
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新ローマ法王フランシスコ誕生、教会の抱える欺瞞と理想のなかで
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2013年、世界に衝撃が走ります。ベネディクト16世の唐突な前代未聞の生前退位です。コンクラーヴェで選ばれたのが、イエズス会士でありアルゼンチン人の法王フランシスコ。キリスト教界でも異端とされてきたイエズス会からカトリックのトップが選ばれたことは、一見ほほえましい出来事のようにも見えますが、カトリックは現在史上最悪とも言える危機を抱えています。最後にそれについてちょっと触れておきましょう。
危機の原因は、カトリック神父が信徒に対して行うことが大規模かつ慢性的に蔓延している性的暴行事件です。アメリカに限っても1950年から2002年までの52年間で神父4450人が加害者となり、被害者の一般信徒は未確認を除外して11000人を超える性犯罪事件が確認されています。これら性的暴行の組織的隠蔽、加害司祭に対する教会ぐるみの擁護などがまんえんした結果、信徒の身の安全があやぶまれる状況が続いているのです。
フランシスコ法王はこれに対し、歴代ローマ法王が行うことがなかった積極的な謝罪と政治的行動を行っています。異常な状態にあるカトリック教会組織を立て直すために選ばれた、史上初のイエズス会士ローマ法王であるフランシスコ。はたして聖書にあるように教会を神聖な「神の家」として立ち直らせることはできるのでしょうか。
歴史の大きなうねりの中で活動するイエズス会
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教科書で見た「カッパはげ」ザビエルくらいしかイメージがなかったイエズス会について、今回はちょっと詳しく、ダークな部分にも踏みこんでみました。キリスト教史は知れば知るほど、日本の比にならないホンネとタテマエのコントラストで泥沼ですが……崇高で尊い理念、信念ではじまったイエズス会。知恵と知識の所持者として、超行動派キリスト教徒として、イエズス会が歴史に残した功績は巨大なものです。
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