ヨーロッパの歴史

キリスト教って?教えや歴史、教会の事情まで丸ごと解説

複雑怪奇な西洋史をひもとく上で、絶対!外せないキリスト教と聖書。愛と赦しの宗教のくせして、十字軍や異端審問、奴隷制度のプロパガンダに使ったり……矛盾と謎をはらんだキリスト教、とりあえずこれ読めばわかる!キリスト教世界を外からも中からも見てきた筆者が可能なかぎりわかりやすく、教義から歴史までぜんぶ!まとめあげてみせます。

新約聖書、イエス・キリストの道行きダイジェスト!

image by iStockphoto

キリスト教の聖典「聖書」には旧約と新約とありますが、重んじられるのは「新約聖書」それも「福音書」と呼ばれる、イエス・キリストの言行を弟子たちが書き記したものです。教祖イエス・キリストとは何者で、どんなことをした人なのでしょう?神の愛とゆるしを弱き人のために伝えた神の子の道行き、福音書をダイジェストでご紹介しましょう。

ナザレの大工イエスから、神の子キリストへ

イエス・キリストの活動開始は30歳のとき。わりとおじさんになってからです。それまでは中東エルサレムのナザレという田舎町で、大工として働いていました。母マリアは処女懐胎でイエスをみごもります。誕生にあたっては東から三人の博士がやってきて、幼子を祝福しました。

キリストのいたエルサレムで主に信仰されていたのはユダヤ教。律法学者とパリサイ派という2つの派が幅を利かせていました。が、その形式主義におちいった教義や行いに行き詰まりが見えはじめます。キリストの前にも洗礼者ヨハネなどがあらわれ、改革運動が起こりはじめていました。キリストはそんな中で、天の父なる神の召命を受けて活動をはじめます。イエス・キリストの活動は貧しい人や社会から疎外された娼婦、病人たちとよりそう形で、人びとに教えを伝えながら各地を回るものでした。

やさしいイエス・キリストの福音

image by iStockphoto

イエス・キリストの教えはやさしく、慈しみ深く、愛に満ちたものです。その本質をあらわすものをピックアップしてご紹介しましょう。

・こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。悲しんでいる人たちは、さいわいである、
彼らは慰められるであろう。

・あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい

・(目の見えない障害者のことを示して)本人が罪を犯したのでもなく、また、その両親が犯したのでもない。ただ神のみわざが、彼の上に現れるためである。

・空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。

・こうして、天にいますあなたがたの父の子となるためである。天の父は、悪い者の上にも良い者の上にも、太陽をのぼらせ、正しい者にも正しくない者にも、雨を降らして下さるからである。

裏切り、十字架、そして復活と被昇天へ

民衆にとっては、こんなにやさしい言葉をかけて寄り添ってくれる存在はこれまでにいませんでした。他にもキリストは病人を癒やし、弟子を助けるために水の上を歩くなどの奇跡を起こしたと記されています。しかし律法学者やパリサイ派にとってキリストの存在はおもしろくありません。彼は無実の罪を無理に着せられて、十字架に磔(はりつけ)の刑に処されてしまいます。

イエス・キリストが亡くなってから3日後のことでした。信者の一人、マグダラのマリアがキリストの墓に行くと、墓の中は空っぽです。泣く彼女の後ろに立ったのは、なんと死んだはずのイエス・キリストでした。黄泉にくだり、そして復活したのです。余談ですが、弟子たちの前にあらわれたこの時にキリストは、一番弟子のペトロに天国の鍵を手渡しました。これの継承をしている、ということがローマ教皇の「使徒座」の権威の根拠とされています。その後、イエス・キリストは天に昇り、父なる神の右の座につきました。天の国で今も人びとを見守っています。

この人がキリスト教を作った!?使徒パウロの熱血お手紙指導

image by iStockphoto

キリストは天に昇って、弟子たちのもとから去ってしまいます。弟子たちはキリストの教えを守り、伝えるために動き出しました。ここで登場するのが、パウロという男です。生きたキリストに会ったことのない男が各地の信者に書き送った「書簡」が、その後のキリスト教会の基礎を作り上げてしまいました。初期教会を励まし続けた熱血使徒パウロのお手紙指導をのぞいてみましょう。

最初は迫害者、使徒としてめざめ「異邦人への伝道」へ

パウロは「十二使徒」ではありません。そもそも生前のイエス・キリストに会ったことはないのです。熱心なユダヤ教徒として生まれ育った彼は、ぽっと出の新興宗教である初期キリスト教の迫害に加わっていました。しかしある日「サウロ(パウロの前の名前)、サウロ、なぜ私を迫害するのか」と天からのキリストの声を聞き、奇跡的体験をしたことで、キリスト教に回心したのです。

パウロの強みは、ローマ市民権を得ていたこと、当時の国際語であるギリシャ語とヘブライ語を話すことができたことでした。他の弟子たちは漁師や徴税人などでしたが、それとは社会的地位が異なっていたのです。またギリシャ語とヘブライ語を用いて、ユダヤ人以外の人びと、民族、土地にも教えを広めました。「異邦人の使徒」とパウロは呼ばれています。

次のページを読む
1 2 3
Share: