5分でわかる『失楽園』!イギリス文学史上の最高傑作のあらすじ・筆者のミルトンをわかりやすく解説!
神に対する人間の最初の叛逆と、また、あの禁断の木の実について(人間がこれを食べたために、この世に死とわれわれのあらゆる苦悩がもたらされ、エデンの園が失われ、そしてやがて一人の大いなる人が現われ、われわれを贖い、楽しき住処を回復し給うのだが)
3.『失楽園』のあらすじ
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1660年の王政復古による迫害に失望したミルトンは、構想を練っていた『失楽園』をまとめ上げます。これは、大魔王サタンは神が創造した人間を誘惑し背かせ、神への叛逆を成した大叙事詩として完成しました。キリスト教の根幹を扱ったミルトンの野心作で、古典叙事詩の英雄が担う戦闘や冒険などを、悪役サタンが担当する奇想天外な面白さも魅力です。第4巻の「どこに逃げても地獄がある!いや私自身が地獄だ」と気付くシーンは印象に残ります。それでは、あらすじをご紹介しましょう。
3-1大魔王サタンの誕生
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神に愛される輝かしい天使「ルシファー(ラテン語で、光をもたらす者)」が、最高位にいた自分を差置いて神の独り子の御子(キリスト)を高位につけたことに嫉妬し、多くの天使を率いて神に叛逆します。敗北したルシファーは、「サタン(ヘブライ語で、敵対する者)」と名づけられ、大罪を犯した罰により「地獄」へ落とされ悪魔となったのです。サタンは主人公的存在で、ミルトンがとっても魅力的に描いており、その存在に賛否両論を浴びています。
燃え盛る火の池に放りだされたサタン。自らの行動が呪の淵に自身を陥れたのです。地獄は、神のくだす言語に絶する破滅と憤怒と復讐のみが注がれる場所で、彼自身が痛切無残に悟らしめる神の怒りの場でした。サタンは屈辱にまみれながらも、奈落の上の祝福を願い再起を誓うのです。
「天国において奴隷たるより、地獄の支配者たる方がどれほどましであることか!」と、共に地獄に落とされた数多くの天使(座天使(スローン)・能天使(パワー))たちにかの者(神)への反噬を覚悟させ、いずれ天国を支配すると沸き立つ欲望を語るのです。
3-2地獄へ落ちたサタンたち
地獄に落ちた悪の天使たちは、かの者(神)は全てを見通す力を持っており、地獄の動きも丸見えだから、すぐに攻めるべきと主張します。しかし、ベリアルは、冷静に作戦を立てることを提案。かの者が悪の天使たちを殺さなかった理由は、永劫の苦悩を与えるためで、これ以上の罰を受けないことが幸福だろう。ここに適応できれば、天国よりも素晴らしい住処になると語ります。
マンモンも同意し、絢爛たる奴隷生活のくびきより、苦難に満ちた自由を選ぼうと呼びかけました。有害なものから有益を生み、逆境から繁栄を造りだす力があると、自主独立の道を選ぶよう諭したのです。
3-3エデンの園を狙うサタン
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悪の天使たちが納得したところで、天国とすぐに戦争をと息巻いていたベルゼバブが、神が愛する人間を堕落させるのが得策と提案しました。寵愛を受ける人間を踏みにじれば、かの者への最上の復讐になると語ります。
サタンを始め皆が賛成したのです。サタンはこの任務に一人で挑むことを宣言し、留守の間に地獄を住みやすくするように命令します。エデンの園への遠征には余人の参加は許さないといい、人間を滅ぼすか堕落させるかの偵察に単身で出発しました。