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5分でわかる「曼荼羅」とは?意味や模様、世界観をご紹介!金剛界や胎蔵界も解説

仏教用語で「曼荼羅(まんだら)」という言葉自体は聞いたことがある方も多いと思います。言葉の感じからして新興宗教っぽい?ちょっと怪しげな?ちょっと怖い感じもするような?いえいえ、実は曼荼羅というのは日本人にとっても大変ありがたいものなのです。形は違えど、仏壇仏具やお経など、仏教には欠かせないアイテムと同じくらい大切なものになります。特に密教(真言宗や天台宗)などでは顕著で、これがないと法事や法要もできないといってもいいでしょう。では、あなたの知らない曼荼羅の世界へとご招待しましょう。

1.「曼荼羅」とはいったい何だろう?

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By 忠快[Chukai] (1160-1227) – Nezu Museum, パブリック・ドメイン, Link

曼荼羅のことを解説する前に、まず仏教そのものをすべて説明しようとすると難し過ぎて、おそらく頭が混乱することでしょう。それこそ仏門に入った方が早いくらいですね。あくまで曼荼羅に関わる事柄について、とにかく簡単にお話していきますね。まずは「曼荼羅っていったい何なの?」ということから始めていきましょう。

1-1.「曼荼羅」とは仏の世界観を表したもの

仏教の教えで何より大切なのが【経典】といういわゆる教科書的なもの。この中には様々な逸話や教えが書かれていて、人を正しい道に導いています。

仏教の開祖ブッダ(お釈迦様)が亡くなる際に、弟子たちがブッダの言葉を記憶して書き留めたものが始まりだといわれているんですね。

しかし多くの教えが書かれているとはいえ、その量も膨大なもので、きちんと理解できる人もいれば、そうでない人も当然いるということ。読んだり聞いたりするだけではなくて、目で見てわかりやすく教えを説こうとしたのが曼荼羅の始まりなのです。

曼荼羅は絵だったり、立体像だったり、時には砂で描いたりするものですから、その視覚的効果で仏教の世界を人々に理解させたわけですね。

1-2.宇宙の最高神【大日如来】

インド仏教を源流に持つ密教には、【大日如来】という本尊がおられます。もともとはインド仏教の神マハー・ヴァイローチャナといい、日本へ密教が伝来した際に、古来の神【天照大御神】と結びついて成立したそう。

大日如来のことを別名【法界神】といいますが、法界とは仏教でいう宇宙のこと。ですから大日如来は宇宙や世界の中心をなす最高神ということになるのです。

1-3.「曼荼羅」にはいったい何が描かれている?

曼荼羅には、大日如来を中心とした仏教の悟りの世界と、実際に仏教の教えを視覚化した経典の世界が描かれていますね。

日本における曼荼羅には2つの種類があり、ひとつは「胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)」といい、もうひとつは「金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)」といいます。

後述しますが、だいたいこの2つがセットとなって「両界曼荼羅(りょうかいまんだら)」と呼ばれているのです。

2.金剛界や胎蔵界ってどんな世界?

image by PIXTA / 49930080

ここで難しい仏教単語が出てきました。「金剛界」と「胎蔵界」といいますが、この2つの世界が曼陀羅の宗教観を表現しているといっても差し支えありません。わかりやすく説明していきますね。

2-1.「金剛は」は大日如来の智慧(ちえ)を表現したもの

「金剛界」の「金剛」とは、いわゆるダイヤモンドのことを指します。もちろんダイヤモンドは世界一硬い物質とされていますから、これを大日如来になぞらえているのです。

そう、大日如来が身に付けている「智慧」や「悟り」はダイヤモンドのように硬く、決して揺らいだり壊れてしまうことはありません。仏の硬い意志を表した世界ということになります。

また大日如来の硬い智慧によって、人間の煩悩を打ち砕いてくれるという期待が込められているわけです。

2-2.「胎蔵」は母のように包み込んでくれる仏の慈悲

曼陀羅に関しては、この胎蔵界曼陀羅の方が先に生まれたようです。そして対をなすように金剛界曼荼羅が誕生してから。改めて「胎蔵界」と呼ばれるようになりました。

「胎蔵界」の「胎蔵」とは、母のように優しく包み込む大日如来の慈悲により、本来あるべき「悟り」の本質がが生まれ育ってくるという世界となります。

仏教には、悟りを母親の胎内をなぞらえる場合があり、体験された方もいらっしゃると思いますが、京都清水寺の「胎内めぐり」も同じような意味ではないでしょうか。

2-3.経典の世界を図式化した【金剛界曼荼羅】

金剛界曼荼羅の画像

【金剛界曼荼羅】は、【胎蔵界曼荼羅】と対をなす曼荼羅図で、西側のほうに掛けて用いられますが、密教経典の世界を図式化した曼荼羅だといわれています。

経典とはすなわち「金剛頂経(こんごうちょうぎょう)」といわれるもので、かの空海が日本へ持ち帰って広めたとされていますね。悟りの方法を実際に大日如来が教えるという教科書的な内容で、「汚れた心を清浄化し、如来の智慧を備える」という目的があります。

2-4.欲の戒めこそが大日如来の智慧を得る方法

「金剛」とは「大日如来の硬い智慧」を指しますから、「大日如来の智慧を得るためにはどうすべきか?」という命題を曼荼羅図の中に描いているわけですね。

図柄としては整然と碁盤の目のように区切られ、9分割されています。それぞれ9つの区画には成身会や供養会などと呼ばれるカテゴリーがあり、「智慧」を得るための「欲への戒め」が表現されているのです。

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明石則実