- 郵政民営化によって実現した各事業の実態
- かんぽ生命もゆうちょ銀行も欺瞞に満ちた実態
- 公共サービス事業としての郵政民営化の結果
- 国鉄の民営化はどうなった?
- 電力会社の実態は福島原発後の東京電力でみることができる
- 関西電力に組織としての弊害が見て取れる
- 郵政民営化に限らず、国民のインフラ事業の民営化は大きなリスクをともなう
- 本来は国民サービスとしての事業は民営化すべきではない
- 郵政民営化はなぜ反対を押し切って実施されたのか
- 郵政民営化によってそれぞれの事業はどう変わったのか
- 郵便事業の突き当たった壁
- 郵貯事業の民営化の結果は?
- 簡保事業は民営化でどうだったのか?
- 欺瞞だらけの郵政民営化の結果
- 国民生活を支える公共サービスは民営化すべきではなかった
この記事の目次
郵政民営化によって実現した各事業の実態
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2007年に小泉首相と担当大臣の竹中平蔵氏の肝入りで郵政民営化法案の成立により民営化への移行が実現した郵政事業会社は、昨今どのような実態にあるのかは、ご存じの方もたくさんいます。
郵便事業では、多くの郵便局が整理され、郵便局の夜間受付時間は大きく削られました。また、都市部はともかく、地方の過疎地では郵便局への依存が強いにも関わらず、郵便局が閉鎖されている例は多くあります。また、夜間いつでも受付けてくれることで、都市部ではそれぞれのライフスタイルにあったサービスレベルが大きく低下してしまいました。さらに、郵便局員が郵便物を届けずに自宅に放置していたり、廃棄していたりした事件も多発しているのです。
かんぽ生命もゆうちょ銀行も欺瞞に満ちた実態
一方、かんぽ生命(旧簡保)では、昨今、生命保険商品の劣化する契約に誘導して契約を取る不正事例が大量に発生して営業そのものが停止しています。それらは、郵便局を頼りにする高齢者が中心で、かんぽ生命の信用は地に落ちたと言えるでしょう。
ゆうちょ銀行(郵便貯金)も、自ら金融商品を設計することはできず、融資業務などで不祥事を起こしていたスルガ銀行に丸投げしている実態が明らかになっています。民間の金融業務を圧するよりも、ついていけない実態が明らかになっているのです。
このように、事業を効率化してコストを抑えて国民によりよいサービスを提供するという郵政民営化は完全に頓挫して言わざるを得ません。当時の小泉総理の改革の声のもとで政権によっておこなわれた郵政民営化は結局絵に描いた持ちだったことが明らかになっているのです。
公共サービス事業としての郵政民営化の結果
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民営化したことによって、郵政会社は、常に株主の顔色をうかがい、利用者である全国の国民へのサービスを縮小していきました。さらにもともとの民間会社との競争にさらされることで、利益を上げることが最優先されてしまいます。社員に無理なノルマを与えて不祥事を多発させ、それを監視するガバナンス機能もないという状況にあるのが郵政民営化の実態です。
それでは、ほかの公共サービス事業の民営化ではどうだったのでしょう。国鉄(現JR)や電力事業などを見ていきます。
国鉄の民営化はどうなった?
日本郵政会社の実態は、2005年にJR福知山線の脱線転覆事故で多くの方の命を奪ったJR西日本と似た構造にあるといえます。かつての日本国有鉄道(国鉄)が、財政事情の悪化から 1987年に民営化され、日本各地域ごとにJR会社が分割設立されました。当時は、財政的には貢献は大きかったのです。しかしそれによって、利用者を安全に輸送するという鉄道事業者の本来の目的を忘れてしまったといえます。利益第一で、社員にも競合する民間鉄道会社に勝つことを命じ、安全設備の設置が遅れ、社員教育もおろそかにされていたことが原因で起きた事故でした。
電力会社の実態は福島原発後の東京電力でみることができる
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さらに同様の民営化の弊害は、電力会社でも起こっています。ご存知のように、各電力会社は、かつての通商産業省(現在の経済産業省)の推進するエネルギー政策に乗って安全性の確認されていない原子力発電にのめり込みました。その結果、東日本大震災では福島第一発電所でメトルダウンという未曾有の原発事故を引き起こしました。その後処理は現在も続いており、住み慣れた自宅に未だに帰ることのできない人々は今もたくさんいます。
原子力発電は後処理を考慮しないことで発電コストが安いという神話に騙されて、巨大事故を引き起こし、その後処理を自身のコストでおこなうことができていません。東京電力には多額の税金が投入され、現在でも事故原発では多くの問題が発生しています。未だに電力業界は原発はコストが安いことを理由に原発による発電に依存し、再生エネルギーなどの発展を阻害しているのが実態です。社会的にも、環境的にも、さらには経済的にも原子力発電に依存することは無理があります。
関西電力に組織としての弊害が見て取れる
原子力発電の依存率の高い関西電力では、福井県高浜原発などの建設などで多額の賄賂(わいろ)を受け取りながら原子力発電事業がおこなわれてきたことが明らかになっています。それによって、原子力発電の安全性が損なわれる可能性があることもわかっていながら、関西電力経営層は賄賂を受け取っていたのです。国民のインフラを担う企業としての自覚も機能もないといえます。
民営化されていることによって、会社としての利益さえ出れば、安全性もサービス活動も犠牲にする企業風土ができてしまっていたといえるでしょう。
郵政民営化に限らず、国民のインフラ事業の民営化は大きなリスクをともなう
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資本主義社会でも、国民のインフラ事業、すなわち、電力事業、郵便事業、可塑対策、長距離鉄道事業などは、初期費用が大きく、民間企業には向いていないとされていました。しかし、住民サービスを提供する必要があるため、国や地方自治体がおこなうのが望ましいとされていたのです。
しかし、いったんインフラ整備ができてしまうと、そのインフラを利用することで利益を出そうと、民間大手事業会社が払い出しを希望するようになります。
とくにアメリカなどはその傾向が強く、電力事業なども早くから民営化や民間企業への払い出しがおこなわれていました。しかし、完全に民営化されることによって、利益第一主義から安全性などは無視され、停電がかなりの頻度で起こりました。そのため、住民はその対策(無停電装置など)のために余分のコストを払わせられたり、競争のないことにより高い電力料金を支払ったりしてきたのです。