本来は国民サービスとしての事業は民営化すべきではない
したがって、本来住民の生活基盤(インフラ)は、国や自治体が利益よりも安全性や安定的なサービス提供を第一に運営されるべきなのです。
しかし、日本の政治家はアメリカの公共事業の民営化が進んでいることだけを見て、その実態がどれだけ悲惨なことになっているかを見ずに民営化を進めてしまいました。
郵政民営化はなぜ反対を押し切って実施されたのか
郵政民営化は、小泉元首相の父の時代から、銀行業界などの事業を圧迫しているとして民営化させることを政治使命にしており、その弊害をいっさい見ずに実現してしまったのです。その実質的な推進役を果たしたのが、当時の担当大臣竹中平蔵氏でした。
郵政事業は当時は黒字でしたが、いずれ効率化が遅れ、赤字化してその負担が国民にいくというのが、竹中氏の主張です。民営化すれば、黒字を維持し、国民サービスを維持できるという言い分でした。しかし、10年以上経った現在の状況を見れば、彼の言っていたことは嘘であったことがわかります。もともと経済学者であり、アメリカの実態はよくしっているはずで、このような事態になることはわかっていたはずです。しかし、それらについてはいっさい口にせず、現在でも責任を感じることもありません。
このように、小泉、竹中氏の欺瞞に満ちた郵政民営化は明らかに誤りであったのです。
ゆうちょ銀行にしても、従来からある銀行を脅かすノウハウも人材もおらず、新規事業である個人貸付なども民間銀行に依存して、窓口のみになっているのが現実でした。
郵政民営化によってそれぞれの事業はどう変わったのか
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当時、宅配業者のヤマト運輸などの進出は郵便局の事業を圧迫するとともに、ヤマト運輸自体が郵便事業への参入を目指していました。郵便事業が郵便局にのみ許されていることに対して参入機会を望んでいたのです。そのため、郵政民営化によってヤマト運輸をはじめとして多くの宅配業者が参入しましたが、それらの会社は現在どうなったのでしょう。
郵便事業の突き当たった壁
郵政民営化によって宅配業者と日本郵便は今、大きな困難を迎えています。アマゾンなどの宅配業務を請け負っているヤマト運輸は、その厳しい要求や宅配料金の切り下げなどに音を上げて現在では値上げを要求せざるを得なくなっているのです。すなわち、宅配物の拡大によって日本郵便を含めて配達従業員の確保が難しくなっており、採算も合わなくなってきています。日本郵便などは土曜日の配達業務を廃止しようとしており、競争そのものが業者を圧迫してしまっており、確実性というサービスの原点が危うくなっているのです。もとの郵便局体制であれば、無理してこのような競争の激しい事業などに参入する必要はなかったでしょう。
郵貯事業の民営化の結果は?
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ゆうちょ銀行は、銀行内のリスク回避ノウハウがないままに、銀行との競合事業に参入してしまっており、採算ははかばかしいとはいえない状況にあります。現在のままではかんぽ生命の致命的な組織的不正風土と同じ状況が生じる可能性が高いといえるのです。もとの郵貯として高齢者や地方の過疎化の地域の金融機関としての役割に戻らないと事業そのものが行き詰まる可能性もあるでしょう。
簡保事業は民営化でどうだったのか?
かんぽ生命の組織的な不正体質は、郵政事業の時代には考えられない事態です。民営化したことで、従来の地域に根ざしたサービスを放棄させ、同じ人たちに利益至上主義を押し付けた結果といえます。もともと地域の人々との結びつきによって生きてきた人に、無理な契約獲得を強要しても不正をするしかほかにできることはなかったといえるでしょう。