大正日本の歴史

「米騒動」って何?第一次世界大戦中の好景気に起こったこの騒動を解説

第一次世界大戦中にシベリア出兵の決定

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しかし、ロシア革命の影響から、革命を成し遂げたソビエト連邦(ソ連)が成立し、それに対して、欧米大国は共産主義政権に対して警戒心を強めていました。ソ連はシベリアで国内の反対勢力と内戦をしていましたが、その内戦に対して日本が出兵するように要請があり、当時の寺内内閣はシベリア出兵の準備にとりかかったのです。

好景気でインフレが生じていたところにシベリア出兵のために米の買い占め

シベリア出兵当時の日本は、好景気が続いていました。しかし、生産物の増産が輸出に向けられていたため、国内ではもの不足が生じてインフレ(物価上昇)が発生していたのです。とくに米価の高騰が著しく、政府も緊急輸入をおこなったり、暴利業者の取り締まりをおこなったりしたものの、高騰を押さえることはできませんでした。しかも、工業生産が好況であるだけで、農村ではその恩恵は受けられず、かえって物価上昇によって生活が苦しくなっていたのです。

そこにシベリア出兵による兵糧米の確保の必要が生じます。ところが、それに先だって仲買商人たちが買い占めに走ったために、ただでさえ物価上昇が著しい中でさらに米価の急騰が生じてしまったのです。それため、庶民の生活はますます苦しくなっていき、国民の不満が蓄積していくことになりました。

米騒動当時の国民の食生活は米に依存

第一次世界大戦当時の日本の一般家庭では、現代のように、肉を中心とした豊かな食卓ではありませんでした。主食の米によるエネルギー補充が中心で、一般家庭では毎日1升の米を食べていたと言われています。エンゲル係数も高く、米価の急騰は、一般家庭の家計を大きく圧迫し、政府に対する批判につながったのです。

また、米の生産力も、小規模農家が生活に困って土地を売り、小作農に転落していたため、生産意欲が乏しく、生産力は上がっていませんでした。そのため、好景気によって物価上昇が起こる中で、米の値段も上昇していたのです。

米騒動の直接的原因は何だったのか

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第一次世界大戦の中で、農村などの生活はよくならず、都市部でも物価上昇によって収入は増えても支出も増えるという状況で、政府に対する不満が蓄積していました。そのような中で、さらに米価を急騰させる事件が生じたのです。その中で、米屋の倉庫にはシベリア出兵用の米が大量に出荷待ちになっていることが魚津の主婦らに知られ、米騒動の直接的な原因となっていきました。

シベリア出兵の情報が漏れて仲買業者などの商人が米を買い占め

連合国側からシベリア出兵を要請された当時の寺内内閣は、出兵を受け入れ、そのために準備にかかります。しかし、すでに述べたように、このシベリア出兵の情報はすぐに米などの仲買業者にもれ、彼らは米の買い占めに走ったのです。シベリアに出兵するためには兵士たちの食料になる兵糧米が大量に必要になることを見越した買い占めでした。そのために、一般庶民向けの米の価格はさらに急騰したのです。

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