
いつ頃何のために作られた?意外と知らない埴輪の真実

埴輪とは何か?日本中の古墳から出土していてあちこちで見られるものなのに、実は何のために作られたのか、はっきりとわかっていないというミステリアスな一面も持っているのです。まずは埴輪の基本的な情報をご紹介します。
「埴輪」ってどういう意味の言葉?ざっくり埴輪情報
色は明るい茶色、くりっと丸い目にぽかんと空いた口。鎧兜のようなものを着て剣を持ち武装したものもいれば、何も身に着けず頭もむき出しで「おそ松くんに登場するイヤミの”シェー”のポーズ」をしているものたちも。人だけでなく、馬や家、船の形をしたものも、埴輪の種類は実に多種多様です。
埴輪とは、古墳時代(3世紀から7世紀頃)に、古墳の周囲に並べられていた焼き物のこと。「埴」とは、瓦や陶器の原料となるきめ細かい黄赤色の粘土のことを表す漢字です。「輪」という文字が使われている理由については様々な説があります。
埴輪には、円筒埴輪(初期の段階で盛んに作られていた土管のような筒形をしたもの)と、形象埴輪(人や馬、家、船など)の2種があり、古い時代には円筒のものが主流だったため「輪」という字が使われたのでは、という説が有力です。また、古墳の上に円状に埴輪を並べることが多かったことから、このような字が使われるようになったともいわれています。
日本中に点在する古墳でたくさん出土している埴輪ですが、実は、なぜ、何のために作られたのかについては、はっきりしたことはわかっていません。
身分の高い人が亡くなった際に、家来や家財道具などと一緒に埋葬して死者を弔う意味があったとか、儀式的な意味があったのではないか、との見方が有力です。
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弥生時代の土器?埴輪の起源と歴史について
埴輪は、3世紀頃から作られ始め、前方後円墳が築かれなくなった6世紀後半頃、時を同じくして作られなくなっています。
まず、埴輪の起源について。現在の岡山県~広島県東部にあたる地域(吉備地方)で、弥生時代の後半に築かれたとされる墳丘墓が確認されています。ここから、死者を弔うための土器と思われる壺状の焼き物が出土。これが、埴輪の起源であると考えられています。筒状の台のようなものと、その上に置く壺がセットになったもので、この形が徐々に、円筒埴輪に発展したようです。
また、「日本書紀」の垂仁天皇の記述のところに、天皇の近親者が亡くなった際、粘土で作った人や馬を古墳に並べた、という意味の記述があり、これが埴輪の起源だといわれています。
それまでの日本では、身分の高い人が亡くなって埋葬する際、家来たちも一緒に生き埋めにしていました。この習慣をやめたいと考えていた垂仁天皇は、野見宿禰(のみのすくね)という人物からの提案をもとに、生き埋めの代わりになるものを一緒に埋めることにします。
ただ、この記述を埴輪の起源とする説については、時期的な観点などから多少の疑問も。垂仁天皇の即位は3世紀後半頃~4世紀前半頃で、このころにはまだ、人や馬の形の埴輪は作られていなかったとされているためです。
これだけたくさん発見されているのに、どういう目的で作られたのか分かっていないというミステリアスな埴輪。今後の調査・研究で明らかになるのか、注目が集まっています。
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土偶とはどう違う?埴輪との違いや目的について
埴輪と同様、古代の日本の遺跡で数多く見つかっている焼き物の人形に「土偶」というものがあります。土偶と埴輪はどう違うのでしょうか。
決定的な違いは、作成された時期。土偶は古墳・弥生時代よりずっと前の縄文時代(紀元前1万4千年~前3世紀頃まで)に作られた、人や動物の形を象った土製品のことです。
土偶の作成理由についても、はっきりとしたことはわかっていません。何せ文字による記録などない時代のこと。残された実物からいろいろ想像するしかないので、様々な説が上がるのもやむを得ないところです。
ただ、土偶の多くは人の形、しかも女性を象ったものが多く、腕など体の一部が故意に壊されたと思われるものもいくつか見つかっています。五穀豊穣を願って地母神にささげたものか、あるいは厄払いのような意味があったのかもしれません。
土偶についても、様々な形状のものが見つかっており、徐々に形を変えながら、埴輪へとつながっていったとも考えられています。
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会いたい!埴輪に会えるおすすめスポット・遺跡をご紹介!

ほんわかした雰囲気を持ちながら謎めいた一面を持つ、ミステリアスな埴輪。ここまで知ったら、直に見てみたくなりますよね。埴輪は日本全区各地でたくさん出土していますので、地元の博物館などにもきっと展示されているはずです。そんな埴輪スポットの中から、特におすすめの施設をいくつかえりすぐってご紹介します。
埴輪好きならここは外せない!「東京国立博物館」
まずはここから。日本が誇る巨大博物館~上野公園内にある「東京国立博物館」には、おそらく日本一有名と思われる埴輪「踊る人々」があります。
ぽわんと空いた口、とぼけたお顔、シェーのポーズ。なんとも愛嬌のある姿で、海外にもファンの多い埴輪です。埼玉県の野原古墳から出土したもので、6世紀頃のものといわれています。
東京国立博物館には、このほかにもたくさんの埴輪や土偶が展示されていて見ごたえ満点。ちょっと敷居が高いような気がして抵抗がある、という方は、ぜひミュージアムショップを覗いてみてください。「踊る人々」をモチーフにした埴輪グッズがたくさん。かわいらしいお弁当箱やトートバッグ、ペーパークラフトもあります。埴輪好きもそうでもない人も楽しめる埴輪ワールド、おすすめです。
小さなお子さんも楽しめる「芝山町立芝山古墳・はにわ博物館」
休日にファミリーで楽しめるスポットとして人気なのが、千葉県山武郡にある「はにわ博物館」です。
この周辺は、500基にも及ぶ古墳が点在している遺跡の宝庫。埴輪もたくさん出土しています。千葉県は特に前方後円墳がたくさん作られていた地域としても知られており、埴輪の種類も豊富です。
こちらの博物館では、古墳や埴輪について子供たちでも楽しく学べるよう、様々な工夫がなされています。
円筒のもの、人型のもの、馬、家、手を挙げているもの、首をひねっているもの、鎧を着ているもの、素っ裸のもの……。イッツアハニワワールド。周辺の古墳から出土した埴輪が、これでもかと展示されています。様々な形のものがあって見ごたえ満点。古代の人々が、工夫しながら埴輪を作っていた様子がよくわかります。
埴輪に関する認識が一新されるはず。8月28日は「はにわの日」とのことで、火おこし体験や勾玉づくりなど古代の暮らしを体験するイベントが行われます。