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人の尊厳を無視した「民族浄化」とは?今こそ知っておくべき人類の愚かな行い

「民族浄化」というワードは、1990年代に勃発した旧ユーゴスラビアをめぐる内戦の時に頻繁に用いられました。よく似た言葉で「ホロコースト」や「ジェノサイド」というものがありますが、意味はおおむね似たようなものでしょう。異なる民族を暴力をもって抹殺し迫害するという行為は、はるか古代から続いてきた人類の負の歴史と呼べるのかも知れません。今なお世界中で続いている愚行を止める手段は果たしてあるのでしょうか?皆さんとともに考えていきたいと思います。

なぜ民族浄化が起こってしまうのか?

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民族浄化へ至るまでのプロセスには様々な要因があり、多くの場合は簡単に解決できない問題によって引き起こされます。「昨日までの善人が、今日は悪人に変わってしまう」という常識では計れない心理が働き、それが集団心理となって行動が起こされるのです。しかし当の本人は何も悪いことをしたと思っていないことが厄介なのですね。それでは細かく解説していきましょう。

民族浄化が起こる要因【宗教】

民族浄化とは、よく民族間対立で起こるものだと考える人が多いようです。それも確かに主要な原因の一つですが、民族浄化が起きる副次的要因として「宗教」が絡んでいることもまた多いのですね。

例えば日本の仏教の場合は様々な宗派があり、たくさんの仏様がいて、他の宗教に対しても非常に寛容だといえるでしょう。日本に仏教が入ってきた時、仏様たちは日本神話にも登場する八百万の神々と融合(神仏習合)して「神と仏の二面性」を有する存在となり、神社の中にお寺が存在する神宮寺といった形態も日本独特のものですね。

かたやキリスト教イスラム教などは一神教といって、ただ一つの神の存在のみを認め、他の宗教を信仰する者を【異教徒】として迫害したり弾圧したりしました。かつての十字軍やイスラム原理主義などがその好例ですが、世界人口77億人のうち、一神教であるキリスト教・イスラム教を信仰している人たちの数は42億人ですから、宗教による民族浄化の火種はどこにでもくすぶっていると表現してもよいのではないでしょうか。

2014年、中央アフリカ共和国では少数派のイスラム教徒たちがキリスト教徒による迫害を受け、大規模な民族浄化が起こっています。人口のうち半数がキリスト教徒、約15%がイスラム教徒ですから、多数派による異教徒弾圧という図式が特徴的だといえるでしょう。

ちなみに豊臣秀吉や徳川家康らが禁教令を発したのも、こういった多宗教の排撃を必然とするキリスト教が広まることを危惧したためともいわれていますね。

民族浄化が起こる要因【民族】

「異民族」の存在によって民族浄化が行われるということも大きな理由でしょう。もっとも宗教対立とも強くリンクしていて、「異民族かつ異教徒」が対象にされる場合ほど凄惨なものはありません。

今なお民族浄化を受け続けているロヒンギャなどがその最たる例で、インド系移民だった彼らムスリムはミャンマーの仏教徒から迫害を受け、国籍を剥奪されたばかりか簡単に帰化すら許されていません。彼らは今もなお不法移民の扱いなのです。

日本でいえばアイヌ民族への迫害が挙げられますね。古代には蝦夷と呼ばれ、大和朝廷から圧迫を受けて北へ北へと逃れることになりました。それは江戸時代に入ってからも続き、不利な条件で交易させられたり、不当な差別や偏見などが後を絶たず、挙句の果てには明治以降の大規模入植をきっかけにして日本人と同化していきました。

日本による戦前の台湾統治韓国併合もある意味では民族浄化といえるでしょうか。皇民化政策によって、良い意味でも悪い意味でも日本人への同化が進められたのです。

民族浄化が起こる要因【政治】

民族浄化が起こる要因として、政治イデオロギーを強制する為政者からの弾圧も挙げられるでしょう。現在でいえば中国政府によるウイグル民族への迫害がこれに該当しますね。ウイグル民族は独自の文化や言語を持つ少数民族ですが、古来から漢民族と対立を繰り返してきた歴史があるのです。

中国政府は新疆ウイグル自治区の分離独立を警戒し、不穏分子を取り締まっては投獄し、暴動の芽を摘み取ろうと躍起になっているとのこと。またウイグルの文化や生活習慣を否定し、中国人化教育を正当化しています。これによって100万人ものウイグル民族が自由を奪われているとされていて、明らかな人権被害だといえるでしょう。

1930年代にソ連の指導者スターリンが強制した農業政策によるウクライナの犠牲者たちも、民族浄化の一つだといえるかも知れません。インテリ、知識人、活動家などを大量に摘発し、政策に反対したという理由で100万人ものウクライナ人が殺されました。このホロドモールといわれた愚策は、中国の大躍進政策とともに「政治による民族浄化」として汚点を残しました。

民族浄化に拍車を掛けるメディアの存在

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本来なら中立かつ公正であるはずのメディアやマスコミが、民族浄化に加担するということも少なくはありません。これは対岸の家事などではなく、日本においても起こりうることなのです。

中立性を無視して世論を煽るメディア

かつてアメリカ国務長官だったベーカーは言いました。「アメリカ政府を動かしたければ世論を動かせ。世論を味方にしたければメディアを動かせ」と。

人々は少なからずテレビやラジオ、新聞などのメディアを中立なものだと考えています。日本でいえば朝日新聞社は左向き、読売新聞社は右向きというふうに解釈されていますが、そこに多少の政治的理念が入っていたとしても、その立ち位置を大きく逸脱することはないだろうとされていますよね。

しかしメディアがある日突然、その立ち位置から大きく逸脱するような報道をすれば信用するでしょうか?実はそこに大きな落とし穴があるのです。メディアが過激で恣意的な報道を繰り返すうち、やがてそれはフェイクではなく真実に基づくものだと解釈されていきます。

それがルワンダ虐殺でした。詳細は後述しますが、ルワンダでは民族間対立を活字メディアやラジオなどが煽り続けた結果、人々の感情が爆発して大量虐殺が起こり、民族浄化に繋がっていったと解釈されていますね。ヘイトスピーチを繰り返せば、それが正論になってしまう例だといえるでしょう。

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明石則実