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5分でわかるギルガメッシュ叙事詩!何が書かれてる?誰の話?伝説の王を巡る物語をわかりやすく解説

「ギルガメッシュ(ギルガメシュ)」という名前は聞いたことがある、という方も多いと思います。SF小説やアニメ、ロールプレイングゲームのキャラクターとして登場することもありますが、そもそも「ギルガメッシュ」とは何者なのでしょうか。人の名前なのか魔物なのか、神様の名前なのか……。いえいえ、「ギルガメッシュ叙事詩」という古代の物語から来ています。今回の記事では、知っているようであまり知られていない「ギルガメッシュ叙事詩」に注目してみたいと思います。

世界最古の文学作品?「ギルガメッシュ叙事詩」の基礎知識

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叙事詩(じょじし)とは、歴史上の出来事や伝承、英雄を称える物語などを綴った長編文学。「ギルガメシュ叙事詩」は古代メソポタミアの文学作品で、物語形式の文学としては最も古いもののひとつと言われています。数千年の時を超えて現代の人々を魅了する珠玉の物語「ギルガメシュ叙事詩」。いったいどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

発祥は古代メソポタミア・いつ頃の物語?

「ギルガメッシュ叙事詩」は、古代メソポタミアで作られた、世界で最も古いといわれる物語のひとつです。

書いたのはシュメール人であったとされています。シュメールとは、メソポタミア地域にあった都市。現在のイラクやクウェートがあるあたりに、紀元前3500年頃から3000年間ほどの間、高度な都市文明が存在していました。シュメール人は初期のころのメソポタミア文明を築いた民族といわれています。

ギルガメッシュとはシュメールの初期時代、ウルクという都市国家の第一王朝時代に実在した伝説的な王の名前。古代オリエント屈指の英雄で、ギルガメッシュを描いた神話や英雄譚は数多く存在していたと考えられています。とりわけ有名なものが「ギルガメッシュ叙事詩」です。

どこで発見された?何語で書かれている?

現存するギルガメッシュ叙事詩は、粘土板に楔形文字(くさびがたもじ)で刻み記されたもの。19世紀後半、メソポタミア北部で発見された古代の遺物・遺構数万点の中に、ギルガメッシュ叙事詩を記した粘土板が数点、含まれていました。

この粘土板がギルガメッシュ叙事詩のオリジナルであるかどうかは定かではありません。紀元前3000年頃にシュメール語で作られた物語が、1000年余りの間口伝えに伝わり、紀元前1300年頃に楔形文字で記録されたのではないか、との見方もあるようです。

おそらくその間、オリエント地域を行き来する民族たちによって、バビロニアやヒッタイトなど様々な言語で語り継がれ、各地に広がっていったものと考えられています。

「ギルガメッシュ」って何者?

最初に少し触れましたが、ギルガメッシュとは古代メソポタミアの伝説的な王様の名前です。

ウルク第一王朝第五代の王として在位。紀元前2600年頃の人物であるとされています。

実在の王であることは間違いないようですが、どのような王であったかについては、神話として語られている部分も多く、詳細は不明。父はやはりウルクの伝説的な王・ルガルバンダ。母は女神ニンスン。シュメールの最高神から知恵を授かり、半神半人であった、と伝わっています。

その力は絶大で、ギルガメッシュに抗う者はいません。神話の中では、巨大な斧や黄金の剣を振りかざし、世を騒がす魔物を退治したり、武勇に優れた王として描かれています。

喜怒哀楽が豊かで人間的。魅力あふれる一方で、傲慢に振る舞い人々を悩ませる一面もあったようです。

旧約聖書の「ノアの方舟」に影響を与えた?

ギルガメッシュ叙事詩が刻まれた粘土板は、アッシリア帝国(メソポタミア北部にあった国家)の紀元前7世紀頃のものと思われる図書館から出土しました。

この図書館からは、様々な文書や記録が多数出土しており、そのほとんどがロンドンの大英博物館に保管されています。ギルガメッシュ叙事詩の楔形文字の解読も、19世紀後半、大英博物館にて精力的に進められました。

解読が進むにつれ、出土した粘土板のうちの1枚に『旧約聖書』に登場する洪水物語(創世記・ノアの箱舟)とよく似たストーリーが刻まれていることが判明。やがて粘土板に描かれている物語がギルガメッシュに関するものだということがわかります。

ギルガメッシュ叙事詩は「創世記」よりはるかに昔に書かれたものであることは、まず間違いないでしょう。だとすると、ギルガメッシュ叙事詩が旧約聖書に何らかの影響を与えたのでは?との見方もあるようです。

どんな物語?「ギルガメッシュ叙事詩」のあらすじとは

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粘土板から掘り起こされた「ギルガメッシュ叙事詩」は、世界中の人々の心をつかみました。難解な楔形文字は多くの専門家たちの手によって丁寧に読み解かれ、様々な言語に翻訳されて広まっていきます。いったいどんなお話なのでしょうか。簡単ではありますが「ギルガメッシュ叙事詩」のあらすじをご紹介いたします。

英雄であり暴君でもあるウルク王ギルガメッシュ

都市ウルクの王ギルガメッシュは、武勇に優れた偉大な王でした。あまりに偉大過ぎて、誰も彼に逆らいません。そのせいか、ギルガメッシュ王は天狗になり、しばしば悪さを働いて人々を困らせます。英雄である反面、暴君として恐れられることもあったのです。

ウルクの人々はギルガメッシュの強引な政治に苦しめられ、辛い思いをしていました。しかしギルガメッシュに対抗できる人間などこの世にいません。人々は「何とかしてほしいと」天に祈りました。

人々の声はやがて神々のもとに届きます。天神アヌはギルガメッシュの横暴を心配し、一計。そして大地の女神アルルに「ギルガメッシュの対戦相手になるような強い生きものを作り出すのだ」と命じたのです。

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