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世界の守護神「ヴィシュヌ」はどんな神様?このインドの神様について解説

「ヴィシュヌ」というのはインドの有名な神様ですね。ヒンドゥー教には「ヴィシュヌ派」というものもあって、最高神としての存在でもありますよ。インド料理やネパール料理のお店でよく飾られてますよね。インドの神様はたくさんの神様がいるので、どんな神様なのか知ってみようと思いませんか?

ヴィシュヌってどんな神様?

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Ramanarayanadatta astri – https://www.amazon.co.uk/Mahabharata-1-Ramanarayanadatta-astri/dp/B007OL1M3M, パブリック・ドメイン, リンクによる

「ヴィシュヌ」というのは「ヒンドゥー教」の神です。ヒンドゥー教の中心となる「ブラフマ」「シヴァ」とあわせて「トリムルティ(三神一体)」の1柱という重要な神様ですよ。またヒンドゥー教では「 ヴィシュヌ派」というのがあり「最高神」として信仰されているのですね。

どんな特徴・役割をしているの?

ヴィシュヌの身体はシヴァと同じで青くて、4本の腕がありますよ。右手には「チャクラム(円盤)」「棍棒」、左手に「パンチャジャナ(法螺貝)」「蓮華」を持っていますよ。乗り物は「ガルーダ」とよばれる光り輝く神鳥である鷲。

宇宙が創世される神話では、 宇宙ができる前にヴィシュヌのへそから蓮の花が伸びて、創造神ブラフマーが生まれて、 ブラフマーの額から破壊神シヴァが生まれたとされていますよ。三神一体とありますが、母体はヴィシュヌなのですね。なかなかバランスがいいですよね。ヴィシュヌの役割は「世界が悪・混沌・破壊的な力に支配されようとした危機の時に、それから人間を護る守護者」というものですよ。

インド神話でのヴィシュヌ

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the Victoria and Albert MuseumPainting from Jaipur, India; in the Victoria and Albert Museum, London. (site is redesigned, old description is also available in Britannica“, パブリック・ドメイン, リンクによる

インド自体が「インダス文明」という世界でも古いところなので、そこで生まれた「インド神話」も色々と編纂されていて大きく3つに分けられるといわれていますね。古い順番からあげていくと「ヴェーダ神話」「ブラフマン・ウパニシャッド系神話」「叙事詩系神話」となっていきますよ。そこに出てくる神々は後にバラモン教・仏教・ヒンドゥー教にも取り入れられていくのです。その中でヴィシュヌはどういう位置にあったのでしょうか?

インド神話ってなに?

アーリア人が入ってくるまでのインドには土着の神様がいました。どの国にもおられる農耕系の動物・地方や村を護る神様ですね。

〇ヴェーダ神話
アーリア人がインドに侵攻してきた頃にできたといわれる、「インドラ」が率いる「デーヴァ一族(神)」「アスラ一族(悪魔)」の神話ですよ。バラモン教の経典ともいわれていますね。ヴィシュヌは、太陽のあまねく光が神格化したもので、あまり重要な神様ではありません

〇ブラフマン・ウパニシャッド系神話
創造神「プラジャーパティ」が活躍する神話と「ウパニシャッド哲学」が融合した神話。世界の真理を示す「ブラフマン」が神様となって登場しますよ。「世界の本質=ブラフマン」「個の本質=アートマン」が一緒という哲学ができます。この神話と哲学が結びついたことが「仏教」に影響を与えていきますよ(仏教でいう梵我一如という考え)。

〇叙事詩系神話
インド神話で一番メジャーな「ヒンドゥー教」の元となっている二大叙事詩『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ(世界三大叙事詩のひとつ)』神話。この神話で、創造神ブラフマー・守護神ヴィシュヌ・破壊神シヴァの三神一体が最高神となりますよ。つまりこの神話になる前までは、ヴィシュヌ・シヴァは原型はあるもののメジャーな神様ではないのですね。

ヴィシュヌの化身

ヴィシュヌはインドの神様の中では珍しく「化身(アヴァターラ アバターの語源)」をしますよ。化身して人々を助けるということですね。その化身の中で有名なものを簡単に紹介していきましょう。中には実際にあった事件などの伝承にヴィシュヌが合体したのもありますね。

〇クールマ 
宇宙を支える亀
「クールマ」を受け皿にして。神と魔族がお互い綱引きをしたら色々なものが生まれた

〇マツヤ  
半人半魚。初めての人間「マヌ」をはじめすべての生き物を智恵の船に乗せて助ける話
宇宙規模の洪水からすべての生き物を助けたとも

〇ヴァーマナ 
小人。天界・地上界・地下界を支配した悪魔を、巨大化して踏みつけて成敗し平和にしたという話

〇ヴァラーハ
巨大な猪。洪水のあと、マヌが漂流している時に洪水で沈んだ土地を牙で持ち上げて戻す話

〇ヌリシンハ
半獅子半人。アスラの王が神や悪魔やケモノや人に殺されないという力を得て世界征服をし、息子を殺そうとしたので、ヴィシュヌが神や悪魔やケモノや人でもない姿になって成敗した話

〇ラーマ
悪魔に征服された島(現・スリランカ)を、ラーマという人物になり征伐したという英雄談と合体

〇パラシュラーマ
力を持った武人(クシャトリア)が人々を苦しめるので成敗したという話

〇クリシュナ
インドを震撼させた王位継承問題から起きた大戦争を収めた英雄談と合体。一番人気!ヒンドゥー教の派によってはクリシュナが最高神となっているところもある

〇ブッダ
言わずと知れた仏教を開いた聖人。悪魔を殲滅するためにヴィシュヌがブッダとして生まれたという話

〇カルキ
宇宙の終わりに翼の生えた馬と一緒に出現して、宇宙を更新するという話。

ヴィシュヌと他の宗教

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不明諸尊図像鈔 九 (Shoson Zuzōshō 9), パブリック・ドメイン, リンクによる

バラモン教やヒンドゥー教以外にもヴィシュヌは登場します。「シーク教」では「ゴラク」という名前智恵や言葉を与えてくれる「グル(指導者)」とされていますよ。本当の神様は記述できないということらしいですね。やはり化身をもっていて、クリシュナやブッダも含まれているそうですよ。

仏教とヴィシュヌ

仏教国のスリランカでは仏教の守護神としてだけでなく、国の守護神としても信仰されていますよ。仏殿の中や仏殿の外にヴィシュヌを祀るお堂が建てられているそうですね。タイ・カンボジア・ベトナムなどをはじめとした上座仏教が盛んな東南アジアでは、5世紀あたりに作られたという4本の腕をもつヴィシュヌの像がみつかっていますよ。「青い蓮の色をした者」という意味の「ウタパラ・ヴァルナ」とも呼ばれているそうですね。

大乗仏教では「那羅延天(ならえてん)」と表記されてヴィシュヌの異名「ナーラーヤナ」を漢字にしたものや、「無量義経」などでは「毘紐天」という名前で登場していますね。敦煌の壁画にもガルーダに乗ったヴィシュヌの絵が描かれていますよ。

 

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紫蘭