教養歴史

息子を毒殺しようとした鬼母か、愛情深い母か…伊達政宗の母・義姫の素顔

独眼竜として知られる戦国武将・伊達政宗の母・義姫(よしひめ)については、息子・政宗を疎んじ、毒殺しようとしたというイメージを強く抱いている方も多いと思います。しかし、義姫は本当に鬼のような母親だったのでしょうか。政宗に愛情など抱いていなかったのか、それとも…?今回は、義姫の生涯をご紹介しつつ、彼女がどんな女性だったのかについて見ていきたいと思います。

伊達政宗の母として

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義姫は、出羽(でわ/山形県・秋田県)の最上(もがみ)氏から政略結婚で伊達氏に嫁ぎ、そこで政宗などの子供たちをもうけました。しかし、実家の最上氏と嫁ぎ先の伊達氏には争いが絶えず、義姫は心をいためることになります。ただ、彼女はそこで行動を起こしたのです。彼女の力によって避けられた争いとはどんなものだったのか、見ていきましょう。

最上氏に生まれ、伊達輝宗に嫁ぐ

義姫が生まれたのは天文17(1547/1548)年と言われています。出羽の戦国武将・最上義守(もがみよしもり)の娘でした。兄は「羽州(うしゅう)の狐」との異名を持ち、策謀に長けた武将だった最上義光(もがみよしあき)です。2歳違いのこの兄妹はとても仲が良く、義姫が嫁いだ後も頻繁に手紙をやり取りしていたそうですよ。

永禄7(1564)年、義姫は、米沢を本拠地とする伊達輝宗(だててるむね)に嫁ぎました。

当時の伊達氏は、お家騒動となる天文の乱(てんぶんのらん)により家中が分裂し、それがようやく収まってきたところでした。しかし、最上氏は乱に勝利した側ではなく敗北した方に加担しており、家督を継いだ輝宗にとっては対立関係にあったのです。そこに政略結婚の駒として送り込まれた義姫の立場が難しいものだったことは、おわかりいただけるかと思います。

とはいえ、義姫と輝宗の仲は悪くなかったようで、二男二女が生まれました。永禄10(1567)年に生まれた長男・梵天丸(ぼんてんまる)が、後の政宗となります。

実家と嫁ぎ先の争い

兄・最上義光と仲が良い義姫にとっては、実家で兄と父が争う状況だったことが心痛の種でした。しかも、ここに夫・輝宗が介入し、父方についたのです。

しかし、義姫は男たちの争いにただ心を痛めるだけのか弱い女性ではありませんでした。

天正6(1578)年、最上氏の縁戚にありながら、最上義光と対立した武将と夫・輝宗が連合し、義光のところに攻め込むという事態が発生しました。

夫と兄の争いは何としても止めなくてはいけない…と思った義姫は、何と、戦場に輿で乗り込んだのです。

兄と夫の争いを止める

驚く武将たちを尻目に、義姫は輿から降り立つと、夫と兄に向かって「義兄弟で戦とは何たることでしょうか」と語りかけます。

そして、「戦を止めて兵を引かないとおっしゃるなら、どうぞこの場で私をお切りください」と言い放ったのでした。

これには、輝宗も義光もびっくり。同時に、両者とも戦をやめるきっかけを探していたところだったため、義姫の言葉にこれ幸いと撤兵することになり、争いは避けられたのでした。

成長した息子・政宗との関わり

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義姫が生んだ長男・伊達政宗は、幼いころに疱瘡を患い、右目を失明するなど容姿にコンプレックスを抱くようになってしまいます。ただ、大人になるにつれそれが改善され、武将として立派に成長していきました。しかし、一説には、義姫と政宗の関係について、毒殺未遂説がささやかれるなど、何とも不穏な噂が付きまといます。真相はどうだったのか、ここで見ていきましょう。

夫の死、そして息子に疑念を抱く?

天正12(1584)年、成長した政宗が家督を継ぎましたが、その直後に輝宗が二本松義継(にほんまつよしつぐ)に拉致され、政宗がやむなく敵ごと輝宗を討つという事件が発生しました。

この悲劇に際しては諸説あり、政宗が意図的に輝宗を殺したという説もあります。義姫もまた、その説と同様、政宗による謀略ではないかと疑ったとも言われていますね。

そして、政宗は義姫の実家・最上氏やそれに加担する一派との争いに身を投じ、義姫の気を揉ませる状況を続けていくことになったのでした。

またもや戦場に輿で乗り付ける

天正16(1588)年、大崎氏の内紛に介入した政宗と最上義光との間で大崎合戦(おおさきかっせん)が勃発します。以前は夫・輝宗と兄との間で起きた合戦に介入した義姫は、今回も再び戦場に輿で乗り付けました。そして、両者の和睦を仲介したのです。

その後の調停がうまくいかないときにも、兄・義光に泣きつかれた義姫が動いたとも言われており、義姫が交渉役としてただの女性以上の働きをしたことがわかります。

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