ケインズ経済学は欧州では認められていなかった
ケインズは、新しい経済理論である有効需要政策を唱えていました。しかし、無理に政府が積極的に市場に介入するのは、経済をかえって悪化させるというアダム・スミスの国富論以来の伝統的な古典経済学に対する異端理論と見られていたのです。
最初のケインズ理論を実践した政治家のルーズベルト大統領
しかし、アメリカの大統領候補のルーズベルト氏は、ケインズの有効需要政策を評価し、アメリカで発生した大恐慌を解決するには有効需要政策しかないと気づいたのです。当時のアメリカには、不景気で、町には失業者が溢れており、職を求める人たちがたくさんいました。彼らは、フーバー大統領の無策を批判して、ついにルーズベルトは大統領選挙に当選したのです。さっそく、ルーズベルト大統領はニューディール政策を実行に移します。
グラス・スティーガル法による金融規制
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まず、ブラックマンデーが生じた原因は、金融機関が自由にさまざまな事業に参入でき、他の事業の顧客に金融投資を自由に売り込めたからだと判断します。そのため、1933年に、グラス・スティーガル法という銀行などの金融機関が同時にいくつもの事業をすることを禁じる法律に署名しました。これによって、銀行などは、証券会社や生命保険会社などを子会社に持つことはできず、顧客も紹介しあうことができなくなったのです。このグラス・スティーガル法は、一部は1980年に無効となり、さらに1999年まではグループ化の禁止が維持されました。そのため、アメリカの銀行は他の金融事業には参入できなかったのです。
これが、日本のバブル崩壊の波及を食い止めたとも言われています。
ケインズの有効需要政策を象徴したテネシー川流域開発公社
ケインズ理論の中心である有効需要理論を、最も実践的に実施された政策がこの「テネシー川流域開発公社」です。町に溢れた失業者たちに職を与えて、消費を高めようという政策でした。氾濫を繰返し、開発が進んでいなかったテネシー川流域の治水工事のために、連邦政府主導で開発公社を設立して、大規模な予算を設けて、失業者を吸収したのです。
そのため、大きな失業対策にはなり、ニューディール政策の人気を高め、ルーズベルト大統領の再選を可能にしました。
その他のニューディール政策
ルーズベルト大統領のニューディール政策には、その他にも、
・民間資源保存局による大規模雇用
・全国産業復興法による労働時間の短縮や超越論的賃金の確保(賃金のシェア)
・農業調整法による生産量の調整
・ワグナー法(全国労働関係法)による労働者の権利拡大
などいろいろな政策が行われています。
ニューディール政策の効果は大きかったのか?
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ルーズベルト大統領のニューディール政策では、連邦政府としてさまざまな景気対策が打たれましたが、それらが景気対策として本当に効果があったのかは、賛否両論があります。ケインジアンと呼ばれる近代経済学支持者からはその効果が大きいと言われているのです。しかし、マネタリスト(新古典経済学者)からは、国家の財政赤字を拡大させたことにより、有効需要政策そのものが行き詰まったという意見もあります。