大納言大伴御行→「龍の首の珠(たま)」
伝説上の生き物の代表格である龍。その龍の首には、5色に光る珠がついているそうです。大伴御行も最初は、自分で見つけようとせず、家来にその探索を依頼します。彼は家来に、お金や食糧など探索にあたって必要なものを与えました。しかし家来たちは、「そんなものを取ってくるのは無理なので、手に入れるまでは帰ってくるなと言うし、このお金で自分たちの好きなとこへ行ってしまおう」となります。大伴御行はかぐや姫を迎えるために先妻と別れて一人で暮らしていましたが、待てど暮らせど家来が来ないので、自分で船に乗って宝物探しへ。そこで大嵐にあったうえ病気となり、両目がスモモのようになってしまいました。
阿倍御主人と同じく、大伴御行も飛鳥時代における実在の人物がモデルです。万葉集には彼の和歌が残っているんですよ。
中納言石上麻呂→「燕の子安貝」
子安貝というのはそもそも、海で取れるタカラガイ科の貝を指しています。「子安」の名の通り、安産祈願のお守りとしても親しまれていました。本来の子安貝なら海でわりと簡単に手に入るものですが、かぐや姫が求めたのは「燕が産んだ子安貝」。普通に考えて鳥が貝を産まないでしょうから、一気に難しくなりますね。石上麻呂は、大炊寮(おおいりょう、またはおおいのつかさ。食事や供物などを司る場所)に、燕の巣があることを耳にします。自ら高いところへ登り、なんとかその子安貝らしいものを手に入れたかに思いましたが、石上麻呂は手違いで地面に落下。手を見てみるとそこにあったのは燕のフンでした……。それで気落ちしてしまった彼は病床に伏せることになり、かぐや姫から和歌が届きますが、それに返事をしてすぐに亡くなってしまいます。これにはかぐや姫も少しかわいそうに思ったようです。
石上麻呂も前者2人と同じくモデルがいます。やはり彼も万葉集にその歌を残しており、太政官のトップにもあった人物のようです。
キーワード4「かぐや姫が地上に来た理由」 なぜ月の人間が地上へ降ろされたのか
「かぐや姫」という物語を読んでいて、疑問に感じることがありませんか?そう、「かぐや姫が地上に来た理由」というのが語られていないのです。『竹取物語』内では、その理由に少し触れられています。かぐや姫は月の地で罪を犯し、地球に流罪とされたのです。月からしたら、地球はけがれた場所だそう。どんな罪か、というのも気になるところなのですが、具体的な罪名はいっさい語られていません。各々の解釈に任せられている状態です。平安時代当時の「流刑」に当てはめて考えて良いのであれば、かなりの重罪と考えられます。月からの迎えが来た時点で罪は償われているようですので、かぐや姫が地上でおこなった何かしらの行動が償いとなっているのでしょうか。それか、ただ単に刑期が終わったということなのかもしれません。
キーワード5「海外のかぐや姫!?」 似た話が中国に
日本の昔話として、「かぐや姫」を通して長く親しまれている『竹取物語』。実は、海外によく似たストーリーの物語があるのをご存知でしょうか?その物語の名前は、「斑竹姑娘(はんちくこしょう)」。中国のアバ・チベット族に伝えられていたという物語です。竹の中から女の子が産まれる点や、求婚に対して難題で返す点など『竹取物語』との共通点がたくさんあります。かぐや姫を見つけたおじいさんに当たるのがランパという少年で、ラストは彼と結婚。ハッピーエンドですね。
存在が明らかになったとき、この民話を元にして『竹取物語』が成立したのでは?と注目された「斑竹姑娘」。しかし逆に『竹取物語』の方をモデルに民話が作られたという見方もあり、原典となったかは微妙なところのようです。
物語はこれからも伝えられていく
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平安時代は、今からおよそ1000年以上もの昔。物語が書かれた紙は劣化してしまいますから、本当の最初に書かれた『竹取物語』というのは失われてしまっています。しかし、人々はその物語に魅力を感じ、「写本」という形で現在まで『竹取物語』を残してくれました。今残っている最古の写本は、室町時代のものと言われています。人々が伝えようとした物語は、『竹取物語』に限りません。『源氏物語』、『平家物語』……、そのほかにもさまざまな物語が残っていますよね。現代の小説を読むのもとっても楽しいですが、たまには古くから愛される物語にも目を向けてみてはいかがでしょうか。きっと、今までその物語が伝えられてきた理由というのが感じられるはずです。
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