平安時代日本の歴史

考察の余地あり、謎多き『竹取物語』を5つのキーワードで解説!

キーワード2「元ネタ」 もとになった話がある

「かぐや姫」のもとになった話が、『竹取物語』。突き詰めていけば、それ以前の元ネタとなったであろう話にもさかのぼることが可能です。説話(昔話などの口で伝わる物語)はその内容によって、さまざまなタイプに分類されます。たとえば、「異常出生譚」(かぐや姫のほかに、桃太郎などもこれに当たります)や、「求婚難題説話」など。『竹取物語』はこれらをはじめとした説話型を大変多く含んでいるのです。

その含まれたなかの一つが「羽衣伝説」。この説話は日本中に存在するもので、『竹取物語』でキーアイテムとなった「羽衣」が登場します。伝わる土地によって差異があるのですが、だいたいは「水浴びをする天女に惚れてしまった男が、羽衣を隠してしまい、天女はしばらく男とともに生活するがやがて羽衣を見つけて天上に帰る」というストーリーです。説話として残る「羽衣伝説」と、文章として残る『竹取物語』に共通するアイテムが出てくることに、私はすごくロマンを感じてしまいます。ちなみに、『丹後国風土記』にある「羽衣伝説」では男の役が老夫婦に代わっているのです。養女となった天女は老夫婦に富をもたらします。竹の中で発見されないですし、ほかにいろいろ違うところもありますが、共通点が感じられますね。

キーワード3「入手困難な宝物」 かぐや姫が求婚者に依頼した宝物

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5人から結婚を迫られた際に、「これを持ってきてくれれば、結婚してもいいわ」と言ったかぐや姫。普通では手に入らないものであり、求婚者たちは誤魔化そうとしたり、努力したが手に入らなかったりで失敗しました。では、その宝物について詳しく見ていきましょう。

石作皇子→「仏の御石(みいし)の鉢」

釈迦が使用したという鉢。光を放つらしいです。本気で見つけようとすればインド(天竺)まで行かなければならないのですが、石作皇子は日本国内、大和国の山寺にあった鉢で誤魔化そうとします。かぐや姫は鉢が光っていないことを歌で指摘。石作皇子も和歌で冗談まじりに返しますが、かぐや姫が振り向いてくれることはありませんでした。彼のモデルが誰であるかはっきりしておらず、架空の人物か、歴史に残っていない人物であると言われています。

白山にあへば光も失するかと鉢を捨てても頼まるるかな

ー石作皇子

車持皇子→「蓬莱(ほうらい)の玉の枝」

根っこが銀で、茎は金、実が真珠となっている木の枝のこと。東方の海上に存在するとのことです。車持皇子も石作皇子と同じく、誤魔化そうと考えました。綾部内麻呂などの職人たちに、偽物の「蓬莱の玉の枝」を作らせてしまったのです。良い出来だったのでかぐや姫もおじいさんも信じそうになりますが、なんと職人たちから「枝を作ったのにお金が払われない!」との声が上がりました。これで偽物ということが発覚し、かぐや姫は突き返します。職人たちにはかぐや姫から褒美がありました。恥をかくことになった車持皇子も、モデルははっきりしていません。

右大臣阿倍御主人→「火鼠の裘(かわごろも)」

火鼠(かそ、ひねずみ、ひのねずみ)は中国の怪物。火山で燃える木の中や、野火の中に住むと言われています。その火鼠の毛によって織られた布は、火をつけても燃えることがないそうです。彼がどう「火鼠の裘」を手に入れようとしたかというと、人に買ってこさせるというやり方でした。彼は、唐の商人に「皮衣」を依頼したのです。自分でやらない、というのは少しずるい気もしますが、手段の一つではありますね。手に入れた「皮衣」をかぐや姫に見せに行きましたが、彼女はそれに火をつけます。すると、本物であれば燃えないはずなのにあっさり燃えてしまいました。
阿倍御主人には、モデルがいます。名前もそのままの阿倍御主人という人物で、飛鳥時代の有力な氏族です。太政官のトップにまで登りつめました。

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