豆知識・雑学

「おはぎ」と「ぼたもち」違いは?おいしい和菓子の謎を探る!

あなたは「おはぎ」、「ぼたもち」と聞いてどんなイメージを浮かべますか?おそらくどちらについても、甘いあんこに包まれたお米の食べ物を思い浮かべるでしょう。ケーキなどの洋菓子もおいしいですが、和菓子の優しい甘さも私は大好きです。そのイメージされた二つの外見に大きな違いはないのではないでしょうか。今回は、そんな「おはぎ」と「ぼたもち」について探っていきたいと思います。

「おはぎ」、「ぼたもち」、成立したのはいつなのか

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甘さが魅力である2つの和菓子にかかせない材料があんこの元、小豆です。日本の主な生産地は北海道で、なんとその生産量は4分の3を占めているというから驚き。その小豆、今では当たり前にあるものですが、日本にはいつごろからあるものなのでしょうか?また、世界においてもいつごろから栽培されはじめたのでしょう。まずは、その伝来から見ていきます。

小豆の原産ってどこ?名前の由来は?

中国が原産とも考えらえている小豆。しかし、日本を含む広い地域で小豆の野生種が見つかっています。これは小豆の祖先にあたるものと考えられ、栽培は各地で独自にはじまったものである可能性も出てきているのです。

また、小豆(あずき)の名前の由来はなんでしょうか。諸説ありますが例をあげると、貝原益軒(江戸時代の儒学者)著『大和本草』に、その由来が記されています。それによれば、あずきの「あ」は「赤」、「ずき」は「溶ける」ことを意味しているそう。『古事記』に登場するオオゲツヒメの死体からは小豆が発生しており、小豆は少なくとも『古事記』の時代には存在していたことが分かります。

「おはぎ」、「ぼたもち」はいつからある?

「おはぎ」、「ぼたもち」というよりも、「あんこでもち米を包んだ菓子」という視点で成立を見ていきたいと思います。ただ、これについてはっきり「いつからできたもの」という明確な成立年代は分かっていません。おそらくかなり古い時代からあったとは思われます。あんこのことを、「餡(あん)」とも言いますね。これはもともと、甘い「あん」だけを指すものではありません。中国から「餡」が伝わってきたときは、肉や野菜がその主なものだったそうです。今でも、肉まんなどの中身を餡と言いますもんね。そこから肉などの代用として、「あんこ」というものが生まれてきたとも考えらています。

あの有名な平安時代の『源氏物語』には、「亥の子(いのこ)餅」という菓子が登場。これは形状こそ「おはぎ」などとは違っていたかもしれないのですが、食材に「餅」と「小豆」が使われています。昔から、「餅」と「小豆」の組み合わせは鉄板だったのですね。

「おはぎ」、「ぼたもち」に違いはあるのか

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「おはぎ」と「ぼたもち」はどちらも、お彼岸やお盆の時期に食べるお供え物のお菓子です。私は好物なので、その時期に限らず食べますが……。

日本古来からお餅はごちそうであり、神事にかかせないものでもありました。「お米」が良く収穫できるように、「お米」自体が豊穣のお祈りに使われていたのですね。また、「小豆」の色は「赤」。おめでたい色であると同時に、「魔除け」の色としての意味もあったのです。この二つの食材が使われた「おはぎ」と「ぼたもち」は邪気を払うことができるので、お彼岸などに打ってつけのお供え物ということが分かりますね。次からはいよいよ「おはぎ」と「ぼたもち」の違いについて本格的に見ていきます。

季節による呼び名の違い

一説によると、「おはぎ」の語源は「萩(はぎ)」で、「ぼたもち」の語源は「牡丹(ぼたん)」。どちらも植物、それもお花です。萩は夏から秋にかけて咲き、牡丹は春に咲く。たしかに、萩の細かいピンク色の花が咲く様子は小豆がたくさん付いているように見えなくもないですし、牡丹の花の形が「おはぎ」に見えないこともないです。そこから、春の彼岸に食べる「牡丹餅」を「ぼたもち」、秋の彼岸に食べる「萩餅」を「お萩」と言うようになったという説があります。「牡丹の花」は大きいので、「ぼたもち」の方が大きい、ということもあるそう。季節感が感じられる、素敵な説ですね。

しかし地域によってはどちらの彼岸に食べるものについても同じ呼び名を使っていた、ということもありますので、この説が絶対に当てはまるというわけでもなさそうです。

春と秋以外の呼び名があった!?

上記で、春のものを「ぼたもち」、秋のものを「おはぎ」という説を紹介しました。そうくると、夏に食べるものと冬に食べるものにも呼称が欲しいですよね。実はあるのです。

夏の呼び名が「夜船(よふね)」。中に入っているお米。これは一般的な「餅」と違って、音を出さずに(ぺったんぺったんせずに)作るものです。半分形が残ったこのお米の状態を、「はんごろし」と言います。餅をつく音がせず、いつ作ったのか分からないことから、「つきしらず」。夜につく船も、いつ着いたか分からないので「着きしらず」。こんな言葉遊びから生まれた言葉です。そして冬の呼び名は「北窓(きたまど)」。同じく「つきしらず」から来たものなのですが、こちらは「月しらず」。北の窓から月は見えないという言葉遊びです。日本語はクイズみたいなことがたくさんできて面白いですね。

その他にも説がいろいろありますが……

呼び名の違いは季節によるものという説を紹介しましたが、まだまだ説がたくさんあります。たとえば、原材料の違い。中に入ったお米が、「もち米」であれば「ぼたもち」。「うるち米」(もちもちしてない普段食べるお米)であれば「おはぎ」。「粒あん」と「こしあん」の違い、「あんこ」と「きな粉」の違い……。また、「おはぎ」は女性が使う言葉だったという説なんてのもあります。

昔は、もしかしたら明確な違いがあったのかもしれません。しかし今では「おはぎ」と「ぼたもち」はほぼ同じ意味になっていますし、これから時代が進むにつれて更に区別があいまいになっていく可能性もあります。

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