ヨーロッパの歴史

5分でわかる「資本主義」!現代社会を作り上げた資本主義の歴史をわかりやすく解説

ソ連の崩壊は共産主義の敗北か

この東西冷戦は、1989年に、マルタ会議でアメリカのブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が会談して、東西冷戦を終わらせるまで続きました。そして、ソ連は1991年に連邦が崩壊し、新たな自由主義国のロシアに生まれ変わったのです。

これによって、マルクス以来言われてきた共産主義革命は、敗北し、資本主義の勝利に終わったと言われています。しかし、本当に資本主義は共産主義、社会主義(私有財産を認めない計画経済)に勝ったのでしょうか。

マルクスが思い描いた資本主義は、この200年間に大きく変貌しており、資本主義社会には多くの中間所得層と呼ばれる労働者層が生まれています。彼らには搾取されているという意識はありません。それは、労働組合の組織率が大きく下がっていることからも明らかです。また、悲惨な労働環境も大きく環境整備が進んでいます。最近では、過酷な労働を強いる企業は、ブラック企業と呼ばれて社会批判を受けることになっているのです。

どちらが勝ったとは言えない

従って、すでにマルクスの思っていた資本主義の弊害はすでになくなっており、革命ではなく、別の形で解決されていると言えます。また、計画経済の良いところは、予算案という形などで取り入れられてもいるのです。それは、資本主義社会が、共産主義社会に勝ったというよりも、資本主義の持っていた歪さを変えさせたという面で、資本主義は負けたのかも知れません。どちらが勝ったと言うことは言えないのです。

共産国の資本主義の実験_鄧小平(とうしょうへい)

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また、残った中国などの共産主義国でも、中国の鄧小平以来、政治は共産主義を残して、経済には資本主義、すなわち市場主義を持ち込むことを認めることになります。その結果、中国では近年、大きく経済が発展しているのです。政治的に共産主義を残すため、市民に対する自由主義にはかなりの制約が残る形ですが、国家企業は少なくなり、株式市場で資本を集める企業が多くを占めるようになりました。競争原理も働いているのです。そのために、現在の中国では格差問題も生じています。

資本主義によって人類の失ったもの

ルネサンス以来、私たち人間は、自由主義というパンドラの箱を開け、科学技術をはじめ、近代文明を大きく発展させています。その原動力になったものが資本主義であったと言えるのです。多くの中間所得層を生み、豊かさを享受できる人が増えています。

しかし、その自由主義と資本主義によって、私たち人類が失ったものも少なくありません。自由主義は、本来、他の人への思いやり、配慮の上に成り立つものですが、最近では、自分さえよければよいという利己主義になっている面が強まっています。いじめなどには、その傾向が強く出ていますし、家庭でも子供の虐待などが生まれているのです。社会人としての常識が薄れて来ています。それは、個人だけでなく、最近の欧米における極右勢力が台頭にも表れているのです。アメリカはアメリカ第一主義をかかげ、弱者、弱い国への思いやりがなくなっています。

これは、明らかに人間社会の後退と言えるものです。すなわち、資本主義と自由主義は、人類にとって諸刃の刃となっていると言えます。

資本主義は私たちを幸せにするのか_歴史を振り返って

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今現在、私たちは豊かな資本主義社会の恩恵を受けていますが、これが永遠に続くかどうかはわからないのです。現在の世界は、多くの対立を生じさせており、その背景には資本主義特有の利己主義的な面が大きく働いています。いつ大規模な戦争が生じてもおかしくない状況になっているのです。原爆などの大量破壊兵器が開発されている現代では、大規模な戦争は、地球そのものさえ破壊する可能性さえも持っています。

また、資本主義が経済第一主義に偏っているため、地球環境は大きく痛めつけられており、温暖化は止まりません。最近では、新たにマイクロプラスティックが海洋のかなりの部分を占めるようになって問題となっています。

どちらも、今後の私たちの社会を破壊する可能性を秘めており、現在の豊かな資本主義社会がこのまま続いていけるかどうかはわからないのです。

資本主義は万能ではない

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現代社会には資本主義は深く根付いており、これを否定することはできなくなっています。しかし、どこかで私たちは、この資本主義社会を見直して見る機会を持つべきなのかも知れません。人類が失ったものは取り戻すことはできませんが、資本主義、自由主義は万能ではないことを認識することも必要です。

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