イギリスヨーロッパの歴史

ダーウィン「進化論」とは?世紀の大発見に隠された葛藤と苦しみを紐解く

「進化論」を悪用した資本家たち

時に進化論は、思わぬ方へ発展することもありました。「社会ダーウィニズム」、環境に適した者が生き残っていくという適者生存の理論を、社会に単純に当てはめた思想です。

資本家たちは、力のある生き物が生き残れるのと同じように、最も効率的な企業が市場を独占するのは当然だと考えました。この思想は、弱い立場の者への社会福祉を否定することにもつながります。社会福祉を充実させると、本来淘汰されるべき企業や個人が生き残り、経済や社会に悪い影響を与え、社会全体が弱くなってしまうという主張に、ダーウィンの理論がつかわれてしまいました。

「進化論」を悪用した強い立場のものたち

さらに、進化論は強者に都合よくつかわれていきます。力のある者がそうでない者に打ち勝つのは自然の摂理だと、白人がアジアやアフリカの先住民を支配することを正当化するために使ったり、障害のある者を環境に適応できない「劣った生き物」とみなす思想も生まれてしまいました。これを実践したのがナチスドイツです。障害のある者や精神疾患のある者、そしてユダヤ人などの少数民族を、皆殺しにしようとしました。

しかし、これらはダーウィンの理論づけた「自然選択」の考え方とは異なります。本来の「自然選択」は、「優れているか、劣っているか」の問題ではなく、まわりの環境に適しているかどうかで生き残るものが決まるのです。人間が同じ人間の優劣を判断し、劣ったものを排除する思想は、ダーウィンの進化論には含まれていないにも関わらず、強い立場にいる人たちが、悪事を正当化するために「進化論」を利用することが往々にしてありました。

「不変ではない」からこそ考えなければならない

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旧約聖書にかかれた人間は、その他の動物とは一線を画す存在で、それを多くの人が信じていました。ダーウィンの「進化論」はそういったキリスト教の教えを根底から揺るがします。そして生き物や世の中が「不変ではない」ということ、人間は特別ではなく、ほかの動物と同じ自然からスタートし、地上のあらゆる生物と無条件に結びついているという新たな価値観をもたらしたのです。人間のあらゆる活動は、本来ならば長い時間をかけて変化していくはずの地球や生き物を、きわめて短期間に変えてしまうおそれがあります。しかし、同じ自然から誕生した生き物である人間が、地球やそこに息づくほかの生き物、もちろん同じ人間に対しても、何をすべきか、ということを考え直す…そんな大切なきっかけを与えてくれた人、それが、ダーウィンなのでした。

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