その他の国の歴史ヨーロッパ

やっぱりすごい未完の世界遺産「サグラダ・ファミリア」歴史や見どころを解説!

旅行代理店や雑誌で行われる「行ってみたい世界遺産アンケート」などでも必ず上位に食い込む「サグラダ・ファミリア」。スペインのバルセロナにあるカトリック教会ですが、着工から100年以上経過した今でもまだ工事中という、他に類を見ない世界遺産です。なぜまだ工事中なのか、どうしてそんなにも多くの人を惹きつけるのか……今回はそんな「サグラダ・ファミリア」にスポットをあて、歴史や見どころなどたっぷりとご紹介してまいります。

これだけは知っておきたい!「サグラダ・ファミリア」の基礎知識

image by iStockphoto

トウモロコシのような形をした塔がニョキニョキと伸びている、細かい彫刻が施された奇抜で不思議な建物……。サグラダ・ファミリアと聞くと、そんな姿を想像する人も少なくないでしょう。どんな建物なのか、まずは基本情報について詳しく解説します。

2026年完成予定の「サグラダ・ファミリア」とは

「サクラダ・ファミリア」と読んでしまう人もいますが、正確には「サグラダ・ファミリア(Sagrada Familia)」。スペイン東部のカタルーニャ地方のカタルーニャ語で「聖家族贖罪教会」という意味を持つ言葉ですが、日本語では「聖家族教会」と訳されることが多いです。

贖罪教会(信者の喜捨で建てる教会)ということで、建設にかかる費用は信者の寄付によってまかなわれてきました。そのため、資金が不足し工事が滞ることもたびたびあったのだそうです。しかし1990年頃から徐々に注目され始め、世界中から注目されるようになり、拝観者が増えて収入も増えていきました。

資金だけでなく、建築設計図の複雑さも、歳月を費やす原因となっていました。当初は「300年はかかるであろう」といわれていましたが、建築技術の向上やITの導入などにより、期間は大幅に短縮。完成の目処が立つようになり、建築家アントニオ・ガウディの没後100年にあたる2026年の完成を目指して作業が進んでいます。

【サグラダ・ファミリアの基本情報】
場所: スペイン・バルセロナ
着工: 1882年3月19日
竣工: 2026年(予定)
高さ: 172m(予定)
世界遺産登録名: アントニ・ガウディの作品群

サグラダ・ファミリアの歩み

サグラダ・ファミリアというとアントニオ・ガウディを思い浮かべる人が多いと思いますが、サグラダ・ファミリアの設計者はガウディだけではありません。ガウディは二代目で、他にもこの教会の設計に関わった建築家は数名いるのです。

サグラダ・ファミリアは民間のカトリック団体「サン・ホセ教会」が建築を計画し、建築家フランシスコ・ビリャールが最初の設計者として建築に携わりました。しかし教会と意見が合わず、ビリャールはわずか1年ほどで辞任。後任としてやってきたのが当時31歳の若き建築家アントニオ・ガウディでした。以後、1926年にこの世を去るまで、ガウディはずっと、サグラダ・ファミリアの建築に取り組み続けたのです。

ガウディの死後も、その意思は多くの人々に受け継がれていきます。しかしスペイン内戦の影響で、ガウディが残した図面や模型などの資料の多くが失われてしまいました。一時は建設続行も危ぶまれたそうですが、わずかに残された資料を頼りに、現場で作業に携わる職人たちの手によって作業は継続。120年余の歳月を経て、間もなくその全貌が明らかになろうとしています。

建築家アントニオ・ガウディとサグラダ・ファミリア

ガウディがサグラダ・ファミリアの建築を引き継いだときは、ビリャールが考案した古典的なゴシック様式の建築が行われていました。現在でも、土台や地下礼拝堂などに一部、この当時の痕跡が残されているそうです。

ガウディは大幅な変更を加え、全く新しい設計プランをもとにした大聖堂を建てる計画を打ち立てました。

4人の福音記者と16人の使徒を象徴する16本の塔。そしてその中央に、聖母マリアとキリストを象徴する2本の塔……。合計18本の塔がそびえ、キリストの誕生・受難・栄光を表す2つのファザード(正面・入口・門)を持つ大聖堂。それが、ガウディが描いたサグラダ・ファミリアの全貌でした。中央の2本の塔の高さはおよそ172m、他の塔も100mを超える高さにする計画で作業は進められましたが、ガウディ着任の1883年から40年以上経過しても、建設できたのは18本の塔のうち4本だけという状況が続きます。

1926年6月、ガウディは教会に向かう途中で事故にあい、手当ての遅れから容態が悪化して突然逝去。志半ばにしてこの世を去ります。遺体はサグラダ・ファミリアに埋葬されているのだそうです。

建築中だけど観光名所~「サグラダ・ファミリア」の見どころとは

image by iStockphoto

これから建設される中央の塔の高さはおよそ172m。完成すればドイツのウルム大聖堂(高さ約162m)を抜いて、世界屈指の高さを誇る教会建築ということになります。完成したらどのような姿になるのでしょうか。バルセロナの中心地に建つ荘厳な雰囲気は、完成前も後も多くの人々を惹きつけるサグラダ・ファミリア。その見どころについて解説します。

ガウディが直接関わった「生誕のファサード」

朝日を浴びて輝く東側は、キリストの誕生を表す「生誕のファサード」と呼ばれています。褐色の石造りの入り口と4本の塔には細かい装飾が施され、どんな建築様式にも属さない唯一無二の印象的な佇まい。100年以上も前の時代にどうやってこのような建造物を形にしたのか、その迫力に思わず言葉を失います。

見上げると数多くの彫刻が施されており、建設中ではありますが既に長い歳月が経過しているため、石は様々な色合いに変色し独特の雰囲気に。建設と並行して修復作業も行われているのだそうです。

入り口から中に入ると、まるで森の中に迷い込んだかのようにたくさんの柱が聳え立ち、美しいステンドグラスを通して自然光が降り注ぎます。天井や祭壇にはギザギザとした独特の装飾が幾重にも重なり、まるで巨大な万華鏡の中に迷い込んだかのようです。

次のページを読む
1 2
Share: