小説・童話あらすじ

5分でわかる『吾輩は猫である』猫が人間を風刺する夏目漱石の処女小説のあらすじ、内容を解説!

吾輩は猫である。名前はまだ無い。

どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていたことだけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。

IMAGE

吾輩は猫である (新潮文庫) | 漱石, 夏目 |本 | 通販 | Amazon

Amazonで見る
Amazonで詳しく見る

3.『吾輩は猫である』の魅力

image by PIXTA / 50429683

ホトトギスの編集者高浜虚子の声掛けで、誕生した長編小説です。主人公は夏目漱石自身で、吾輩(猫)は飼い猫をモデルにし、夏目家の生活ぶりを独特の猫目線で滑稽に書いています。『吾輩は猫である』が売れたことで、猫を飼う人が増え、猫グッズが流行するなど一大ブームが起きたとか。それでは、『吾輩は猫である』を読む時に、知っておきたい魅力をご紹介しましょう。

3-1登場人物は面白い名前

登場する人物は、各自が個性豊かで、ユニークなキャラクター揃いです。しかも緩やかな温かみもあり、ほっこりとした癒しを与えてくれます。

・吾輩…珍野家の知的な飼い猫。自らを「吾輩」と呼び、諷刺的な語り口調で物語を進める進行係。

・珍野苦沙弥(ちんのくしゃみ)…胃弱な英語教師の主人公。ジャム好きで馬鹿野郎が口癖。多趣味ですが、身につかないのが玉に瑕。

・迷亭(めいてい)…美学者(大塚保治がモデル?)で苦沙弥の友人。流暢に語り、人を担ぐのが趣味。

・水島寒月(みずしまかんげつ)…苦沙弥の旧門下生。理学者で色男。

・おさん…吾輩が好きになれない、珍野家の下女。

3-2猫目線で書かれたユニークさ

猫目線で苦沙弥たちインテリどもを、痛烈に風刺する語りがこの本の面白さです。最近では文明批判の書として読むのが、『猫』論の定説だとか。猫が独特の目線で登場人物を観察し批判しながら進行させ、笑いや驚き、悲しみや感動、深い話や切ない話など、11章約540ページの中には魅力がいっぱい詰まっています。物語に期待を膨らませながら読み進めると、吾輩に突然盲点を突かれ「ハッ」とする面白さも魅力でしょう。

3-3漱石が仕掛けた笑いや驚き

明治時代の人々の生活や堅物の主人公が脱俗した生き方、高等遊民と称されたインテリたちのおしゃべりを、人間とは違う目線で垣間見られます。猫自身が高等遊民のように「吾輩は猫である」と登場する書き出しも斬新ですよね!

身のこなしの軽やかな猫が、よその家や銭湯などに入り込み猫目線で紹介する描写は、時に人間の問題点やそれに対する漱石なりの考え方が見え隠れするのです。最初は人間たちを観察するのですが、次第に苦沙弥に「猫のくせに…」と何度も語らせます。これは、読者と吾輩(猫)が、同じ視点に立ったことを意識させる仕掛けなのです

エジプトやギリシャ、フランスやドイツ、イギリスなど、西洋へ留学していた漱石ならではの蘊蓄が所々に登場します。後半の朝食のシーンでは、マナーに関する猫なりの持論を述べるのです。その中に、日本の猫だからと愛国心も少しあると述べちゃうシーンも印象的!

次のページを読む
1 2 3 4
Share: