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HSPの若者へーゲーテ「若きウェルテルの悩み」の魅力を解説!

文豪ゲーテの傑作「若きウェルテルの悩み」。この本、最近名前を知られだしたHSP(Highly Sensitive Person)の人に全力でオススメしたい!10代~20代前半の「敏感すぎる」みなさん、苦しくなって死にたくなったら自殺サイト検索する前にとりあえず「ウェルテル」読みましょう。10代の頃から「ウェルテル」を読み返すこと数十回、アラサーの筆者が「世界一有名な自殺の話」を読むことで楽になるその理由を、愛を込めて解説します。

「ウェルテル」をHSPに全力でオススメしたい理由

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HSP……最近聞くようになった言葉だけど、そもそも一体何?となったあなたのために、そして自分がHSPじゃないかと考えているあなたに、まずは事前知識を。筆者は10代の頃にエレイン・N・アーロン博士の著述を読んでHSPのチェックシートをオールクリア。精神的・身体的、外面的・内面的なあらゆるストレスに敏感な体を抱えつつ生活していますが、そんなHSPの生きている世界とはいかに?解説していきましょう。

〈そもそも……〉HSPって何?全人口の8割とは違う世界を生きる、世の中に2割しかいない少数派の体質

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Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン、HSP)とは、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した学説。直訳すると「めっちゃ敏感な人」。日本語の訳語は固定していませんが「敏感な人」「敏感さん」「高度な感覚処理感受性の持ち主」などと呼ばれます。筆者的にどれもしっくりこないのでこの記事ではHSPに統一しますね。

HSPの判断基準は何項目にも渡り存在しますが、わかりやすい例を言いましょう。学生時代、教室に入って3秒で「室内の空気がいつ換気されたか・そもそもされていないかわかる」「窓辺の花がしおれているのをドアの前にいる時点で察知する」「先生が生理前でイラツイている」「クラスメイト全員がどういうテンションなのかおおむね感じ取る」一瞬でこれら全てを把握するのがHSPです。超能力者じゃありません、全人口の20人に1人程度存在するHSPはこのシチュエーションに「あるあるー!」となります。

どうです、生きづらそうでしょう。HSPはあらゆる刺激を過剰に受け止める傾向にあります。その一方で自然や人の善意を驚くほど繊細に感じ取り「今日は新緑がきれい」ということ1つとっても非常に喜びを持って受け止めるのです。また男女とも思慮深く思いやり深く、全体的に性善説ベースで生きている人が多いことも特徴ですよ。

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ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 (SB文庫)

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最近になって多くの体験記や専門書が出版されるようになってきました。筆者もあれこれ読んでいます。

HSP理解のために筆者がオススメしたいのはエレイン・N・アーロン博士自らが著した「ささいなことにもすぐ『動揺』してしまうあなたへ」。

学問的パイオニアが書いたものなので、おそらく多くのHSP本の中でも一番的を射ているかと思いますよ。

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さまよえる若いHSPだからこそ「ウェルテル」を読みたい理由

で、なんでゲーテの「ウェルテル」?それもよりによってHSPに……ご説明しましょう。「ウェルテル」はHSPの若者の感性あるあるの連続なのです。筆者は15歳で「ウェルテル」を初読。「こいつは、私なのか!」となりました。それほどウェルテルの感性・生き方、ひいては生きづらさは、HSPそのものです。

ウェルテル自身については後ほど詳しく論じますが、ヒロインとなるロッテ(シャルロッテ)もまたそHSP女性の典型的な姿。思慮深く、やさしく思いやりにあふれ、人や自然のことに気を配り、とにかく他人を喜ばせる善良な女性。男子垂涎の良妻賢母のモデルのようなあこがれの女性ですね。ちょっと親切なHSP女子が男子を勘違いさせて恋に落とす、の見本というような読み方もできます。

「若きウェルテルの悩み」は書簡体小説。あまりなじみのない用語ですが「ウェルテルが友人に宛てたお手紙を、ウェルテルの死後友人が編纂して公開した」という様式をとっています。だからこそ自由に赤裸々に恋する人・ロッテに関する一人称の語りがほとばしり出ているのです。

【あらすじ】「若きウェルテルの悩み」ってどんな作品なの?

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ドイツ史上最も偉大な大文豪・ゲーテ自身が「ウェルテル」に関して、晩年このようなことを述べています。『だれでも「若きウェルテルの悩み」が自分だけのために書かれたと思う時期が一生のうちになかったら、それは不幸なことだ』こう言ってのけるほどの自信作。一体どのようなものなのでしょう?本編のあらすじをさらっと紹介しつつ、いよいよHSPに捧げるこの書の解説に移っていきますね。

〈ネタバレ注意!〉若きウェルテルの悩み、あらすじ

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【ちょっとでもネタバレが嫌な方は注意!次の項へ飛ばすかブラウザバックしてください!】

物語は、ウェルテルの数十通に渡る手紙を、ウェルテルの死後、親友ウィルヘルムが編纂して公開したという形をとっています。故郷から新しい土地にやってきたウェルテル。彼はそこの舞踏会で美しく聡明な女性シャルロッテ(愛称ロッテ)に出会います。しかし彼女にはアルベルトという前途有為な婚約者がいました。最初から報われないとわかっているにもかかわらず、ウェルテルは彼女に恋するのです。

ワールハイムという美しい里で憩いの時を送るウェルテル。またロッテの住む館にて彼女の8人の弟妹たちと親しんで過ごします。ロッテのもとに足繁く通い、彼女と会話しともにいることで心の安らぎと生きがいを覚えるウェルテル。婚約者アルベルトはウェルテルをロッテの友人として親しく遇します。しかしウェルテルは友人知人たちの薦めで、公使(外交官)に付き従って他国へ行くこととなりました。

ウェルテルはそこで俗物たちの社会に触れ、自分の理解者がいない苦痛にさいなまれます。精神的なバランスがどんどん崩れていく彼を追いこむように、ロッテとアルベルトの正式な結婚の通知。ロッテを妻にという絶望的な叶えられない希望。すでに芽生えていた「自殺」の決心が彼を突き動かすのです……。

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「ウェルテル」の時代背景特徴について

ウェルテル自身は市民階級の中でも富裕層に属するインテリゲンチャ。教育を受け、ホメロスをギリシャ語で読み、自ら絵を描くなど教養ある人物です。そんな彼が暮らす世界はドイツの領邦国家の1国。この時代のドイツはとにかく貧乏、はっきり言ってヨーロッパの中では後進国でした。そのような描写は作品内にいくつも散見されます。そこを観察するのも本作を読む上での醍醐味。

自然を愛し、幼い子供や弱い立場の人を愛し、そして1人の女性を身も心も焦がさんばかりに愛したウェルテル。彼の書簡(手紙)の文章は感受性豊かな人間だからこそとらえられる世界のきらめきに満ちており、文豪の筆によって著されている詩情は圧巻です。

ちなみに日本で浸透している「ウェルテル」という呼び名は明治時代に訳された関係で実際の発音とは異なります。ドイツ語の音に忠実だと「ヴェルター」。「ヴェルターちゃう!日本人の心の中ではウェルテルや!」と、日本では今も「ウェルテル」呼びが続いていますが……個人的には、ウェルテルのほうが響きがカワイイので好きです。

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