足尾銅山の鉱毒汚染の科学的分析とその結果
足尾銅山の鉱毒汚染についての最初に科学的分析がおこなわれたのは、1972年に環境庁が足尾町に設置した二酸化硫黄(亜硫酸ガス)の濃度測定装置でした。その際に環境基準に適合していないと判定され、さらに1981年には足尾町の中才浄水場の排水からは基準値の2倍の銅が検出されています。
最初の測定がおこなわれた1972年に被害農民によって古河鉱業が提訴されました。それによって、1974年5月についに鉱毒事件の加害者として古河鉱業が認定され、被害農民との調停が成立しています。
現代でも大企業の無責任な公害は続いている
image by iStockphoto
四大公害訴訟や足尾銅山鉱毒事件後も、日本でも大企業による環境汚染、薬害はおこっています。現代でも、ミドリ十字の薬害肝炎事件、薬害エイズ事件など無責任な企業や行政の姿勢によって広がった例は数多いのです。
世界に目を向けても、ブラジルでは、大統領の指示で地球の二酸化炭素の最大の吸収場所になっているアマゾンの熱帯雨林の焼き払いが進行しています。あと十数年でアマゾンの熱帯雨林は姿を消し、原住民には新型コロナウイルスの危機が迫っているのです。アメリカでは地殻に悪影響を及ぼす可能性のあるシェールガス開発が続いています。
このように、私たちの回りではまだまだ経済優先、大企業優先の国家指導者も多く、物質的な豊かさを追い求める人たちも増えつつあるのです。しかし、それが今後私たちの地球にどのような環境問題を生じさせるのか、よく理解されていません。今でも、トランプ大統領やブラジル大統領にように温暖化は排出ガスとは関係ないと主張している政治家もいるのです。しかし、地球の温暖化傾向は止まっていません。
足尾銅山鉱毒事件以来の私たちの生活を脅かす経済成長は幸せか?
明治新政府以来の経済成長重視の姿勢は、この日本を発展させてきたといえます。しかし、同時に足尾銅山鉱毒事件以来、多くの環境汚染問題を発生させ、それは現在でも続いているのです。現在の新型コロナウイルスによるパンデミックも、経済成長優先によってパンデミック対策がおろそかにされた結果と言えなくもありません。温暖化もどんどんひどくなり、熱中症問題、スーパー台風、局地的集中豪雨などの大規模事前災害が増えています。今のまま、経済成長重視をする政策が続けば、私たちの日常生活は壊れ始めるでしょう。もう一度私たちの社会のあり方を見つめ直す時期に来ていると言えます。