何をやっても救われない?キリスト教の教派「カルヴァン派」を解説
予定説?カルヴァン派の教義って?
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同じ神様と聖書を信じてるんでしょ、ケンカする必要ないんじゃない?と思ってしまう教派の違い。現在まで尾を引く宗教対立ですが、ローマ・カトリックや福音派のプロテスタント教会とは違う考えをカルヴァン派(改革派教会)は持っています。人間は無力、神様は強い!というのが信仰の基礎になるものですが……それを徹底したカルヴァン派のすごい教えを紹介しましょう。
人間が何をしても……神様が全部決めてる「予定説」
あなたは天国に行きたいですか?カルヴァン派が信仰する「予定説(二重予定説)」に基づくと、あなたは天国に行けないかもしれません。なぜなら天国行きか地獄落ちかは、生まれた瞬間すでに神によって決められているからです。しかも恐ろしいことにこの予定説、善人も地獄に落ちるかもしれないし、悪人が天国にいくことになるかもしれないというもの。
えっ、じゃあ良いことしても無駄じゃないか!もちろんこの「予定説」には異論もあります。ローマ・カトリックと東方正教会は予定説を否定し、またプロテスタントのルーテル派も予定説を認めていません。いろんな考え方があるうちの1つです。
カルヴァン派の考えは神の主権が非常に強大。「人間の全的堕落・無条件的選び・限定的贖罪、不可抗的恩恵・聖徒の堅忍」という5つの特徴を持っています。この「ドルド信仰基準」の考えを説明すると、人間はどんなにあがこうと神の決定事項を覆すことはできないのです。キリストの救いなんかいらない!という人でも神が望めば救われますし、神に予定されていなければどんなに頑張ってもダメ。ちなみにこのドルド信仰基準の「全的堕落」によると、人間は問答無用で全員生まれつき堕落しているという点で平等です。すごい考え方ですね。
カルヴァン主義が資本主義を認めた?
キリスト教の美徳は清貧。清く正しくつつましく生きることが徳だったのです。しかし西洋社会は18世紀以降資本主義が台頭し、お金と資本家が権力を握ります。お金儲けっていけないことじゃないの?そんな問いに対しドイツの社会学者マックス・ウェーバーは、カルヴァンの唱えた予定説が資本主義を許容し推し進めたと主張するのです。
神の御心ははかり知れず、人間がなにをあがいてもムダ!そこでニヒリズムにおちいりそうなものですが、キリスト教では人生は1回こっきり。生まれ変わりがないのでやり直しが聞きません。どうすれば天国に行けるかの方法ではなく、自分が天国行きの予定を与えられた人間なのかどうかという結果を人は知りたがります。
そこで生まれたのが「神の御心にかなう人は、いい仕事をするはず」という考え方です。原因があって結果があるのではなく、結果を見て原因を判断するという離れ技でした。人々は働くことで神の栄光を実感するという安心感を得ることとしたのです。カルヴァン派のバイブル的書物「キリスト教網要」の記述もこの流れを後押しします。カルヴァンの思想によりヨーロッパは、労働やお金をいやしむ考えから、富の蓄財は神に祝福されたことであるとパラダイムシフトが起こったのでした。
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歴史の中のカルヴァン派
フランスのユグノー、オランダのフーゼン、スコットランドのプレスビテリアン。イングランドのピューリタン(清教徒)。これらは全てカルヴァン派のことです。過去から現在に至るまで「カルヴァン」の名前を冠する教派は実はありません。国や地域ごとに異なる名前を持ちながらもジャン・カルヴァンの教えを継承する彼らは、厳しい戒律を守る生活を送っていました。
厳格な教えを守る各国のカルヴァン派の信者はどこの国でも迫害、拒絶されがち。しかしカルヴァン主義者たちは新しい楽園を作るべく、新大陸アメリカ大陸に渡ったのです。アメリカのニューイングランドにおける移民の大多数がカルヴァン派の教義を信じる人々でした。ちなみに彼らの厳しい生活を描いた文学作品で名高いのが、アメリカ文学の巨匠ナサニエル・ホーソーンが書いた「緋文字」です。
19世紀から20世紀にかけて、カルヴァン派の宣教師たちが海を渡りアジア圏やアフリカ圏にもこの教えを広げました。たとえば現在アジアのキリスト教優等生国である韓国には多くのクリスチャンがいますが、カルヴァン主義の流れを汲む教派の信者も多いんですよ。日本にももちろん信徒がいます。教会へ行く際にはそこの教派の教えの傾向について最初にリサーチしてからの方がいいかもしれません。キリスト教ではない新興宗教の場合もあるのでちょっと注意。
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神の御手にすべてを預けるカルヴァン派
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日本人にとってはカルヴァン派の教えはピンとこないものかもしれません。神様ってそんなにえらいの?偉いんです。万物を創り人々の人生を最初から最後まで見守る強い権力を持った神の存在を、西洋の人々は信仰してきました。神に赦されることではなく、神の心にかなうことが大切ということなのかもしれません。しかしこの世の誰が天国行きで誰が地獄行きなのでしょう?世界終末が訪れてからのお楽しみ、なのでしょうか。