- 1.歴代王の血なまぐさい歴史を今に語る「ロンドン塔」とは?
- 1-1.ロンドン塔の誕生
- 1-2.巨大な建物に驚愕する人々
- 1-3.イギリス生まれ初の王が壮麗な王宮に
- 1-4.憎悪が渦巻くロンドン塔
- 2.ロンドン塔にまつわる王室の秘密7選
- 2-1.骨肉の争いで幽閉された「ヘンリー6世」
- 2-2.シェークスピアも書いた「エドワード5世とヨーク公リチャードの悲劇」
- 2-3.夫に殺された哀れな妃「アン・ブーリン」
- 2-4.知性のなさが不運を招いた?「キャサリン・ハワード」
- 2-5.『ユートピア』の作者「トマス・モア」も処刑された
- 2-6.たった9日で廃位した女王「ジェーン・グレイ」
- 2-7.才能豊かなイケメン「エセックス伯ロバート」
- 英国随一のホーンテッド・マンション「ロンドン塔」で、ミステリアスな体験をしてみませんか?
この記事の目次
1.歴代王の血なまぐさい歴史を今に語る「ロンドン塔」とは?
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夏目漱石はロンドンへ留学中にこの塔を訪れ、後に『倫敦(ロンドン)塔』という小説を書いています。作品の中に「倫敦塔の歴史は英国の歴史を煎せんじ詰めたものである。」と書いた通り、王室にまつわる血なまぐさい「闇の歴史」を詰め込んだような塔です。現在でも、この塔で処刑された人々の亡霊がでるとか。まず、「ロンドン塔」の歴史を簡単にご紹介します。
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1-1.ロンドン塔の誕生
中世の姿を今に伝えるロンドン塔は、1066年にイングランドの地を征服したウィリアム1世(征服王)が、その10年後の1078年にイースト・エンドのテムズ川沿いに、防御のために建てた木造の砦が起源といわれています(王の権力の象徴として建てられたという説も)。
なぜ、本格的な城建設は、征服の10年後になったのでしょう。征服直後はイングランドの各地に砦を作ることが優先で、フランスのルーアンに既に石造りの城を構えていたため、ロンドンの本格的な居城は後回しにされたからです。石造りの城建設の指揮にあたったのは、王から建築の才能を認められていた、後にロチェスターの司教となるガンダルフでした。
1-2.巨大な建物に驚愕する人々
天守閣の「ホワイト・タワー」は、木造の砦の北側に約20年かけて建築され、現在のホワイト・タワーの基盤となっています。地上3階、地下1階建てで、当時見たこともない大きな建物に皆驚異を感じたとか。乳白色のカーン石に塗られる白い石灰に混ざってしまったレンガの赤を見て、竜の血が混ぜられていると噂がたったようです。
城壁周辺の濠はリチャード1世が作り始め、ヘンリー3世が完成させます。ホワイト・タワーは、11世紀から増改築を重ね、13世紀には現在の形になりました。時期はわずかですが、1625年まで宮殿として使われています。
1282年からは、政治犯とされた貴族たちを収監し処刑する監獄でした。最初の幽閉者は、ウィリアム2世の時代に大法官だった、ダラム司教のフランバードです。3階の広間の一室に幽閉されるも、窓からロープで脱出したとか。幽閉されたのも、脱獄したのも、このダラム司教が最初です。
1-3.イギリス生まれ初の王が壮麗な王宮に
ロンドン塔が華麗な王宮になったのは、ヘンリー3世の時代です。これまでの王はフランス生まれでしたが、この王は初のイギリス生まれの王。この時代は貴族の跋扈で不安定な時期で、全力で改築し権力の誇示に利用したのです。
彼の考え方は、「塔は軍事的な強さがあり、美の表徴である必要がある。」というもの。信仰が篤い人物だったため、崇高で聖なる美を重んじて作られています。この時、古い城壁は取り壊され、面積は3倍近くになりました。
王の私室ウェイクフィールド・タワーなど小さな城郭ですが、軍事的要素を重視した9つの塔がホワイト・タワーを囲むように作られます。また、好奇心が盛んで多趣味な王だったため、ヨーロッパ初の動物園まで作られました。
1-4.憎悪が渦巻くロンドン塔
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14世紀のヘンリー8世の時代からは、政敵や反逆者たちを拷問し処刑する場とされたのです。ヘンリー8世が亡くなると、9歳の息子エドワード6世が即位します。彼は体が弱く15歳で亡くなり、ヘンリー7世の曾孫ジェーン・グレイ妃が、王位に就くためロンドン塔に入りました。このジェーン妃は、王室の秘密にあげる悲劇のヒロインなのです。
最後の収監者は、第二次世界大戦中にドイツから和平交渉のために単独でやってきた「副総統ルドルフ・ヘス」。彼は、捕虜とされ1941~1944年まで拘留されました。このロンドン塔には、幽閉され処刑された人々の憎悪が渦巻いているのです。ロンドン塔の歴史の中で宮殿以外にも造幣所や天文台として使われましたが、血なまぐさい歴史から、さまざまな超常現象が起こっており、英国一の亡霊出現スポットとして注目を浴びています。
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ちょっと雑学1
冒頭で触れました大型のワタリガラスが、ロンドン塔で飼育されています。日本人が「烏を飼育」と聞くと不気味に感じますが、ここでは英国や塔を守る上でも大切な存在です。
実はチャールズ2世の時代に、棲みついていたたくさんの烏を駆除しようとしましたが、占い師に「カラスがいなくなるとロンドン塔が崩れ、ロンドン塔を失ったら英国そのものが滅びるだろう。」と予言されました。それ以来、常時6羽ほど大切に飼われています(現在のカラスの数は、万全を期して7羽です)。
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ちょっと雑学2
ロンドン塔にはかつて衛兵隊として活躍した「ヨーマン・ウォーダーズ」と呼ばれる人がいます。現在は、ジンのボトルをデザインした衣装を身に付けたガイドさんです。15世紀ごろから活動しており、当時は給料の代わりに庶民がなかなか口にすることができない牛肉を貰っていたとか。そのため、「ビーフィーター(Beefeater)」と、あだ名が付けられています。
「ヨーマン・ウォーダーズ」のガイドによる、アクティビティが行われています。「さあ、処刑がはじまるぞ~!」という声が響くと人々が集まり、処刑者を見に来た見物客のように、ガイドの後をついて行く観光客の姿も見物です。