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【文学】中里介山「大菩薩峠」メイン登場人物を紹介!超グダグダ幕末エンタテインメント小説をご案内

大正・昭和を代表する文学の1つ『大菩薩峠』。読んでびっくり、幕末エンタテインメント長編小説です。サイコパス剣客の机竜之助をはじめとする魅力的なキャラクターが、歴史上の人物や事件と絡みながら群像劇を繰り広げる、文庫本で全 冊、大長編の時代小説エンタテインメントの元祖。さて手を出そうと思ったものの人物の多さと長さに尻込みする方も多いのでは?そんなあなたに『大菩薩峠』の主要人物と概要をご紹介します!

【まずは概要】「大菩薩峠」ってどういうお話?

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uraomote_yamaneko – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

超弩級のエンタテインメント時代小説『大菩薩峠』。掲載新聞を変更しながら延々と続いた連載期間はなんと1913年~1941年までの28年間!大衆文学の先駆けであり、魅力的キャラクターがあふれる幕末時代小説の傑作です。書いた人・中里介山ってどんな人?そもそもどんなお話?題名になっている「大菩薩峠(大菩薩嶺)」の、登山地・観光地としての魅力もあわせてご紹介しましょう。

かなり適当!終わらせる気が皆無!どたばた幕末キャラクター小説

天才剣客・机竜之助と、彼を追う人びとが、出逢っては別れ、江戸幕末の日本中を駆け回る。――物語の筋としてはこれだけです。詳しくは登場人物紹介とともに辿っていきましょう。虚実入り交ざった中で繰り広げられる群像劇です。ここでは最初にいくつか注意事項を記しておきましょう。

正直、歴史考証や時代考証は、わりと適当!『中里介山の「大菩薩峠」』という小論で三田村鳶魚は「適当すぎてどこからツッコめばいいかわからない」と言いつつ片っ端から史実との矛盾をピックアップするほど。でもいいんです、だってエンタテインメントですもの。

しかしある程度まで読んでいくとわかりますが、この小説を作者の中里介山、まったく終わらせる気がありません。途中から明らかにストーリーを回収できなくなっていっています。俗に言う「小説が暴れだした」というやつですね。大正から昭和まで時代をまたいで連載し続けた『大菩薩峠』。41巻にのぼる群像劇は、未完のまま連載終了することになります。

書いた人は、中里介山(なかざと かいざん)

もはや伝説となった娯楽時代小説の元祖『大菩薩峠』を書いた中里介山は、どんな人物だったのでしょう?中里介山は1885年、神奈川県西多摩郡の精米業者の家に生まれます。本名は中里弥之助。あの玉川上水のほとりで育ち、彼の少年時代には自由民権運動の壮士たちが集う土地でもありました。このことが彼の人生に影響します。

中里家は父親が事業に失敗。介山こと弥之助少年は、働きに出て家族を支えます。成長した後はキリスト教や社会主義に親しみ、あの幸徳秋水や内村鑑三などの社会主義者たちと親交がありました。実際に『大菩薩峠』にも貧窮組というデモ組合のようなものが出てきますが、貧乏人・被差別民・下層階級へのあたたかい目線は中里介山作品を貫く要素です。

1913年に都新聞で連載を開始した『大菩薩峠』。中里介山はこの作品で大ヒットを飛ばします。結局未完に終わったものの、日本の「大衆文学」の先駆けとして菊池寛、芥川龍之介、谷崎潤一郎などが賞賛するなど現在も評価が高い代表作です。ちなみに彼、かなりストイック。恋愛を自分に禁じ、どんなにお金が入っても菜食中心の質素な生活を貫きました。イケメンの上に才能があるものだから女性からはモテたものの、終生結婚はしなかった中里介山。終戦直前の1944年に59歳で没しました。

観光地としての「大菩薩峠」はどんなところ?日帰り登山におすすめ!

さてタイトルになっている「大菩薩峠」は地名、日本百名山の1つです。山梨県甲州市塩山を代表するアウトドアの名所。この大菩薩峠で主人公・机竜之助がお松のおじいさんを辻斬りで斬り捨て、お松と七兵衛との出逢いがあり……という序盤の鍵となるシーンが展開されます。観光地としても有名。どんな場所なのでしょう?

大菩薩峠は標高1897メートル。尾根からは富士山、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父などの山々が展望できます。東京都新宿から特急で片道1時間半とアクセスも良く、日帰り登山にも最適。登山道も難易度が低く、初心者向けの登山スポットとしても大人気。車道もありますが、タクシーおよび福ちゃん荘利用者のみが利用可能です。冬場は雪も降るので注意が必要。

温泉「大菩薩の湯」のほか、小説『大菩薩峠』にも登場する恵林寺、山荘や山小屋もありますよ。テントは自然保護のため指定地以外では設営することができないので注意。江戸時代には武蔵国と甲斐国を結ぶ青梅街道の要所であり、最大の難所でした。この大菩薩峠で物語ははじまるのです。

【いよいよ登場人物紹介】中里介山『大菩薩峠』の世界へようこそ!

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ただでさえ長いのに、しかも未完なのに、ものすごく登場人物が多い!しかも全員が主役といわんばかりに、キャラが濃い!いよいよ『大菩薩峠』の登場人物の紹介と整理をしていきましょう。これらの人物をとりあえず把握しておけば、『大菩薩峠』の前半は攻略可能。全員が主役級の強烈なキャラ立ちと活躍を見せる、幕末時代を舞台に繰り広げられる人間群像劇。ご案内いたしましょう。

机竜之助――日本文学史上もっとも酷薄なサイコパス主人公

『大菩薩峠』の主人公、そいつの名前は机竜之助。ピタリと青眼に構えた「音無しの構え」で剣術界では敵うものがいません。しかして彼は欲望のままに辻斬りを働き、女をさらって手篭めにする。悪の巨魁として設定されそうな人物像ですが、これを主人公に持ってくるあたり中里介山、攻めています。

太平の世だったなら一生日陰者、ざまあみろという生涯だったでしょうが、運が良いのか悪かったのか、彼がいたのは幕末の世でした。刀の時代がやってきたのです。机竜之助はまだ新徴組と名乗っていた新選組に入隊。その後逃亡のゴタゴタでなんと失明してしまいます。彼の真の流浪の旅はここからはじまるのでした。

彼を中心軸にして『大菩薩峠』の人物たちは躍動します。こんなクズ男ですが、お浜、お銀さまなど、彼に執着し愛する女たちの執念も見どころ。冷酷な机竜之助の姿は、日本の小説の中で非常に異質で魅力的です。

宇津木兵馬――机竜之助を追う少年武士

さてこんな人外のサイコパス野郎が恨みを買わないわけがありません。彼に兄を殺された仇討ちのため、地の果てまでも机竜之助を追う少年武士がいます。宇津木兵馬です。

江戸、京都、伊勢、甲府など日本全国追いかけるものの、机竜之助とは必ずニアミス。その上無実の罪で牢屋に放り込まれたり、恵林寺の慢心和尚に「敵討ちなんてダサい」みたいなことを言われたり、いつまでたっても成就しない大願に心が弱っていきます。この過程で南条や五十嵐といった志士と出逢い、彼の運命は転回するのですが……。

兵馬に想いを寄せるお松、彼に関わることになるお君、また何故か彼とつるむことになる浪士たちなど、ある種の要のような存在が兵馬です。彼が行き着く先は本当に机竜之助なのでしょうか?それとも。

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