アメリカの歴史

「国際通貨基金(IMF)」とはどのような組織?歴史や役割、融資など元予備校講師がわかりやすく解説

この記事をご覧いただいている皆様は「IMF・国際通貨基金」という組織をご存知でしょうか。新聞やインターネットのニュースで時折登場する国際組織です。IMFがニュースに登場するのは、たいてい、どこかの国や地域が経済的に行き詰まっている時。IMFが困っている国に融資・支援をして破綻を回避させてきました。しかし、無条件にお金を貸してくれるわけではありません。IMFは融資の条件として厳しい内容を突きつけました。今回は、IMF・国際通貨基金について、元予備校講師がわかりやすく解説します。

ブレトン=ウッズ体制とIMF、世界銀行の誕生

Mount Washington Hotel 2003.JPG
Sven Klippel – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, リンクによる

大戦終結の前年にあたる1944年にアメリカのブレトン=ウッズに連合国の通貨担当者が集まり国際会議が開かれました。この会議で締結されたブレトン=ウッズ協定に基づき、翌年の1945年に国際通貨基金(IMF)協定や国際復興開発銀行(IBRD・通称、世界銀行)協定が結ばれます。IMFを生み出したブレト=ンウッズ体制やIMFと同時に設立が決まった国際復興開発銀行についてみてみましょう。

ブレトン=ウッズ体制とは

第二次世界大戦において、連合国の有利が確実なものになりつつあった1944年、連合国の通貨担当者がアメリカのニューハンプシャー州ブレトン=ウッズに集まっていました。目的は戦後に作られる国際協調組織(のちの国際連合)のもとで、戦後の平和維持や経済の安定を図る組織をつくることです。

ブレトン=ウッズ協定の正式名称は連合国通貨金融会議。文字通り、戦後の通貨や金融を話し合うものでした。

各国は、1929年の世界恐慌以後、世界貿易が滞り各国が自国を中心とする勢力圏を作り上げる保護貿易を行った結果、戦争を導いてしまったと反省します。

協定の結果つくられたブレトン=ウッズ体制の特徴はアメリカドルを中心とした固定相場制を採用したことでした。35ドルで金1オンスを公定価格とし、ドルは常に金と交換できるようにします。

各国の通貨はドルとの交換比率を固定されました。これにより、各国の通貨をアメリカドルや金が保証する仕組みができました。

IMF・国際通貨基金とは

IMF・国際通貨基金は1945年に設立された国際機関で、本部はアメリカの首都ワシントンD.C.に置かれます。IMFの主な目的は、加盟国の為替政策の監視や国際収支が著しく悪化し、経済的な危機に見舞われている国に融資を実施することでした。

IMFがアメリカドルを通じて各国の通貨の価値を保証することで、世界貿易を活発化させようとします。貿易がうまくいけば、各国の経済は好転し多くの人が仕事を得ることができますね。

そうなると、各国の国民所得が増大し皆で豊かになれるわけです。IMFは主要国の経済動向を調査・分析し、年2回「世界経済見通し」として発表。各国政府の見方とは別に、客観的な第三者による評価であるため、投資や事業を行う人にとって、とても参考になりますよ。

世界銀行とは

IMFと同時期に設立されたのが世界銀行です。世界銀行は通称で、正しくは国際復興開発銀行ですね。IMFと同じく国際連合の専門機関の一つです。

IMFが通貨価値の維持などを目的としたのに対し、世界銀行は戦後経済の復興や開発のための融資を行うことが主な目的とされました。

第二次世界大戦から復興しようとしていた日本も世界銀行から融資を受けたことがあります。1953年から1966年の間に世界銀行から日本が借り入れたお金は8.5億ドル以上に上りました。日本は借りたお金を徐々に返済し、1990年代には借金を返済します。

戦後復興が一段落した1960年代以降は、発展途上国への融資が主な業務となりました。世界銀行は発展途上国に融資や技術協力などを行うことで各国の貧困をなくすことや貧しい国々の所得を引き上げることを目標とします。

IMFのしくみ

image by PIXTA / 25154943

通貨や為替の番人ともいわれるIMFはどのような組織なのでしょう。本部や組織、IMFのトップなどについて、日本では意外と知られていないのではないでしょうか。また、時折ニュースに登場するIMF8条国とIMF14条国。いったい何が違うのか。実際にIMFが各国に融資するとき、どのような手順を踏むのかなど、IMFという組織そのものにスポットを当ててみましょう。

IMFの出資と専務理事

ブレトン=ウッズ会議の決定に基づき、国際連合の専門機関としてスタートしたIMF。本部はアメリカの首都ワシントンD.C.に置かれました。それもそのはずで、IMFに一番お金を出しているのがアメリカだからです。

アメリカの出資比率はダントツの1位で17.40%、2位は日本の6.49%、3位は中国の6.39%と続きますね。IMFでは、一国一票ではなく出資比率によって票が追加で与えられるため、出資比率が高い国ほど有利になりますよ。

IMFの業務運営を行うのは24人の理事。理事たちの会合である理事会が大きな権限をもちます。理事会の議長であり、IMFの代表を務めているのが専務理事。2011年から2019年9月まではフランスのラガルド氏が務めていました。

しかし、ラガルド氏が欧州中央銀行の総裁の総裁になることが決定したため9月12日に専務理事を辞任。後任にブルガリアのクリスタリナ=ゲオルギエヴァ氏が就任することが決まりました。

ちなみに、世界銀行の総裁はアメリカ出身者が、IMFの専務理事はヨーロッパ出身者が占めることが慣例となっています。

IMF8条国とIMF14条国の違い

IMFの設立目的の一つは国際取引を支障なく行うために為替を安定させることです。もし、各国の政府が自国の都合で通貨価値を勝手に上げ下げしてしまえば、通貨の信用が失われ、世界貿易が滞ってしまうでしょう。

こうした事態を避けるため、IMF協定第8条では貿易の支払いを制限しないことや通貨間の差別をしない事、自由に通貨を交換できることなどを定めています。

しかし、経済格差などにより第8条を忠実に実行できない国は第8条の実行を猶予されました。こうした国々に第8条の適用を猶予すると定めたのがIMF第14条です。

第14条を適用されている国は、可能な限り早く第8条の適用国となるよう求められました。日本の場合は高度経済成長期の1964年4月にIMF8条国となります。また、近年成長が著しい中国も1997年にIMF8条国に移行しました。

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