アメリカの歴史

「国際通貨基金(IMF)」とはどのような組織?歴史や役割、融資など元予備校講師がわかりやすく解説

IMFによる融資

IMFは加盟国が経済的危機にあるとき、融資をおこなって加盟国の通貨価値を支えることができます。

というのも、通貨の価値が大幅に下落する通貨危機の場合、その国の通貨を別の国の信用がある通貨(主にドル)で買い支えなければ、通貨暴落を止めることができないからです。

通貨が暴落すると、その通貨を用いている人の財産は大幅に目減りしてしまうでしょう。そうなれば、その国の経済は壊滅的な打撃を受けてしまいます。近年では、ジンバブエやベネズエラでハイパーインフレーションが発生し、通貨価値が暴落したことがありましたね。

そうなると、お札は紙くず同然になってしまいます。そんな事態を避けるために行われるのがIMFの融資。加盟国はIMFから一時的にドルなどの外貨を借りて自国通貨を買い支えます。

IMFから融資を受けたい場合は、加盟国側からIMFに融資をしなければなりません。しかし、IMFは融資の条件として相手国に厳しい条件を突きつけます。これに反発した諸国ではIMFの融資に反対する暴動が起きたこともありました。

IMF融資の具体例

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主に緊急時に行われるIMFの融資。融資と引き換えに加盟国に厳しい条件を突きつけたため、融資を受けた国の国民から激しい反発を受けることもありました。実際に、IMFの融資を受けるとどのようなことになるのでしょうか。近年の主な事例を取り上げIMFの融資についてみてみましょう。

アジア通貨危機と韓国のIMF危機

1997年、タイから始まったアジア通貨危機は瞬く間に東アジア・東南アジア諸国を飲み込みました。各国の通貨は軒並み下落し、経済危機に陥ります。最も被害が深刻だったのがタイ、インドネシア、韓国でした。

各国政府は自国単独での対策を模索しますが、結局うまくいきません。特に、韓国では事態が深刻でした。

1997年に入ると財閥系の鉄鋼会社や大手自動車メーカーが倒産。1997年10月にはアメリカの格付け会社が韓国の格付けを相次いで下げます。それを受けて韓国市場の株価が大暴落。経済が壊滅的な状態になりました。

打つ手がなくなった韓国政府はIMF融資を依頼します。IMFは融資条件として高金利やウォン高ドル安政策、解雇規制の緩和など経済改革を求めました。韓国はIMFの融資を受けるため条件を受け入れます。

その後、政府による産業救済などを自由に行うことができなくなった韓国では多くの企業が倒産しました。外貨不足で国が破産する事態は回避しましたが、経済は大打撃を受けたのです。

アルゼンチンへの支援

南米のアルゼンチンは経済的にとても不安定な国です。国がする借金のことを国債といいますが、アルゼンチンは過去に6度も国債の支払いをストップさせました。これを、デフォルト(債務不履行)といいます。

2018年、アルゼンチンで再びデフォルトの可能性が上昇。IMFの理事がアルゼンチン入りしました。IMFはアルゼンチンのデフォルトによる経済混乱を回避するため、過去最大規模となる560億ドルもの融資枠を承認します。しかし、IMFに対する国民の不満は根強いものがありました。

2019年に実施された大統領選挙の予備選で、IMFとの約束を守るマリク大統領が敗北。この報せはアルゼンチンペソの暴落に繋がります。ペソの価値は1週間で20%も下落しました。2019年から2020年にかけて、IMFはアルゼンチン支援をどのように行うか決断を迫られることになるでしょう。

支援と引き換えに構造改革を迫るIMFの手法は今後も通用するか

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アジア通貨危機において、IMFの融資は混乱収束に大きく役立ちました。しかし、それと引き換えに融資を受けた各国、特に韓国経済は大打撃を負い、従業員の解雇規則が緩和されたことによって非正規労働者の急増を招きました。結果的に、IMF融資が国民生活を苦しめるという認識が強まれば、アルゼンチンのように支援を受ける政治家が国民によって排除されることになるかもしれません。IMFの今後の出方に注目ですね。

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