平成日本の歴史

増税は本当に必要?~消費税のカラクリを一刀両断に斬ってみた~

消費税は、消費者負担ではなく事業者負担

もともと日本の消費税は、フランスのモデルを参考にして導入されました。ふつうは消費者が負担する間接税だと思いがちですが、実態は事業者が直接納める直接税なのです。いわば消費者は、自分で消費税を負担しているように錯覚させているだけのこと。

事業者が納める消費税の金額は、年間の売上げ額から、仕入れ額などを引いて計算します。仕入れ額には、純粋な仕入れ額の他に光熱費や家賃、通信費、外注費などが含まれますね。ただし、正社員へ支払う給料は入っていません。給料が多い企業ほど消費税を納める負担も大きくなるのです。

事業者がもし納税額を減らしたければ、正社員を雇わないで非正規雇用者を増やせばいいわけで、それらは仕入れ額に計上できます。そういった意味では、消費税には非正規雇用を増やしてしまうカラクリが仕組まれているということなのです。

大企業が得をする消費税のカラクリ

しかし、なぜ直接税なのに、まるで間接税を装うかのようなカタチになっているのでしょうか?実は大企業が得をするカラクリが仕組まれているのです。

日本の大企業の多くは海外と取引し、輸出企業としての側面を持っていますよね。国際的な取り決めでは輸出品に消費税は一切掛かりません。ところが間接税を適用すると、輸出還付金として輸出企業に対して消費税が戻ってくるという仕組みになっているのです。

わかりやすく言えば、このような形になります。

 

大企業A社は、輸出売上500億円、国内販売額も500億あるとしましょう。

国内販売額には消費税が8%掛かりますから、40億円が税金となります。かたや輸出売上に対しては消費税は掛かりません。

いっぽう、A社の仕入れ額が800億だった場合、消費税ぶん64億円が税金となります。

国内販売額に掛かる税額40億円から仕入れ額に掛かる税額64億円を引いて、マイナス24億円となりますよね。これが大企業に輸出還付金として戻ってくるのです。

 

こうして利益を得た企業は国内にたくさんありますね。名前を挙げるだけでも「トヨタ自動車」が3500億円、「日産自動車」が1500億円、「キャノン」が638億円というふうになっています。

ちなみに国民が払った消費税のうち、実に1/4がこうした輸出還付金として大企業に支払われており、本来の役目を果たしていないのです。

これも余談ですが、大企業が拠点を置く豊田税務署、神奈川税務署、大阪西税務署など9つの税務署では消費税の税収が赤字になっているのですね。

消費税のナゾの使い道とは?

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国民が納めている血税ともいうべき消費税。そのうち実に1/4が大企業へ流れていることがわかりました。それでは財源としての消費税の使い道とは、いったいどうなっているのでしょうか。

社会保障のために使われている財源はわずか16%

現在(消費税8%)の税収の内訳を見てみると、「社会保障のため」だと謳い続けてきたお題目とは、まったくほど遠いことがわかります。

国民年金の国庫負担財源に回したのが3.2兆円、後代への負担のつけ回しの軽減(つまり国の借金の返済)が3.4兆円、「社会保障の充実」のために回された財源は、わずか16%に過ぎませんでした。

消費税10%時の使い道の内訳もすでに発表されていますが、当初は「社会保障の充実」に1.6兆円回される予定だったのが、見直しで1.1兆円に減らされ、代わりに少子化対策が1.7兆円に拡充されることになっています。

少子化対策はむろん将来を見据えた上で大切なことですが、高齢化に伴う介護や医療の拡充も同じくらい大事なはず。大企業に増税分を還付するくらいなら、もっと社会保障に力を入れてほしいと願うのは筆者だけでしょうか。

医療・介護へのしわ寄せと増大する社会保険料

分類としては、厚生年金保険や介護保険などの社会保険料が近年上昇し続けており、せっかく消費税を上げても追いつかない状況になっています。具体的に言えば、例えば年収500万円の世帯で例えるなら、ここ10年間で8~10万円も手取りベースで少なくなっているのですね。

アベノミクスの恩恵で給与のベースアップがあったとしても、実感できない理由はそこにあるのではないでしょうか。

また消費税がアップしているにも関わらず、社会保障が削られていくのは、いわゆる介護職が「誰でもできる仕事」と見られている部分もあるのです。これは保育士にも言えることですが、最新の知識を持った専門職だという認識があまりなく、軽視されているということ。優先されるべき予算ではないという理屈ですね。介護職・保育士の給与が極端に低いのも、そこに最も大きな要因があるといえるでしょう。

法人税や所得税減税の穴埋めに利用される消費税

消費税が導入される以前、社会保障のために使われる財源は主に法人税(企業が納める税)や所得税(所得に掛かる税)によってカバーされていました。ところが消費税が新しい財源としてプラスされると、今度は法人税や所得税が大幅に減税されるようになったのです。

「だったら法人税や所得税を減税せずに、そのまま社会保障に充てれば済む話じゃないか。消費税なんて無くてもいいのに。」と感じる方も必ずおられるはず。ところが政府はじめ財務省はそうしませんでした。

消費税は【逆進税】といって、収入が多い人も少ない人も生活必需品を購入する量は一定ですよね。そういった物品に一律の税金を掛けることによって、例え貧しい世帯からでも効率よく税金を徴収できるシステムにしたのです。

法人税が減税された結果、その減税分は消費税によって穴埋めされてきたというべきでしょう。2018年時点での法人税率は23.2%となっていますが、中小企業を含めた日本の全企業がそうなのではく、大企業に関しては税制優遇措置のおかげで平均15%前後となっています。

仮にそれらの優遇措置を撤廃し、全ての企業が23.2%という法人税率になると約19兆円もの財源が確保できるという試算もありますね。

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明石則実