平成日本の歴史

増税は本当に必要?~消費税のカラクリを一刀両断に斬ってみた~

いよいよ10月になると消費税が8%から10%へアップしますよね。私たち消費者だけでなく、お店なども軽減税率の導入に伴って、てんてこ舞いではないでしょうか。日本は少子高齢化の時代に突入し、社会保障制度を支えるためには消費税は必要悪だ。仕方がない。というふうにお考えの方も少なくないと思います。しかし果たしてそうなのでしょうか?多くの経済学者の先生たちは言いますね。「消費税増税は必要ない」と。筆者も実は同じ考えで、本当に消費税による税収全てが社会保障に投入されれば効果はあるでしょうが、おそらくそうならないだろうという考えています。本当に増税は必要なのか?また消費税はどのような側面を持った税制なのか?解説していきたいと思います。

そもそもなぜ消費税が導入された?

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今や取られることが当たり前になっている消費税なのですが、いったいどのような理由で導入されたのでしょうか。知っている人も知らない人も、おさらいのつもりで読んでみて下さい。

消費税案のスタートは国家の財政赤字を解消する目的だった?

日本で消費税法案が可決され、実際に消費税がスタートしたのは1989年のことですが、それ以前から国家財政を補うための間接税導入が検討されてきました。

なにせ高度成長期で好景気だった頃は、税収も安定していましたし不安はありませんでした。ところが経済が落ち着いてくると思ったように税収は伸びない。それに加えて国は、全国で道路工事だのインフラ整備だのといったプロジェクトをどんどん進めていくものですから、結局は国家財政が赤字に転落してしまいました。

そこで当時の大平内閣は、消費税導入準備を閣議決定するわけですが、ここで社会党をはじめとした野党が猛反対。小売店や消費者団体などからも反発を受けます。「湯水のように国家予算を使うくせに、増税とは何事だ!まずは歳出を見直せ!」というわけです。

結局、この時点でも消費税導入は見送られることになりました。

増税のお題目に「社会保障」を盛り込む

続く中曽根内閣では、増税によらない財政再建を目指し、国鉄や電電公社などの売却といった政策を実施して国民の支持を得ましたが、大きなミスを犯してしまいます。

「大型間接税は取らない」と公言して衆参同日選挙で大勝したにもかかわらず、深い議論を進めることもないまま5%の売上税法案を提出。日本中から批判を浴びて引っ込めざるを得なくなったのです。

「財政赤字の解消」という理由だけでは国民は納得しないと判断した竹下内閣は、「国民がやむを得ない」と思えるような新しいお題目を考え付きました。そう、それが「高齢化に対応するため社会保障に充てる」というお題目だったのです。

消費税実施と引き換えに竹下内閣は退陣しましたが、その後、消費税は5%から8%、さらには10%へと引き上げられようとしていますね。竹下首相が退陣前に語った言葉があります。

 

「新税は全て悪税といわれるが、税制は慣れてしまえばそれまでのことともいわれる」

 

そう、国民は税を取られることにすっかり慣れてしまい、痛みを痛みとも思えないようになっているのかも知れません。もしくは巧妙なお題目に踊らされて、半ばあきらめに近い感覚があるのでしょうか。そして安倍首相もまた、同じお題目を唱え続けているのです。

「子育て世代への投資と、社会保障の安定化にバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する。」

消費税がアップすると、どんな影響が出るのか

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消費税がこれまでの8%から10%へアップすると、たしかに税収は伸びるかも知れませんが、経済への影響が懸念されるところです。そこのところを詳しく解説していきましょう。

増税するには最悪のタイミング?

これまでの増税で明らかなように、消費者心理として買い控えによる国内経済の低迷が挙げられるでしょうか。生活必需品の購入による支出は致し方ないにしても、例えば旅行や高額品、嗜好品などの買い控えは避けられそうにありません。

そうなると、まずはサービス業観光業、さらには国内産業の基礎でもある製造業が打撃を受けることになりますし、GDP(国内総生産)の減少にも拍車が掛かりますね。ただでさえ日本のGDP成長率(ここ10年で0.5%)はほとんど伸びていませんから、おそらくマイナスに転じるのではないでしょうか。

その前兆はすでに増税前から現れていて、実質賃金が前年比で1%前後のマイナスという状況が続いています。すでにオリンピック需要も終わり、日韓関係悪化に伴う海外からの訪日客が九州地方で激減している影響で、地域経済にも悪影響を与えていますね。

そればかりではありません。日中貿易摩擦のあおりを受けて、今年の世界経済の成長率も2.6%くらいだと予測されています。リーマンショック後が平均3%程度でしたから、それよりも悪くなっているのです。

そんな時期に10%の増税をぶつけたら…まさに最悪のタイミングだと言えるのかも知れません。

非正規雇用の増大と求人倍率の低下

国内経済が低迷し、景気が悪化すると次に何が起こるのか?これはもう雇用環境の悪化に他なりません。高齢者雇用が大きいとはいえ、今の日本の雇用状況を見れば、非正規雇用が全体の40%近くを占めています。

今年に入って有効求人倍率は昨年を下回っていますし、もし景気が悪化すれば、真っ先にクビを切られるのは非正規雇用の人たちです。リーマンショックの時の記憶も新しいのですが、情け容赦なく首切りに遭い、路頭に迷う事例が増えるのではないでしょうか。

意外と知られていない消費税の仕組み

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消費者が商品代金に税を上乗せして払い、そのまま国家や地方の財源になっていると考えていませんか?実はそれは大きな勘違い。そこには壮大ともいえるカラクリがあるのです。

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