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世界を変えた「マゼラン」初めての世界一周を詳しく解説

マゼランの世界一周の意義

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マゼランによる海上航路による世界一周は、それまでのキリスト教カトリック派の旧来の固定概念に縛られた中世世界からの決別を意味していました。時代を大きく変えた偉業と称えられ、彼の名前は、マゼラン海峡だけでなく、さまざまに付けられています。マゼラン星雲、マゼランペンギン、宇宙探査船機マゼランなど、彼の名前に因んで付けられた名前からもこの偉業がいかに大きかったかを示しているのです。

キリスト教カトリック派の権威を壊したマゼラン

中世を支配してきたキリスト教カトリック派の教会は、地球は平たいと人々に説いていたものの、それがうそとわかり、コペルニクスの地動説も正しいとわかったのです。そして、ルターなどの宗教改革によって、新しいプロテスタント派キリスト教が本格的に始動していくきっかけになりました。

しかし、もともとポルトガルもスペインもカトリック派の総本山であるローマカトリック教会を支持して国々だったのです。その国々によってカトリック派の固定概念が覆されたのは皮肉でした。しかも、マゼラン自身が敬虔なカトリック信者であり、フィリピン諸島では布教活動をしていたのです。

イスラム帝国に支配された東西貿易(シルクロード)の崩壊とヨーロッパ勢力図の変化

それまで、東西貿易によってインドの香辛料や中国の絹織物、陶磁器などは中央アジアを経由するシルクロードによってもたらされていました。そのため、ヨーロッパの文化、政治の中心は地中海沿岸の都市、すなわち、ヴェネチアなどのイタリアなどが握り、その保護によってローマ教会も力を保っていたのです。

しかし、海上航路の発見によって、ヨーロッパの文化、政治の中心は次第に大西洋岸の国々、スペイン、ポルトガル、イギリス、オランダ、フランスなどに移っていくことになります。とくに、17世紀前半の三十年戦争とその講和会議で成立したウエストファリア条約によって大きく変わります。旧来のカトリック派の国々からプロテスタント派のオランダ、イギリスなどが力を確立していったのです。

無敵艦隊の称号はイギリスに

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スペインは、マゼラン後、大航海時代を先導することとなり、スペイン艦隊は無敵艦隊と言われて、ヨーロッパの最先端国となっていました。しかし、1588年に起こったアルマダの海戦でイギリス艦隊と戦い、敗れたことで、無敵艦隊の称号と大西洋の制海権はエリザベス1世のイギリスに奪われます。

その結果、イギリスはヨーロッパ最強国に成長していき、産業革命も一番最初に起こったことから大英帝国を形成し、近代社会の先頭を走っていったのです。

逆に、大航海時代を切り開いたスペイン、ポルトガルは没落していきました。

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